■自分が旅行に行く訳でもないのに、慌ただしかった月曜
香港行きは夫のみであるが、深夜の便で出発の夫を送り出すまでは、なにかと気ぜわしい。妻担当の荷造りもやらねばならないし。甘えかしすぎ、と言われそうだが、その通りだ。
「バニャ〜ンとカチャ、どれに入れたらいいの〜?」とか、
「ネクタイとシャツのコンビネーションを考えて〜!」とか、
「どのスーツがいいかなあ、あれ、これちょっと窮屈だけど、どう思う?」
とか、いちいちいちいち訊かれるくらいなら、最初っから全部自分でやったほうがいいのである。ちなみに「バニャ〜ン」とは、ヒンディー語でランニングシャツ(下着)のことで、「カチャ」とは、トランクスのことである。
彼の場合、スーツケースへの詰め方にも、問題がある。たとえばスーツケースが縦40センチ、横80センチとしよう。そのスーツケースに、20センチ×40センチのたとえばシャツの束を入れるとき、普通なら二束にわけて、少々窮屈でも、スーツケースの底がきっちりと隠れるように、詰めるだろう。
ところがだ。彼の場合、スーツケースの中程に、束をぽん、と置くのだな。シャツは、スーツケースという名の大洋に浮かぶ孤島の如く、である。その周囲に、ソックスとか、トイレタリーバッグなんかを、ぐちゃぐちゃと詰めるわけだ。そして無理に蓋をして、ジッパーをしめるから、スーツケースがすぐダメになるのね。
知能指数、やばくない? と思うこともあるけれど、実際、わたしなどより彼の方が抜群に高いから、知能指数っていったいなんなんだろう。世の中、謎が多いよ。
ちなみに、インド人にアルヴィンド的傾向の人は多い。たとえば飛行機に乗ったときなんか、「どう考えてもそのアングルでは、あなたの手荷物はその棚に入りきれんやろう」というようなものを、ぐいぐいと押し込もうとする人を、これまで何人、見かけたか。願望が強過ぎるあまり、事実が歪んでみえているのか。
わたしには、理解できんよ。
ああ、またどうでもいいことに、文字数を割いてしまった。夫はそんなわけで、シンガポール航空のシンガポール経由便で香港へと発ったのだった。
「機内食、食べ過ぎないようにね」「アルコールは控えめによ!」「デザートもほどほどにね」
と、口うるさい妻である。
さて、今日の夕方、現地に到着した夫からメールが届いていた。シャンパーンは1杯にとどめておいたこと、デザートのチーズケーキは半分だけ食べたこと、映画はミッション・インポッシブル3を観たことなどが、記されていた。そして、「毎朝、ちゃんとヨガに行くように」とのメッセージに加え、「夕飯は何を食べるの?」との質問。
マダム。今日の夕飯ってば、すごかった。モハンをスジャータ宅に派遣し、羽を伸ばした妻は、ただ、ジャンクフードに走るのだった。
■午後は、家具屋やファブリックショップを巡るのだった
引っ越しの予定が確定しないとなれば、もうちょっと、家具を買いたいのである。そんなわけで、我が家の家具の大半を調達した、例のVintage Shopへ出かける。まずは、サイドテーブルを2つ買い、3人がけのソファーをもう一つ。
ソファーセットはすでにあるが、このところ「社交な我が家」では、人々の集いも多く、座る際に他の椅子を、こんな風に運んでこなければならず、少々、勝手が悪い。いっそ、ゆっくり座れる3人がけが欲しいのだ。
すでにあるソファーのデザインが、光沢のある紅白で「主張している」ので、うるさくない、他の家具と調和のとれたものがほしい。幸い、布を張り付けていない、「裸」のソファーセットが数点、売られていた。これなら、気に入った布を見つけて張ってもらえる。
机や本棚は、気に入ったものが見つからなかったが、大まかな図面を書いて発注すれば、TEAK WOODで作ってくれるという。予算も、妥当である。ともかく、今日のところは、ソファーに張る布を探そうと思う。
インディラナガールやコマーシャルストリートをうろうろし、何軒も見て回って、何が何だかわからなくなる。インドは、布が豊富過ぎる。豊富過ぎるから、何が何だかわからなくなる。
「単独であればこの柄がいいのだけれど」と、選んではみるが、すでにあるソファーに思いを馳せるに、合わない。
あの店、この店で、布をくるくるくる〜っと引っ張り出してはソファーの上にかけてもらい、雰囲気を確かめる。分厚い、上質の布が、非常にリーズナブルなのもうれしい。ソファーには8メートルの布が必要なのだが、最も高いもので、全部でUS$150もしないのだ。インドにしては高いけれど、でも、我々にとっては、うれしい値段だ。
結局は、悩んだ末に、最もシンプルで色の主張がないものを選んだ。選んだ布と仕上がりのソファーは、セッティングしてから写真を撮ろうと思う。
■そして久方ぶりに、ジャンクフードに走る午後。
コマーシャルストリートを歩いていると、小雨が降り出した。ちょうど小腹も空いて来た。ちょうどKFCが見えて来た。ふふふ。久しぶりに、チキンバーガーでも食べましょう。ZINGERと言う名のそれは、ちょっとスパイシーなフライドチキンのハンバーガー。
「マヨネーズは少なめにね。チーズは抜きで。ドリンクは……ボトル水ね」
と、ささやかに、カロリーを計算する我。ZINGERバーガーは、その名の通り、「あっと驚く」ほどではないものの、しかし結構おいしいのである。上の写真、おいしそうでしょ? カリッと香ばしい衣だし、パンもふんわりしているし。
で、帰宅して、一段落して、あまりお腹が空いてはいないけれど、なんか食べたいな〜、と思ったら、移住直後に買っておいた「非常食用」カップヌードルが1個、目に留まった。賞味期限が切れて1カ月だが、ま、いいだろう。
インドの日清カップヌードルは、インド人の嗜好を反映して、麺がやわやわ、汁気がなくなるという不思議なしろもの。まずうま、と呼ぶにふさわしい品だ。はっきりいって、まずいぞ。でも、食べ尽くしてしまったってことは、結構、おいしいってことなのか。嗚呼、自分がよくわからない。
ともあれ、アルヴィンドには報告しがたい、夕食であった。
ところで、このブログをスジャータは見ている。日本語はもちろん読めないが、写真をじっくり見ている。今日のわたしの食生活を見て、彼女はなんと思うだろう。モハンを彼女らに派遣して、ろくでもないものを、ひとり嬉々として食べる女……。
■おまけの話題: インドで梅が枝餅を、食べた。
先日、近所で買った「小豆もどき」の豆で「あんこ作り実験」をしたことは、ご記憶に新しいかと思う。その記事を読んだ妹から、夕べ、メールが届いた。
「白玉をこねて、餡をはさんで、ぺたんこにして、フライパンで焼くと梅が枝もちになって最高にうまいよ! 油をうすーーーーくなじませておくとgoodです。」
とのことである。なんというすてきなアイデア。メールを受け取って直後にはキッチンに立ち、5分後には、食べていた。懐かしい太宰府天満宮を思い出しながら。参道沿いに立ち並ぶ、梅が枝餅屋。
たいやきを作るのと同じような「挟むタイプ」のフライパン(というのか?)で、一度に4つの饅頭が焼かれる様子を見るのは楽しかった。子供の頃は、3つ4つをぺろりと食べていたものだ。というか、我が家は父も母も、軽くそれくらいは食べていただろう。さだまさしの「飛梅」という歌で、
「君がひとつ〜、僕が半分〜、梅が枝〜餅を食べた〜」というくだりがある。
なんて小食なカップルだろうか、と、思ったものだ。
あ、ちなみに、夕べのわたしは小食に、ひとつだけを焼いて食べた。形は悪いし、焼きむらあり、あんこはみ出しあり、ではあるが、大福的風情も持ち合わせていて、それなりにOKである。味わいは、太宰府ものには及ばないものの、なかなかである。
反省点としては、ぜんざいなら甘みを抑えめのあんこでいいが、饅頭は、もっと甘い方がよかろう、という点。次回は、砂糖の加減が異なるあんこ2種を、同時に作ってみようと思う。
インドには、白あんにふさわしそうな豆もあれこれと見られるので、次回は白あん実験もしてみようと思う。