◎到着早々、トラブルか? ロスト・バゲージ未遂に少々ストレス
バンガロールから約10時間。無事、アムステルダムに到着した。利用したフライトは、昨今、経営不振が取り沙汰されている、しかし個人的には好きなインドのジェット・エアウェイズ。国際線に乗るのは初めてだ。
深夜2時過ぎにバンガロールを発った飛行機は、予定より早くアムステルダムのスキポール空港に到着したのだが、待てど暮らせど、わたしのスーツケースが現れない。ビジネスクラスの荷物は本来、早めに出てくるはずなのに。そして、誰もいなくなった。
どんよりとした気分でサーヴィス・カウンターへ赴き、捜索してもらう。1時間以上、なんやかんやで待たされた。外は寒いのに、ダウンジャケットはスーツケースの中だ。明日までに出てこなかったら何もかも買い物せねばならないな……などと、諦め気分でいたところ、発見されたとの知らせ!
ジェット・エアウェイズがバンガロールの空港で積み忘れたのだろうと思っていたが、実際は、オランダの扱いが雑だったという結論。ありがちなスーツケースゆえ、誰かに間違えられないように、青いベルトをしたり、猫の絵を描いたりしたのが逆効果だったのかと自らの対策を一瞬、憐れみさえしたが、出て来てくれて、本当によかった。
◎旧来のホテルの概念を刷新。新しいコンセプトのホテルが楽しい
昨今は、情報が多すぎて、取捨選択に悩むホテル。一度は運河沿いのアンティークなホテルを予約していたものの、途中で気がかわり、新しいコンセプトのホテルを選んだ。これは大正解だった。さほど広くない空間ながら、キッチン、リヴィング、ロフトのベッドが、見事に効率よくレイアウトされており、広々とした空間を構築している。
ロビーを兼ねた最上階のソーシャルフロアは、眺めもよくリラックスできる。カジュアルなビジネスミーティングにも好適。WeWorkのホテル版といったイメージか。チェックインの際や、ダイニングでのオーダーは、すべてiPad処理。
無駄を削ぎ落とし、実践的な機能を重視したサーヴィスが、むしろ心地いい。このようなコンセプトのホテルは、今後、グローバルに増えるのだろう。わたしは、もちろんラグジュリアスなホテルも好きだけれど、基本的には独立独行型につき、この自由さがたまらない。
アムステルダムは、あいにく小雨混じり。ゆえにランチはホテルで取ることにした。ヘルシーこの上なく、おいしい! 長時間のフライトで疲れた胃袋にやさしく、食欲は刺激される。
オランダは、酪農でも有名だが、農業全般の力が強いのではないかと、料理を噛み締めながら直感する。先ほど調べてみたところ、やはりオランダの農業はすごかった。「スマートアグリ」と呼ばれる農業のIT化、機械化により、九州ほどの国土面積ながら、農産物輸出量は、米国に次ぎ世界第2位だというではないか!
ちなみにオランダの人口は約1700万人。ムンバイの約1800万人よりやや少ない程度。人口密度が低い。
「世界は神が作ったが、オランダはオランダ人が作った」と言われる通り、オランダの国土は、その20%以上が、13世紀以降の干拓事業によって造られた土地だ。国土の約30%が海面より低く、堤防によって守られている。
わたしは、29年前のオランダ1周ドライヴ取材で、その地理を肌身に経験した。そもそもは決して農業に適していなかった国土が、「人智」によって、豊かに育まれて来た経緯が興味深い。
オランダはチューリップで有名な国でもある。キューケンホフ公園を訪れたいところだが、今はまだ開花には早く残念だ。そもそもトルコ原産のチューリップは、16世紀、オランダに伝わった。以降、大変な人気が出て、ヴァラエティ豊かに品種改良も行われた。絵画のモチーフとしてもしばしば登場する。17世紀半ばには、人々が球根を買い漁り、「チューリップマニア」と呼ばれる世界最初のバブル経済を引き起こし、高値がついて市場が崩壊する事態に発展したという。
酪農王国でもあるオランダ。前回の旅行時、即ち25歳のわたしは、チーズがあまり好きではなかった。しかし今日、いくつかの店に立ち寄り、試食をして、本場のチーズのおいしさにノックアウトされた。風味も、コクも、まろやかさも、すばらしい。気に入ったチーズは帰路、必ず買って帰る!
オランダの陶磁器といえば、17世紀に誕生したロイヤル・デルフト。デルフトブルーと呼ばれる青い手描きの陶磁器が有名だ。市街中心部の店舗では、デモンストレーションも行われている。上品な青の濃淡が美しくて見入る。マルタ島を旅したあと、帰りの1泊で時間があれば、記念になにか買おう。
◎大麻が合法の国。喫煙可能な「コーヒーショップ」が街の随所に
オランダは運河の街。運河沿いに立ち並ぶ情緒ある家並みは、細長く高く、奥行きがある。かつて家の税金が間口の広さによって決まっていたころの名残だという。
街を歩けば、随所でコーヒーショップを見かける。コーヒーが飲めるカフェではなく、ここはマリファナを出す店。この国では、大麻が合法なのはよく知られているところ。あちこちで大麻の香りが漂っていて、立ち止まれば間接喫煙になるのではないかとさえ思う。
小雨混じりの街を、傘をさしながら歩く。思ったほど寒くないのが救いだ。ビールにふさわしい気候とは言い難いが、世界的に有名なオランダ産ビール「ハイネケン」の工場を訪れることにした。ハイネケン創始時代を知る伝統的な展示にはじまり、モダンなプレゼンテーションへと続く。
見学には、ビールは試飲1杯に加え、2杯ついてくる。しかし短時間に3杯も飲めない。2杯どまりでもったいなかった。ちなみに悪名高き米国の禁酒法が廃止された直後、ハイネケンは米国進出を果たしたという。なお、インドでは約10年前にユナイテッドブリュワリー(UB)と提携し、インドで生産・販売が開始されている。
本当は、名物料理などをあれこれ食べたいところだが、ヘルシーだからと食べ過ぎたランチ、そしてビールが胃腸を満たしており、あまりお腹がすかない。ジャンクを承知で、部屋で飲みつつ、チップスなどを食べる。この緩やかな時間が、何とも言えず幸せ!