所用があり、朝から夫と二人、市街西部へ。帰路、「ドーサでも食べようか」とのことになり、久しぶりにSAMRATへ。
この店を初めて訪れのは2004年。インド移住の前年、ワシントンD.C.に暮らしていたころだ。振り返るに説明のつかない、インドの磁力に引きつけられて、嫌がる夫を説き伏せつつ、インド移住を画策していた日々。
移住が確定したわけでもないのに、当時、増えつつあった夫のインド出張に同行。妻は、不動産物件を巡るなど「ライフスタイルの視察」を徐々に始めていた。
そんなある日。オートリクショーのドライヴァーに勧められて、滞在していたタージ・ウエストエンドホテルにほど近いこの店を訪れた。レースコース・ロード沿いにあるSAMRAT。ホテルの朝食で出される「上品な」ローカルフードとは異なる、ギー(精製バター)の存在感もどっしりと、食べ応え満点の土地の味に感嘆した。
バンガロールに移住した当初は、市街西部に暮らしていたこともあり、折に触れて訪れていたが、東部に引っ越してからは疎遠になっていた。10年ほど前にローカルフード探検隊で訪れたあとは、ミューズ・クリエイションのメンバーと最寄りのアートスクールが会場のバザールに行く前に訪れたのが最後だったか。
ドーサが出される時間帯が微妙にややこしく、今日も20分ほど待ったのだが、その間に、我が好物のワダ(Vada)を頼む。このドーナツ風の揚げもの。ウラド豆を主原料に、玉ねぎや各種スパイスが控えめな隠し味として調和している。揚げたてのそれをココナツチャトゥネをつけて食べる。サンバルで合いの手を入れる。
おいしい。……おいしい。
一瞬「がんもどき風?」と思わせておきながら、実は全然違う旨味がある。ちなみにわたしは当初、ワダの魅力に気づくことができなかった。4、5回目、突然に、その深みある魅力を実感したという経緯がある。
揚げたての、こんなにもっちりと食べ応えあるワダを食べるのは久しぶりだ。
揚げたて。これは必須条件。そしてわたしの場合、「しゃばしゃばした水気の多い」ものではなく、「比較的ドライ」なココナツチャトゥネを好む。
ワダを食べ終えたところで、目に飛び込んできたよそ様のプーリー! 1皿に3個という贅沢さ。「カロリー」という囚われを忘れさせる魅惑的な形状。夫と顔を見合わせ、思わず追加注文。
手を油でギトギトさせながら、揚げたてのもっちりパンを味わう。もうすでにお腹いっぱい。インドのヴェジタリアン食の底力だ。
ここまでを朝食ということにして、ドサからがランチだということにする。
黄金色に輝くドーサ。筒状に巻かれるものあり。クリスマスの三角帽子のように立体的なものあり。しかしこの店のそれは、無造作な折り曲げ三角。その姿は「どっしりとした食べ応え」を物語る。
ちなみにこれは、マサラ・ドーサ(スパイス風味のポテト入りドサ)。我が家は、「クリスプさ」を保つべく、通常は巻き込まれているポテトを「別添え」で出してもらう方針だ。
個人的には、薄くて巨大な「ペーパードーサ」が好みだが、たまにはこのどっしりも悪くない。
ところでドーサは、前述のウラド豆とコメで生地を作り、一晩寝かせて軽く発酵させたあと、焼く。発酵食は身体によい……といいたいところだが、これは油脂が多すぎて、諸々、駆逐されている気がする。
最後にサウス・インディアンコーヒーで締め括り。フルーツジュースやラッシーもおいしく、また練乳キャラメル風もお勧めなのだが、本日はスキップした。これ以上食べたらもう、夕飯分のカロリーすら補えてしまう。
約10カ月の引きこもりを経て、外出が新鮮に思える昨今。過去を反芻するも愉し。
【SAMRAT の思い出】
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