この夜からすでに10日が過ぎてしまった。明後日からまた、別の旅に出る。その前に、ジャイプル旅のことは、あれこれを取りこぼしてなお、書き残しておきたい。
◎夕刻、ジャイプル北部郊外にあるJaigarh Fortへ向かう。ここから望む夕景がすばらしいとのことで、6時の到着を目指した。あいにく地平線のあたりは雲に覆われていて、夕日を眺めることはできなかった。しかし、乾いた山に延々と横たわる砦のようすは美しい。ここにはまた、世界最大と言われる大砲「The Jaivana cannon」が鎮座していた。歴史的な背景を綴れば尽きず、そこかしこに逸話。
そして日暮れて、パーティの会場となっている中央の広場に向かう。YPOジャイプル支部が準備してくれたというそこは、なんとも幻想的に麗しく在る。簡素に無口な砦の建造物。そこにさまざまな「光」が配されて、まさにシュルレアリスム。
わたしは、子ども時代からサルバドール・ダリ(スペイン)が大好きで、大人になって知ったジョルジョ・デ・キリコ(イタリア)の絵画にも強く引き込まれた。また、ポール・デルヴォー(ベルギー)の夜景や鉄道に心惹かれ、ともあれ、インドを知る以前は、それらはすべて「欧州出自」だと思っていた。
しかし、[Jaipur 01]で記した通り、欧州ではなく、欧州列強の影響も受けたところの「インド亜大陸 」が我がノスタルジアの根源だったということを、改めて認識する。特にここ、ラジャスタン州に来るにつけ。
◎車を降り、門をくぐり、会場まで歩くうちにも、キリコの絵の中に紛れ込んだような気持ちにさせられる。そうして、会場に入り、音楽が鳴り響き、「喇叭」を掲げた男たちの姿を見た瞬間に、図らずも、涙が溢れた。個人的な精神世界のことは、気安く綴るべきことではないので、ここでは軽く触れるにとどめるが、ともあれ、「来るべくして来た」との思いを強くした。
既述の通り、YPO ASEANのメンバーたちも同席しての、それはそれは多様性に富んだ夜だった。ステージでダンスをしてくれた、そのダンサーの物語が印象的で、彼女のことは別途、記す。
◎YPO ASEANのメンバーがボリウッドダンスを披露するなど、賑やかに楽しい時間。そしてなぜか! バンガロール支部の多様性の象徴として、我がForumの友人らがわたしにJAI HO! を踊れという。JAI HO! 。それはミューズ・クリエイション黎明期からの定番ダンスにつき、踊れるっちゃ踊れるが、最後に踊ってから3年ほどたつ。
でもって、いくらなんでも、素人が一人でボリウッドダンスを披露するような場所ではない。披露するなら、せめてあらかじめ、練習しておきたい!
つべこべいうわたしに容赦なく、勝手に音源の準備をして、「これから日本人のミホが踊ります!」とアナウンスする友人Dekyi。……ったく!! さすがに一人は気がひけるから、彼女らを連れてステージに上がり、一緒に踊ってもらった。音楽が流れ始めると、自然と楽しくなってしまう。恐るべしボリウッドダンス。
Dekyiの夫のAmitが撮影してくれた動画を見直したら、やったらうれしそうに踊っている自分の姿……。ノリノリかよ!! と自分に突っ込む。それもこれも、前世はこの界隈でダンサーだったのだろうと、一人、腑に落とすのだった。
◎ところでこの日、着用したサリーも、友人Yashoのブランド、Mrinaliniで購入したバナラシ(Banarasi )シルクだ。購入時のエピソードは以下のブログに残している。わたしは彼女のファッションセンスが本当に好き。サリーやアクセサリーの選び方も本当に感銘を受ける。この日、彼女が着ていたのは、お母様から譲り受けたという古いバナラシ(Banarasi )シルクのサリー。このワークがまた精緻で本当に美しい……。
◎なお、YPO ASEANのメンバーはASEAN諸国の在住者はもちろんのこと、他国からの駐在員も在籍していることから、マンハッタン的な多国籍ぶり。東は韓国、西はブリュッセル(ベルギー)やバルセロナ(スペイン)のメンバーとも話をする。実はわたし、韓国は未踏なのだが、ベルギーもバルセロナも大好きで、何度か旅した土地でもある。話が芸術や文化の深みに嵌り、束の間、時間旅行を楽しんだ。
と、綴れば尽きぬ。明日はFM熊本の収録につき、早朝起床だ。そろそろ寝よう。
🥻今年初! 『インドのテキスタイルとサリー講座』で「不易流行」。古来からの歴史、文化、伝統、政治、世相を映す、インドの布世界。(2023)
https://museindia.typepad.jp/fashion/2023/09/saree.html
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