第二次世界大戦が終結した1945年から今日に至るまでの間に。世界で大きな変革が起こったのは、1990年前後だったと、このごろは痛切に感じる。
1988年に大学を卒業し、海外旅行誌の編集者となったわたしは、公私に亘って旅に染まった怒涛の日々を送った。これまでは「自分が若くて成長著しかったがゆえの怒涛」だと思っていた。しかしこのごろは、思うのだ。
世界そのものが、怒涛だった。
あのころ、世界は、イデオロギーの転換期で、わたしは取材を通して、それを自らの目で目撃し、肌身に感じる出来事を経験してきたと。
深海に沈んだままの記録を、きちんと整理してライブラリに収めたいと思うが膨大。
1988年。蒋経国死去し李登輝総統就任、戒厳令解けた直後の台湾取材に始まった我が編集者人生。
1989年、昭和が終わり平成がはじまった。シンガポールにマレーシアを巡ったその秋、ボーイフレンドに振られ、心身ともに凍る冬を過ごしていたころ、バブル経済が崩壊しはじめた。
わたしはもう仕事に生きるのだと、バルセロナ・オリンピック直前のスペイン取材。マドリード、バルセロナ、アンダルシア……。初の欧州に心躍る。
転職後も海外取材は続く続く。
ベルリンの壁崩壊&東西ドイツ統合直後のアウトバーン走り、西から東へドライヴ。湾岸戦争最中の南仏ピレネー山麓。ペレストロイカにソ連崩壊。天安門事件2年後の上海はまだ人民服に自転車も見られ。北京からウランバートルまで36時間の列車旅……。
全ての旅が、呆れるほど鮮明に思い出されるのだ30年の歳月を経てなお。
先日、Twitterを通して勧められた書籍を入手することができた。『南アジアを知る事典』。折しも日本からバンガロールにお戻りの駐在員氏が、スーツケースに余裕があるので必要なものがあればと、申し出てくださった。
大変ありがたく、お言葉に甘え、無添加だしやら海苔やらを日本のご自宅宛に注文送付。併せて、古書ゆえ、海外には送ってもらえなかったこの本を購入し、お送りしたのだった。まさかこんなに分厚く重い本だとは知らず恐縮したが、手にできてとてもうれしい。
その内容の濃さ豊かさに感嘆。常に持ち歩きたいと思わせられる。スマホで確認……では決して得られない、専門家たちによって監修された信頼感。
パーティや会合の席などで、インドの友人らと話をするとき、なにかしら、確認したい事柄が出てくる。そんなときに取り出したい一冊だ。
1991年に編纂され、1992年に初版発行されたこの本。1991年はインドが市場を開放し、自由経済の政策を図った年。印パ分離独立後、社会主義的政策を取っていたインドもまた、ペレストロイカの影響を大いに受けた。
執筆された時期を念頭に置いた上で紐解く必要があるが、30年の歳月を経て、読み応えある内容だ。
✏️記録を残すこと。過去を反芻することの大切さについて、しばしば言及してきたけれど。
いったいぜんたい、それを未来に、どう生かそう。歳を重ねれば重ねるほどに、模索も深まる人生だ。
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