先週と、昨日とで、だいたい家具の相場がわかったので、今日はそれまでの情報をひとまとめに、数軒の店で家具を購入することにしていた。本来ならまとめて一カ所で買いたいところだが、ダイニングテーブル、ソファーセット、ベッドフレームなど、それぞれ異なる店に欲しいものが散らばっていたので、今日は少なくとも3軒をはしごして最低限の家具を購入し、月曜日に配達してもらう手配をするつもりだった。
11時過ぎに車を手配し、ホテルを出る。まずはMGロードの家電店で、冷蔵庫とテレビ、洗濯機、電子レンジを買ったあと、インディラナガールへ。途中の長い信号待ちのとき、車窓の向こうの看板が目にとまった。
"FUNITURE FAIR 2005, 25th - 28th November 2005"
年に一度のファニチャーフェア(家具フェア)の案内だ。25日と言えば、今日じゃないか。場所はどこ? なんたらかんたらインドア・スタジアム? ドライヴァー曰く、その会場はすぐそばだという。インディラナガール行きはひとまず後回しで、フェアに行くことにした。
広大なスタジアムに、数十の家具店がブースを連ねている。10時開場とのことで、まだお客もまばらだ。すたすたと足早に開場を縫い歩きつつ、四方八方に目を走らせる。主にはモダンかつシンプルな家具が占め、時にこてこてインド家具が登場する。わたしの好きなタイプの家具はない。
●インドの伝統家具を扱う店の店頭には、ぶらんこ。マハラジャなインド人は、なにかとぶらんこを好むようだ。が、我が家には、不要だな。ひとまずは。
●最終列のブースに達して、引き返そうかと思ったところに、あった! なんだかいい感じの家具! 出されている家具は主にマホガニー製。質もデザインも、好みにかなり近い。値段も質の割にはリーズナブル! THE VINTAGE SHOPという店のブースらしい。
THE VINTAGE SHOPの、果たして店舗はどこにあるのかと、店の人に尋ねたら、エアポートロードの近くにあるとのこと。ここにあるのはごく一部で、店舗にはベッドやソファー、ダイニングテーブルなどの大物家具も、あれこれあるという。予定を返上して、早速、その店に行ってみることにした。
エアポートロードから少し外れた住宅街の一画に、その店はあった。そこはまさしく、わたしの好みに一致する家具の宝庫であった。店番のおじいさんに、「ファニチャーフェアで見つけて、来たんです」と言ったら、彼は目を丸くして、「えっ? フェアはさっき始まったばかりですよ。早いご到着ですねえ!」と驚く。何でも店のオーナーは、フェアの開店を見届けたあと、今、戻って来ているところだという。
ダイニングテーブル、机、サイドボード、その他、いずれも味わいのあるデザイン。ひとつひとつの値段や材質などを確認する。ただ、ソファーセットが好みに合わない。それからベッドのフレームもない。その旨、おじいさんに伝えたら、すぐ近所に別店舗があるから、そこを見てはどうかと勧められる。
それでは、ひとまず見てきます、すぐにまた戻ってきます、と、別店舗へ。わずか3種類しかないソファーセットの一つが、まさにわたしの好み、ヴィクトリアスタイルのセットだった。それはもう、昨日見たものよりは、ずっとよくて、その上、安い。かなり安い。この段階で、わたしのアドレナリンは急上昇。店の人曰く、
「これは最後の商品です。もうストックはありません」
買うしかなかろう。しかし、ベッドのフレームは、いずれも好みに合わず。どこか他の店をあたるしかないだろう。ともかくは、いいソファーセットが見つかったから満足だ。支払いは本店でまとめてできるらしいので、品名だけを確認して、再び本店へ。
店に舞い戻ったところで、ちょうどオーナーが到着していた。オーナー曰く、「キングサイズのベッドのフレームは、昨日到着したばかりのがありますから、ウエアハウスを見ましょう」と、目と鼻の先にある工房兼倉庫に連れて行ってくれる。
そこでは、古いピアノや車(!)、家具などが所狭しと並んでいて、修復作業がなされていた。一方、奥の方には新品の家具の山が梱包されて積まれている。店主曰く、彼の店はインドネシアに工場があり、そこで作られたものがここに送られてくるのだとか。また、アンティーク家具の加工などもここで行っていると言う。
従業員を指示して、彼が奥から出して来てくれたのは、これまたわたしの好みにぴったりのキングサイズベッドのフレームだった。それからベッドサイドのチェストもいい。ゲスト用(母用)のクイーンサイズは、アンティークの商品があった。それはきれいに加工して、色を塗り直してくれるという。
それから、やはり数日前に英国から届いたばかりだという大きなデスク。これがまたすてき。値段をひとつずつ確認しつつ、電卓をはじきつつ、「桁、間違ってないよね」と何度も見直し、念のため、「USドルでは***ですよね」といちいち念を押し、そのリーズナブルさに最早笑いがこみ上げてくる。
安いものを見つけるのは難しくないが、いいもので安いものを見つけるのは難しい。その難しいことが、数時間のうちにほぼクリアになり、欲しかった家具がすべて、ここで手に入ることに、一人興奮状態である。
●左はベッドルーム用の引き出しと鏡、右はダイニングルーム用のサイドボード。いずれもマホガニー製で、質感がいい。
●これがイギリスから来たデスク。かなり大きい。両側に引き出しがついていて、二人が向き合って使えるデスク。夫は主に、オフィスで仕事をするから、普段はわたしが一人で使うことになり、だから兼用でも問題ない。
そんなわけで、この店で、家具のほとんどを購入することができた。
・ソファーセット(3人がけプラス1人用2つ)
・センターテーブル
・サイドテーブル
・ティーテーブル
・鏡付き引き出し
・サイドボード
・ダイニングテーブル(6人がけ)
・パートナーシップデスク(2人用)
・ライティングデスク(ライティングビューロー)
・靴箱
・TVスタンド
・キングサイズベッドのフレーム
・クイーンサイズベッドのフレーム
・マガジンスタンド
もう、このすばらしい買い物の成果を人にしゃべりたくてたまらず、早速母に電話した。購入したすべてを読み上げたあと、値段を言ったら、母はもう、絶句しつつ、驚きつつ、なんだかわからない状態に陥っていた。ここに値段を書きたくてたまらんが、それはどうしたもんだ、という感じなのであえてヒントを書けば、実家にある「イタリア製のライティングビューロー1個の値段の約1割増の値段」で、上記のすべてが買えた、というのが事実である。
ワシントンDCを離れるとき、潔くすべての家具を手放して、荷物はすべて段ボール箱に入るものだけにまとめたのは正解だった。実に実に、大正解だった。うれしくてならず、勢い余って、詳細をレポートしてしまった。
ちなみに、買い物をすべて終えてホテルに戻ったのがちょうど4時半。5時からはこのTHE TAJ WAST ENDのナターシャと日本人客獲得へ向けてのミーティング第一弾が入っていたので、ランチをとる間もなく、待ち合わせのカフェに直行。彼女と1時間ほどおしゃべりをして、今後、どのように共に仕事をしていくか、軽く話し合う。
非常に充実した一日であった。
THE VINTAGE SHOP
(address) 103, Oxford House, 15, Rustum Ngh Road, Off Airport Road. Bangalore
(phone) 25278777