タクシーで、夫のオフィスのある中環(セントラル)へ。
Exchange Square 1。そびえ立つ真新しい高層ビルディング。
風が吹きすさぶ、
ビルディングの谷間に立ち、見上げる。
エスカレータ、エレヴェータを乗り継いでゆく。
電話中の彼を待つ間、通された部屋。
眼下に広がる摩天楼。
マンハッタンのそれを凌ぐ勢いで、
天を刺すビルディングの群れ。
1996年の夏、彼と初めて出会ってから十年。
マンハッタン、ワシントンDC、
シリコンヴァレーと舞台を移してのち、
今、インドと中国。
アジアの中心に屹立する。
日ごろの頼りなさはさておいて、
やはり彼は、非凡なる才能と実力を、
持っている男なのだ。
彼にせよ、わたしにせよ、
ひとりではやれなかったことを、
ふたりだからこそ、やれている。
「会社の人に、ランチに誘われたから、ミホもオフィスにおいでよ。彼の奥さんも来るらしいから」
そんな次第で、昼前にホテルを出る。近代的なオフィスビルディングとショッピングモールが林立するあたり。オフィスに通され、夫の同僚、中国マーケット担当の男性、ハンと挨拶を交わす。
北京出身の彼は、アルヴィンドと同様、米国の大学に学び、アルヴィンドと同じMBAを卒業し、米国、香港、中国(北京)を行き来する歳月を送っている。
彼の妻ソニヤはインド系米国人。彼女はニューヨークのアップステイトで生まれ、米国に学び、弁護士の資格を持っている。今は2歳の娘の育児に夢中らしい。
四人でオフィスの近くの日本料理店へ。夫は刺身定食、わたしは寿司定食を注文。本気の刺身を食べるのは数カ月ぶりのこと。トロやウニも入った質の高い料理に感嘆しつつ、饒舌なソニヤの話に耳を傾けつつ。
同じ世代の同僚たちに囲まれて、アルヴィンドの、この新たな舞台は、若くパワフルな力が漲っていることを、間接的に感じ得ることができた。
まるで自分がそこで仕事をするみたいに、わたしの心までもが、はやる。
食事のあと、オフィスに戻る前に、アルヴィンドがオフィスビルディングに隣接するIFCモールを案内してくれる。高級ブランドのブティックやレストラン、フォーシーズンズホテルなどを擁する、きらびやかなショッピングモール。
「あそこのスーパーマーケット、すごいんだよ。日本の食品もたっぷりあるよ」
いつリサーチしたのか、妙に詳しい。
「ここのベーカリーがいいんだよ。ほら見て、"Just Baked" のサインがついているのは、まだ温かいんだよ!」
リトルマーメイド。それは日本のパン屋だ。「焼きたて」サインがついているのも、日本じゃめずらしくないけれど、米国やインドにはないことだから、彼の目には画期的に写るらしい。
「このお茶、おいしいんだよ! ミホも試してごらん」
試飲コーナーではすかさず、お茶の味見。わかった。もういいから、早くオフィスに戻ったら?
オフィスに戻る彼を見送ったあと、しばらくモールを歩き、フォーシーズンズのスパを「見学」し、カフェでコーヒーを飲んで、ホテルに戻った。
夜は、ホテルの最上階のイタリアンで夕食。夜景のきらめきもまたすばらしい。
久しく続いてきた、夫の仕事最優先の日々から開放される日も、近い。あと数カ月後、デリーもしくはムンバイに引っ越しをすれば、数年はそこに定住することになるだろう。
いよいよ次は、わたし自身の、キャリアを再構築するとき。いよいよ本気で、がんばれるときが、やってくる。
3月26日〜4月2日:香港
4月2日〜4月5日:サンフランシスコ
4月6日〜4月12日:ハワイ(カウアイ島のみ)
4月12日〜4月16日:サンフランシスコ、ナパ
4月16日〜4月22日:ニューヨーク