昨日の9分間の祈りに際し、みなが一斉に電気を消したら電力供給に異常が起こるのではないかという噂が広がりました。確かに、問題は起こります。ゆえに、背後で、電力をコントロールする準備が行われていました。
わたしの夫の友人のひとりが、電力安定にかかわる仕事をしています。彼の会社は、電力需要が急に落ちた際のグリッド(送電網)の安定を図るための計画書を作成、実施。
その計画書や、9分の時間帯前後のグラフや推移を伝える記録が、先ほど夫のWhatsAppにシェアされてきました。内部事情なので無理ですが、転載したいくらいです。確かにグリッドが復旧していない(していなかった)農村部もあるようですが、配慮はされています。
「電気を消し、光を灯して、心をひとつにして祈る」という、一見、原始的に見える行動の裏にも、当然ながらテクノロジーのサポートがあり、わずか9分の黙祷を実現するために、多くの人たちが尽力しているということを知ってもらいたく、記します。
どの国にも、どの場面にも、一言で是非を問うには難い、裏方の人たちの尽力があるということを、どの国に対してでも、心得ておかねばと、改めて思います。
非科学的だという人もいるでしょう。しかし、明日のことさえ予知できないこの危機的状況において、人間は、偉そうなことを言っている場合ではありません。せめて、みなが心を一つにして、規律を守り、祈りを捧げ、目に見えない敵と戦うときだと思います。
普段はモディ首相に対してはシニカルな夫も、祈りの大切さを知っています。庭に出て、夜空を仰ぎながら、灯火を前に祈りました。日々、医療の前線で戦っている医療従事者のみなさんをはじめ、国の治安を守る人、リスクの高い配達業に従事する人、セキュリティを管理する人……。
そんな人たちに感謝しつつ、みなでこの事態を謙虚に真摯に受け止め、地球の未来が明るく見えるときまで、前向きに生きていこうと改めて思います。
以下、4月3日の記録(モディ首相の演説)を転載。
◎国を挙げてのロックダウンを始めて9日が過ぎました。この期間、インドはかつてない規律正しさや奉仕(サーヴィス)が見られました。
◎いかなる状況下でも、ソーシャル・ディスタンス(人と人との距離)をとりましょう。それが新型コロナウイルスの連鎖を断ち切る「唯一の万能薬」です。ラクシュマナ・レーカー(*)を超えてはなりません。
◎我々は一人ではありません。13億人が一緒になって、ともに新型コロナウイルスと戦いましょう。
◎ひとつお願いがあります。4月5日(日)の午後9時、家中の電気を消してください。そしてバルコニーや玄関先で、9分間、ディヤ(オイル・キャンドル)やトーチ、あるいはモバイルフォンのライトを灯してください。
◎その際、道路や外に出ないでください。バルコニーか玄関先に立ち、ソーシャル・ディスタンスを取ってください。闇に光を灯すことで、わたしたちは、ともに戦うべき相手が何なのか、見えてくるはずです。
◎ともに、新型コロナウイルスという「闇」と戦いましょう。ロックダウンを尊重してくださって、ありがとうございます。
*ラクシュマナ・レーカーとは、インドの抒情詩『ラーマーヤナ』の中に出てくるエピソードです。悪魔を退治すべくランカ島へ向かう主人公ラーマ王子とお妃シーター、そしてラーマ王子の弟ラクシュマン。
ラーマー王子が不在時、ラクシュマンがシーターを守るため、「お妃様、この線から外に出ないでください」と地面に線を引きました。これを「ラクシュマナ・レーカー」と言います。
しかしながら、シータはラクシュマンの外出中に、この線を超えてしまい、悪魔ラーヴァナに連れ去られてしまいます。
ラクシュマナ・レーカーは「超えてはならない制限ライン」、結界のような意味合いで使われます。モディ首相がロックダウン宣言をしたときにも、「みなさんの家の戸口の前に、ラクシュマナ・レーカーを引きなさい」と言いました。
わたしは個人的に、インドは神話世界と現代社会、原始と先端が共存している国だと思っています。これを機会に、『ラーマーヤナ』をお読みになることをお勧めします。インド世界の理解に役立つヒントが詰まっています。