天気予報では再び曇天とのことだったが、午後にはすっかり晴れ渡ったマルタ島。
一昨日の到着直後、ドライヴァーのピーターから「あなた方はアンラッキーだ」を連発されつつも、いやいや、ここに来られただけでもラッキーなのだと「思考転換」をした甲斐があった。
今日は、朝の9時にホテルを出発。マルタ島だけでなく、隣接するゴゾ島へも訪れた。カーフェリーに乗ってわずか10分程度のゴゾ島もまた、絶景の宝庫であった。
車を降りて、少し歩けば、目前に現れる紺碧の海に、歓声が上がる!
どんなに写真を撮影しても、リアルの感動を伝えられはしないとわかってはいるのだが、ついつい、あちこちに向かってシャッターを切らずにはいられない。
デカン高原のただ中に暮らす日常は、海が足りない。バンガロールに移住する以前は、常に海からほど近い場所に暮らしていた。茫洋の水平線は、遥かな心持ちにさせられる。
高原の暮らしはまた、それなりにいいものだが、ときに海が恋しくなる。今日は存分に潮風を受けとめられた。
書き残しておきたいことがたくさん、脳裏を巡ってはいるが、遊びすぎて疲労困憊。撮りすぎた写真を、絞り込んで、それでもたいへんな枚数になりそうだが、思い出に、残しておく。
この愛らしい村は、1980年公開のロビン・ウィリアムズ主演映画『ポパイ』のロケ地。当時のセットをそのままに維持しながら、テーマパークとして公開されている。わたしたちは、遠目に眺めただけだが、時間に余裕があれば、村を散策してみたいところだ。
昨日の台風はかなり大規模だったようで、沿岸部では建物や塀が倒壊したり、大木が倒れたりと大きな被害を受けたようだ。この海岸の大きな岩も、荒れ狂う波で十数メートル移動したという。嵐の翌日とあって、波はまだ荒く、海に近づこうとするわたしたちに、ピーターは「端まで行かないように!」と、気が気ではない様子。地盤も緩んでいるので、確かに危険なのだ。
ピーターが、ローカルに人気の個性的なピザを買ってくれた。地元のチーズや卵などが使われた、食感ふわふわの、ユニークにもリッチな味わいのピザ。ピザというよりは、パイかキッシュのようでもある。
洞窟で、絶景を眺めながら、ピザを食べる我ら。1切れでお腹いっぱいになるヴォリュームだ。
マルタはまた、巨石文明の痕跡が島の至るところに残されていることでも知られている。紀元前3600年ごろ、すなわち今から5500年以上前の遺跡が今でも残っているのだ。
その中のひとつでユネスコ世界遺産にも指定されているジュガンティーヤ寺院群(Ġgantija Temples)を訪れた。
ゴゾ島にある新石器時代の巨石神殿複合体であるジュガンティーヤは、マルタ語で「巨人の塔」を意味する。マルタにある巨石神殿群の中で、最古のものだという。
遅めのランチは、海辺のシーフードレストランで。初日、ホテルで食べたタコのサラダが忘れられず、この店でもタコのサラダを注文。プレゼンテーションは異なれど、こちらのサラダもおいしかった。なにより、この島でとれたらしきレモンのおいしいこと!
ランチを食べているうちにも、空は青く澄み渡り、まばゆい陽光が降り注いで来た。わたしたちはラッキーだと異口同音に言いながら、今、インドで起こっている諸々の事件(カシミールでの印パ紛争/マイソールの森林火災)や、家族のことなどにも思いを馳せつつ。
海を見晴るかす高台にぽつんと立つタピーヌ教会へ。1833年、教会の近くを通った農婦が聖母の声を聞いた後、人々の病気を治したことから、「奇跡の教会」と呼ばれている。
ファサードの一帯は、数年前に大改修工事が行われたようで、真新しい荘厳さだ。
時間が許すならば、こういう場所で、一人のんびりと、気のすむまで過ごしていたいとも思う。
今の世の中、進化するテクノロジーのお陰で、遠く離れた場所からでも、ニュースを即座に受信でき、安否を確認でき、連絡を取り合える。ゆえに、妻であり母である彼女たちが、こうして家族のもとを離れての旅を満喫できている。一昔前ならば、子どものことが気になって、家を離れることは困難だっただろう。
さらにはこうして、旅の経験を即座に世界中へシェアできる。「紀行」の常態の変容たるや。大量のフィルムを携えて旅したころが、つい最近のことのように思い出せるだけに。雑に撮ることに慣れた自分を戒めつつ、あのころのように、1枚1枚を大切に、被写体に向かって集中力を高め、シャッターを押すことも大切だと省みる。
などと言いながら、互いに阿呆な写真を撮り合う、いい大人たち。
夕映えに麗しくきらめく海。今の姿だけでも十分に美しいと思うのだが、実はここ、2年前までは「アズール・ウインドウ」と呼ばれるアーチ状の岩石があったのだ。
ところが、2017年3月、マルタを襲った強風と高波により、崩壊してしまったのだという。下の2枚の写真が現在の姿。
ここもまた、世界遺産に指定されていた場所だとのこと。こうして見比べると、景観が著しく異なることがわかる。マルタの人々がどれほど衝撃を受け、心を痛めたか、想像に難くない。
ピーターの的確な案内のおかげで、島の随所にちりばめられた、異なる表情の海辺の光景を目にすることができた。
暴風雨が残した傷跡を随所で目にした1日でもあったが、旅の前に立てていたプログラムをすべて網羅して、島内観光ができたことは、本当に恵まれていたと思う。
最終日の明日は、ホテルからほど近いヴァレッタの市街を散策するなどして過ごす。