資生堂の「エクボ洗顔フォーム」のコマーシャルで松田聖子のデビュー曲『裸足の季節』を聞いたのは、中学3年の時だった。
それまで顔も身体も石鹸で洗うのが普通だった世界において、「洗顔フォーム」というコンセプトそのものがまた、新しかった。
バスケ部の部活を終えた後、首にタオルをかけて手洗い場へと赴き、みなそれぞれに持参の「エクボ洗顔フォーム」で顔を洗った。
松田聖子が「ザ・ベストテン」に登場し、独特のヘアスタイル即ち「聖子ちゃんカット」を揺らしながら歌う姿に見入った。多くの女子が真似をした。
あの威力はいったい、なんだったのだろう。
自分に似合うか似合わないか、そんなことは考えなかった。あのヘアスタイルが、とてつもなく魅力的だった。あのヘアスタイルにすれば、自分がかわいくなるような気にさせられた。
ナショナル(パナソニック)のクルクルドライヤーを愛用。何をおいても、毎朝のヘアブローは欠かさなかった。
高校時代のアルバムを引っ張り出してみる。……と、出てくる出てくる。自分なりにかわいこぶっているつもりの、体格がよく態度のデカい女子高生が!
彼女のファンだったのか……といえば、多分そうではない。しかし、彼女のヒット曲はすべて、歌詞を覚えているし、今でもすぐに歌い出すことができる。真似さえできる。
同じ福岡県出身ということで、親近感もある。赤の他人とは思えない、親しみやすさを感じていた。
だから、彼女の一人娘が他界したニュースを知ってからというもの、このところ、毎日のように、何かしらの動画を見てしまう。
女性が働くこと。夢に向かって挑戦すること。周囲から叩かれても叩かれても、それを維持すること。彼女のこれまでの努力の、どれほど壮絶だったか。
結婚、出産、離婚、結婚、離婚、結婚……。プライヴェートだけでも相当のエネルギーを要する半生。それに伴っての仕事。多くの人を巻き込みながら、自身をもブランド化せねばならないタフさ。
ご自身の目標を具現化しようと努力し続けてきた彼女を、家庭の事情を何も知らない人が、ことに母娘関係に関してジャッジメンタルに言い及ぶのは、本当にいかがなものかと思う。
母娘はこのところ疎遠だったようだが、以前はしばしば共演されていた。一昨日、たまたまこの動画を見つけ、音声を聞きながら、なんとも言えない気持ちになった。
「アナと雪の女王」の『生まれてはじめて』が好きで、自分でも歌いたくなり、数えきれないほど何度も、神田沙也加の歌声を聞いて、真似た。わたしの十八番である。
そんなこんなで、他人事ながらも、すぐに忘れられずにいる年の瀬。
◉「アナと雪の女王」神田沙也加×松田聖子 2011年・親子対談
素晴らしい文章ですね
投稿情報: a | 2024/07/11 15:09