ときには、社会のために無償労働を。というわけで、本日OWC (Overseas Women's Club)が主催するヴォランティア活動に参加して来た。
メンバー(海外からの駐在員夫人)らが持ち寄った不要品(衣類、書物、雑貨、玩具など)を、超安値でドライヴァーや使用人たちに販売するという、いわばバザーである。
前々日に担当者へ電話をしたところ、人手が足りないのでぜひ「売り子」をやってくれと頼まれ、9時半から1時までの開催時間、手伝うことになった。
教会での開催だと聞いていたので、てっきり屋内が会場かと思いきや、「明日は帽子と水を持参してね」と確認の電話が入って初めて、外で行われるのだと知る。この時期、昼間に、外で?
バンガロアの夏は、デリーやムンバイに比べると随分凌ぎやすい。空気は乾燥しているし、朝晩は涼しいし、だから我が家は冷房を入れず、天井のファンだけで十分だ。
が、外に出ると、日差しが鋭くて、暑い。夏の昨今では最高気温が35度くらいになる。無論、わたしは暑さに比較的強いし、東京のビル群の谷間の、むっとするような暑さに比べたらずっと楽だと、個人的には思っている。
とはいえ、外で売り子をするのは暑いに違いない。帽子と水とおやつを持って、出かけたのだった。
我々と同時期、ニューヨーク、日本に戻り不在にしていたエミさんも、先週バンガロアに戻って来ていて、彼女も参加すると言う。彼女とわたしは、同じブースにて、「婦人服担当」となった。
OWCのメンバーは数百名いるはずだが、本日の参加者は30名を切っていると思われ、とても少ない。
さて、10時を過ぎて開場となり、使用人諸兄が続々とやってきた。商品は30ルピー、50ルピー、100ルピーといった格安価格で、売上金はヴォランティア団体に寄付されるとのこと。
最初は大まかに畳まれていた衣類は、瞬く間にぐちゃぐちゃの山となる。
「白いブラウスが欲しいんだけど」
「あそこの箱の中の、黒いジャケット取ってくれない?」
「ネイビーのスカートに似合うトップはどれかしら」
「わたしに合うサイズのブラウス、ない?」
お客様のご要望にお応えするべく、我々は衣の山をかき分ける。
「このスカートどう? いい素材よ」
「このTシャツ、あなたの体型にぴったりだと思うの」
「このブラウスは? ちょっとセクシー過ぎ?」
お客様とのコミュニケーションを楽しみながら(!)の販売である。
しかし、一応洗ってあるとはいえ、破れていたり、しみがついているものもあったりと、爽やかさのない商品が多いのが辛い。寄付をするにも配慮が欲しいところだ。値札をつけられたり、仕分けされたりと、一応は、「誰かの手を通して販売される」わけだからね。
驚くべきは、使い古しのパンツ(ズボンじゃなくてパンティーね)やらブラジャーまであったこと。ゴム部分がびろろ〜んとなってたりしてね。こんなもんまで、寄付するかいな! と呆れっちまった。
主なる寄付者が欧米人だということもあり、婦人服とはいえ巨大サイズのものが主。小柄な南インドの人々にはサイズが大き過ぎるものが多数を占めた。
だからジーンズやズボンのブースでは、「それはレディスよ」と言っているのに、男子が自分用に買おうとしていてちょっと困った。別にちょうどよけりゃ、いいんだけどね。
最初は木陰だったブースだが、だんだん太陽が昇って来て、やがては炎天下。暑いったらありゃしない。おやつのチョコレートも溶けてしまった。だいたいチョコレートを持ってくる事自体、まちがっとる。
山のような衣類をそのままに、とりあえず、「ズボン」「シャツ」「スカート」という分類だけを何となく心がけつつ、「接客」を続けていた我々。それを「見かねた」様子で、他のメンバー(几帳面そうな欧米人女性)がやって来た。
「服は畳まなきゃ!」
と言いながら、畳み始めたのだ。「え〜、畳むの〜?」と全くやる気のないエミさんとわたし。しかし彼女は、じりじりと照りつける太陽の日差しを受けながら、一人黙々と畳み始めた。
どうせみんなぐちゃぐちゃにするから意味ないと思う〜。 畳まなくってもいいじゃ〜ん。とても日本人とは思えない、Easy Goingというか無精な我々。
郷に入れば郷に従えって言うしね。それに、バーゲンって言うのは、山積みの中から発掘することこそが、楽しみのひとつでもあるまいか。それが証拠に、几帳面そうな欧米人女性が黙々と畳み始めたその周辺には、誰一人として寄り付かず、一瞥して通り過ぎるだけである。
そうして、几帳面そうな欧米人女性が立ち去りし後、徐々に乱れ、崩れた果てに、また人々が集まり始めるのである。
さて、商いも後半、ふと周りのブースを見ると、なんだかのんびりとしている。平和だ。我々「婦人服チーム」だけは、圧倒的に商品数が多く、お客も多く、散らかり具合も派手だ。
これはひょっとして、労働力の不均衡ではあるまいかと気づいたりもするが後の祭り。ともかくは、時が流れるのを待つ。
1時を過ぎて閉会となり、売れ残った品々を、ようやく「畳む」ときがやってきた。くらくらしながら黙々と、畳み、積み重ね、段ボールに詰め込んで終了。お疲れさま〜! とビールで乾杯などあるはずもなく、皆、三々五々に引き上げて行く。
家に帰ってシャワーを浴びて、時計はすでに2時を回り、遅めのランチを食べて昼寝をした。
曖昧な達成感。ともあれ、多くの人たちが、多くの衣類を安価で入手でき、よかったのではなかろうか。
そんな一日。