午後、取材のために、街へ出る。撮影したいシーンがあり、それを探す。探しているときに限って、しかしなかなか、出会わない。仕方ない。現れるまで待とう。
夕暮れのコマーシャルストリートの、一隅に立つ。人や車が騒々しく行き交う直中。わずか5分ほどの風景に、ぎっしりと詰め込まれたライフ。
商店が軒を連ねるコマーシャルストリート。バンガロールきっての商店街。ショッピングモールにはない、ローカルの味わいがある通り。二輪車四輪車、人波をかきわけ、物売りの少年、路傍に立ちて。
学校帰りの女の子。インドの女の子は三つ編みお下げが基本形。インド女性の、「カラスの濡れ羽色」した黒髪は豊かで、こだわりのシャンプーやコンディショナーを使わなくても、艶やかで。
デリーやムンバイでは「洋装」の女性が随分増えたが、バンガロールはまだまだのんびり。女性の多くはサルワール・カミーズ(パンジャビドレス)やサリー姿。「洋装禁止」の校則がある女子大などもあるせいか。尤もインドの気候には、このサルワール・カミーズが好適なのだ。
女たちのファッションは、カラフルで賑やかで。その一方、インドの男性ファッションは地味。しかしヘアスタイルには拘っている人は多い。ポケットから櫛を取り出し、ミラーに自らを映し、髪を撫で付けている信号待ちのライダーは、日常的な光景。
前方に見えるはターバンを巻いた男。インド人と言えばターバンが思い出されるところだろうが、ターバンを巻いているのは全国民の数パーセントに過ぎないシク教徒の男性だけ。手前のスカーフをしっかりと巻いた女性はムスリム(イスラム教徒)だろうか。
普段からサリーを着ているのは、圧倒的に年配の女性。若い女性は着易く動き易いサルワールカミーズが主流。
TOYOTAにHONDAにTATA、SUZUKI。ここ数年のうちに、走る車の種類も激増。ほんの十余年前までは、国産車アンバサダーとフィアット、マルチスズキくらいだったのに。
黒装束のお姉さんらは、明らかにムスリム。この界隈にはモスク(イスラム寺院)やヒンドゥー寺院が点在する宗教混沌区。
東洋人的な顔つきの人は、ネパールに近い北部出身者か。ビューティーサロンなどで働く人に、なぜかネパール界隈出身者が多い。それにしても、顔立ち、スタイルの美しい若い女性が多いこと。歳を取ると、太ってしまう人が多いけれど。
物売りの少年、動かず定点にて販売を続けている。売れるんだろうか。
かわいらしい電気自動車、REVAがやってきた。マダム自ら運転している。仲良くバイクに乗って走り去る四人家族もあり
。
女の子二人乗りのバイクもあり。年頃のお嬢さんが、ヘルメットも被らずに、サンダル履きで、けがでもしたらどうするの? お母さんは心配です。おや、今度は「小鳥の飾り物」を持った物売りの少年が登場。売れるのか?
小鳥売りの少年、積極的に売り込みを開始。お姉さんたちの視線を集める。
おっと、地図売り姉さんたちもやってきて、一気に物売り激戦区。
「150ルピーです」
「それじゃ高すぎるわ」
「じゃあ、ちょっとおまけするよ」
小鳥売りの少年は商売が巧み。そんな不思議な小鳥の飾りが、数分間で2つ買われた。
結局は、撮影したいと思うシーンに出会うことはできぬまま。
しかし「今日はもう、これでいいや」と、あっさりと諦めて、すっかり仕事をし終えた気分で、帰路につく。
また明日、だ。