ニューヨーク滞在も残すところあと1日。明日の深夜便でロンドンへ飛び、更にダブリンへと向かう。
ボストン日帰り出張に出た夫を見送ったあと、セントラルパークへ。
緑の匂い、鳥のさえずり、心地よく。
ホテルで朝食をすませたあと、ホテルの斜向いにあるMOMAへ。
ついこの間、訪れたばかりのような気がしていたが、記録を遡れば8年前。なにがなんだか。
MOMAについては、のちほど記録を残したい。
ランチは、ニューヨーク在住の真由美さんと3年ぶりに、日本料理店「初花」にて。まさしく「インスタ映え」する、見目麗しい料理。9種の小鉢には、下に鮨飯が上品に入っている。量、味のバランスともに、非常にいい塩梅で、本当においしかった。
ところで、初めて真由美さんと出会ったのは、1998年のことだ。当時、ミューズ・パブリッシングを起業し、この地で働いていたわたしは、『地球の歩き方』の別冊『地球の暮らし方/ニューヨーク編』の取材を受けた。我が自宅兼オフィスに、日本からの女性編集者と、ニューヨーク在住の女性フォトグラファーが、二人そろって来訪された。
わたしが自身のバックグラウンドを説明すべく「出身大学は、下関市にある梅光女学院大学というところです……」と言った瞬間、それまで静かにわたしの写真を撮影していたフォトグラファーが、突然、「え〜っ!」「わたしも梅光です!」と、興奮の声を上げた。
彼女が、真由美さんだった。
それからはもう、しばらくの間、二人して、うぎゃうぎゃと叫び合ったのを覚えている。
というのも、梅光女学院大学(現梅光学院)。極めてマイナーな大学で、大学卒業以来、偶然同窓生に会うことなど、一度もなかったのだ。しばしインタヴューが中断されたのは言うまでもない。
真由美さんの方が年上なので、同じ時期に通っていたわけではないのだが、それでも十分に感嘆に値する出会いであった。
その後、編集者が「テープ起こしのとき、あの時点だけ、音量がすごかったです」と言っていた。あれから20年余り。……そういえば、昨年、梅光学院で講演をしたことや、新しいキャンパスが竣工されたことなどをお話しようと思っていたのだが、すっかり失念していた。また来年!
ところで、今回、真由美さんの二の腕が鍛えられているのが目に留まった。かなり本気でトレーニングをされているようだ。「筋トレ」が気になっている昨今。更年期デブ対策は、精神的困難を伴う食事制限ではなく、筋トレがキーワードではなかろうかとの思いを新たにした。
我が家には、夫が買い集めた筋トレ用の各種ダンベルなどがある。「ぶら下がり健康器」に甘んじず、ちょっと真剣に筋トレに取り組んでみようかと思う。
対象が無尽蔵なミュージアム。肉眼で眺め、記憶に留めたい作品の写真を撮ることについては、いつも一抹の違和感を覚えつつも、そのときどきの鑑賞で得た感傷を留めておきたく。
MOMA (The Museum of Modern Art, New York) 。ニューヨーク近代美術館。数年前に訪れたばかりだと思っていたが、すでに8年もたっていたことに驚愕しつつ、なじみのある館内を巡る。
過去、何度も訪れて来たはずなのに、新しいもの、親しみあるもの、改築中で見られないもの……それぞれに。綴るに尽きぬが、今回の訪問で印象に残ったものを挙げるとするならば。
テクノロジーを駆使した動きのあるインスタレーション。NEW ORDER。
巨大なスクリーンに映し出される動画の迫力を初めて目の当たりにしたのは、2年前、ケララ州で開催された現代美術の国際美術展覧会『コチ=ムジリス・ビエンナーレ』を訪れたときだ。すばらしい芸術祭だった。今年は行きそびれたが、再来年は何としても訪れたい。
過去にはなかった、動きの見える展示もまた、興味深かった。たとえば、「ダンス」がテーマのコーナーでは、バレエダンサーの踊る様子が映し出される。肉体の「動き」が見える。静と動の心地よいバランス。
今回、強烈に迫ってきたのは、回廊に展示されていた作品。ピカソのゲルニカを想起させる、しかし色鮮やかな地獄。1967年。Faith Ringgoldの作品で、タイトルはDie。死ぬ。当時の、黒人と白人との諍いが、苦く強烈に描かれている。改築中ゆえに、ここに移動展示されているのだろうか、かつては、こんな目立つ場所では見なかった。折しも、日本で起こった凄惨なニュースを読んだ直後のこと。絵画が辛くも迫ってくる。
学校の課外授業で訪れた子どもたちが、先生の説明を熱心に聞いている。こういう活動は、本当に意義深いことだと思う。ダリ、ミロ、モネ、ゴーギャン、クリムト、マグリット、ゴッホ、マチス、ピカソ……偉大なるアーティストたちの作品も、少しずつ見られ、その世界観の断片を、目にすることができる。子どもの社会科見学には、贅沢にもすばらしい場所と思う。画家のライフを含めた絵の背景を知れば、関心は高まるに違いない。
見たかったキリコやグレコの作品は、改装中のエリアにあるのか見られずに残念だったが、また次の機会に。願わくば、あまり込み合っていないときに訪れたいものだが、無理な相談だろうか。
来年もまた、MOMAの斜向いにあるこのホテルに滞在することになるだろう。そのころには改築も終わっていることだろう。また来年、足を運ぼうと思う。