今日から1週間ほど、バンガロア(バンガロール)の中心地にある植物園、Lal Baghで、年に一度のフラワーショーが開催されることを、昨日の新聞で知った。先日、植物を買い求めたナーサリーの近くにある、広大なガーデンである。これは行くしかない。
例の4時間タクシーを手配して、まとめて買い物などにも出かけようと思う。フラワーショーではきっと植物の販売もやっているに違いない。前回、買いたかったが状態のいいものが見つからなかったマリーゴールドが、あればほしい。
鉢植えを大量に買うことを考えて、モハンも一緒に連れて行くことにする。住み慣れたデリーを離れて1カ月。家族も友人もおらず、言葉も通じない南インドのバンガロアで、買い物に出かける以外は我が家から出ることのない彼。それがさだめだと言ってしまえばそれまでだが、時には気分転換も必要だろう。
花を見ることが彼に取って気分転換になるかどうかは別として、ともかくは、ガーデンへ向かう。昼下がりの日差しは強く、風は乾いているものの、だんだん「暑い」と感じる気候になってきた。帽子を被って園内を歩き、フラワーショーが行われているグラスハウスに向かう。
グラスハウスに向かう途中には、予想していた通り、いくつものナーサリーが店を出していた。観葉植物、色とりどりの花々が並んでいる。オレンジや黄色のマリーゴールドもある。帰りに買って行こうと下見をしながら、歩く。
レモンやオレンジなどフルーツの木、ナスやトマトなど野菜の木もある。長く住むことがわかっていれば、こういう食用のものも購入して育てたいところだが、今のところは花だけにしておこうと思う。
一画には、バンガロアのあるカルナータカ州でとれる野菜や、珍しいフルーツなどを展示したブースもある。また、自然食品などを販売する露店も連なっている。今ひとつ、やる気の感じられない店が多い中、試食を勧められたのがこの店。Amlaという果実の加工食品である。
「お肌にいい」とか、「胃腸にいい」とか言われるのだが、Amlaというものが一体なんなのかわからない。英語でなんと言うのか尋ねたところ、隣の露店で、やはり同じような製品を売っていた女性が「グースベリー」だと教えてくれた。
グースベリーといえば、大晦日の日、Leela Palaceのスパでアーユルヴェーダのマッサージを受けた際、トリートメントの後に、「これはグースベリーのワインです」と、小さなグラスに1杯、飲まされたのだった。それは、"Dhathriyaristam"といわれるもので、ヴィタミンCを多量に含む、甘酸っぱい濃縮液であった。
アーユルヴェーダについて造詣の深いスジャータに聞いたところ、グースベリーはとても身体によいのだとか。そんなわけで、ここで勧められるがままに、グースベリーのドライフルーツを買う。
さて、いよいよ、グラスハウスである。ショー初日の今日は、平日にも関わらず、すでに観光客で賑わっている。色鮮やかな花々が、いかにも「インド的」なアレンジメントで、賑やかにデコレーションされ、美しい。
課外授業の子供たちも、列をなして歩いている。インドでは公園や博物館など、課外授業を行うプログラムが多いようだが、子供たちは、見るべき物を見ておらず、ただ列になって足早に歩き抜けているばかりだ。
「美術館に行きました」「花を見に行きました」という事実だけを確認しているようで、とても情操教育に貢献しているとは思えない見学風景である。こういう点において、米国はすばらしかった。スミソニアンのミュージアムなどに行くと、子供たちがノートを片手にメモを取ったり、先生と真剣に話し合ったり、深く実のある授業が行われていたものである。
インドの教師たちには、「歩き抜けるだけ」の教育を、ぜひとも改善してほしい。
さて、モハンも楽しげに、花々を眺めている。
"My home"
"Many"
マリーゴールドや鶏頭を指差しながら、うれしそうだ。きっと故郷の家に、たくさん咲いているのだろう。「サー(ご主人)は来ないのですか?」というようなことを尋ねる。わたしは、週末に来ようと誘ったのだけれど、「クリケットの試合経過次第」という返事を受けていたので、一緒に来ることは諦めていたのだ。
米国時代は、ジョージタウンのダンバートンオークスや、近所のビショップスガーデンに花を見に、二人でよく出かけたものだ。インドとなると、どうしてこうも外出を厭がるだろうか夫よ。まあ、もう少々の慣れが必要であろう。
マリーゴールドの鉢植えを、オレンジ色、黄色、それぞれ4つずつ買った。1鉢が50ルピー。1ドルちょっとだ。丁寧に、車のトランクに詰め込んだあと、数軒の買い物をすませ、ラッセルマーケットへ。
左端の写真は、窮屈そうに売られているバラの様子。これがインドのバラ販売の定番スタイルだ。20本のうち、12本を上に出し、8本を下部にして、長方形にきちんとまとめる。窮屈そうではあるが、ばらばらと売るよりは場所を取らないし、傷みが少ないような気もする。
花を撮影していたら、あちこちから、
「僕をとってくれよ」
「こっちも頼むよ」
と、相変わらず撮影されたがりなインドの人々である。ピーマンの前でポーズをとる男。ブロッコリーを手に持ちシュールなムードの男。やはりここは、奇妙な国である。