旅人として初めてバンガロールを訪れたのは2003年12月。以来、20年余りのこの街の変貌の様子が、あたかも走馬灯のように脳裏を巡る昨今。ただ、誕生するだけではない。まさに躍るシヴァ神(ナタラージャ)の如く、破壊と創造が繰り返される景観。
新しいものが次々に誕生する一方で、古き良きものを守ろうとする動きもある。英国統治時代に建築された趣のあるコロニアル建築物もその一つ。1800年代、1900年代初頭の建造物も、数十年前までは、まだ数多く、この街に残っていた。
緑が生い茂る広大な庭にぽつんと佇むバンガロー(平屋一戸建ての建造物)とは対照的な、建蔽率の高い無機質なビルディングが次々に生えて(!)いる。一方で、たとえ改築や維持に予算や労力がかかったとしても、昔ながらを守ろうとする動きもある。
わたしのお気に入りのブティックであるRaintreeやCinnamonもその一例だ。
さて、最近また、うれしいニュースが飛び込んできた。バンガロールの中心部、英国統治時代からの繁華街だった「コマーシャル・ストリート」の近くに、アートとクラフトのコミュニティセンター、Sabhaが誕生したのだ。
160年以上の歴史を持つ教育機関の管理下にあった、タミル(南インド)の学校の寂れた古い校舎を再構築し、文化的な空間として再誕させたもの。文化や伝統、芸術、音楽、パフォーマンスなど、創造に関わるさまざまな催しや活動を支援すべく、今後、この空間は提供されるという。
なんというすばらしさ!
Muse Creation としても、またOkaeri Venturesとしても、未来、この場を活用させていただくことになるだろう。インド移住当初から、いや、23歳のときに初めてシンガポールを取材し、ラッフルズ・ホテルやグッドウッドパーク・ホテルなどのコロニアル建築に身を置いたときから、かような建築物も好きだった身としては、旧居から車で約10分ほどの場所に、こんなコミュニティが誕生したことが本当にうれしい。
同団体のサイトに詳細が記されているほか、今後のプログラムなども記載されている。バンガロールにお住まいの方は、ぜひ足を運ばれてはいかがかと思う。
[Sabha]
https://www.sabhablr.in/
火曜はインディラナガールで午前、午後と2本のミーティングがあった。午前はミューズ・クリエイションのメンバーと、慈善団体訪問や今後の活動についての打ち合わせ……を口実とした懇親会的おしゃべりの時間。幹事の方が選んでくれたのは、TOITというブリュワリー。
朝からオープンしてるの? と思ったが、朝食メニューから準備されている。わたしがここに来たのは、10年ぶりくらいだ。久しぶりの訪れると、その雰囲気のよさに感じ入る。待ち合わせの朝10時は、当然の如く、店内はがらんとしていたが、気づけば周囲のテーブルは徐々に埋まり始め、ランチタイムには、ほぼ満席。
平日の昼間だというのに、みなビールを飲みながら雑談なのだか商談なのだかわからないが、会話を楽しんでいる。パソコンを広げているテーブルもあったが、そこにも、もれなくビールが置かれている……。
自由だ!
初めてパリを訪れた遠い日、平日の昼間から、仕事中だと思しき人たちが、ワインをザバザバと飲む様子を見て、自由だな……と思ったことを思い出す。
インドは広く、バンガロールはインドの中においては昔からアルコール消費量が多い「パブ・シティ」であることもあり、飲酒に寛大だが、全く異なる環境の都市もあるので念のため。
ちなみにバンガロールは、インドのビールの代名詞ともいうべくキングフィッシャービールを生産するUB(United Breweries)グループの拠点であり、英国統治時代からビール製造が行われていた。
歴史を語ると長くなるので割愛。
現在、バンガロールには70を超えるクラフトビールのブリュワリーが林立しているが、黎明期は2012年。UBシティの向かいにあるBIER CLUB、ホワイトフィールドのWINDMILLS CRAFTWORKS、市街中心部のガルーダモール向かいにあるARBOR BREWING COMPANY、そしてここ、インディラナガールのTOITの計4店が、先駆けであった。……と、話がまた長くなる。
ミューズ・クリエイションの今後について、改めて思いを巡らすいいミーティングだった。わたしは午後の打ち合わせがあったため、あいにくビールを飲めなかった(このごろは酔いやすく、冷めにくい)が、次回はちゃんとビールを飲みにこようと思う。
⛰
躍るシヴァ神は、霊山アルナーチャラの山道で購入したもの。ちなみに我が夫、現在、アルナーチャラ滞在中。
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