昨年の11月以来、第一弾、第二弾、第三弾と続いて来たプロジェクトが、ようやく佳境だ。例の、「割り箸程度」かもしれぬが、「ゴールデンブリッジ級」になるかもしれん、などと厚かましく妄想する「日印架け橋」な仕事である。
今、第三弾のしめくくり段階に入った。あと3、4日で終了するだろう。パワーポイントで作っているその資料。写真や図版を多用し、実に楽しい仕上がりだ。誰かに見せたいが見せる訳にもいかず、しかし夫に見せて、「すごいでしょ?」と、無理矢理、褒めさせている。
そんなわけで、他の作業と並行しながらも、なんとか予定通りやり遂げられそうで、一安心だ。
さて、このごろは、キッチンに立っている。料理が必要であり、自分の味が必要である。しかし、料理をすると、そのことについてをこうしてブログやらに書きたくなるのが難である。
思えば、米国時代。ホームページに会員制のサロン・ド・ミューズというコーナーを設けていた。プライヴェートなことをかなり書いていたので、読みたい方にはそれなりに「アンケート」に答えていただいた上で、パスワードをお渡しし、入れるような仕組みにしていたのだ。
そこには、日記の他に、食の記録の項もあり、日々の料理のレシピなどについてを記していた。なんにつけても、書くことで完結してしまいがちなのである。
料理には、さまざまなエピソードが絡み付く。素材の購入、素材の特徴、調理、味わい、食するときの会話などの状況……。毎日の、取るに足らないことにせよ、そこには何か、記しておきたいことがある。
●料理のことを書き始めると……
そんなわけで、たとえば先日の大根。あれは、汁気を多くして煮付けにしたあと、ナスの素揚げを加えて一緒に煮浸しのようにした。インドの野菜の多くは、火が通るのに非常に時間がかかるものが多い。
ナス、大根、キャベツ、カリフラワー、豆など、どれもこれも、がっちりとしていて、米国時代の野菜茹で時間を遥かに上回る。ただ、今回のナスは、インドならではの小さく丸い、まさに卵のようなナスではなく、米ナスだったので、揚がりは普通だった。
この含め煮と、ラムチョップ(厳密にはマトンチョップ)のグリル、トマトスープ、日本米という、まったく謎めいた取り合わせの夕食だったが、不思議とバランスがよく、美味であった。
大根が、大根らしいほのかな苦みある味であるのもいい。だしを吸ったナスの柔らかさもいい。醤油万歳である。
ラムチョップには、インド産「激マズ」赤ワインを使用して肉を柔らかくした。先日、見たことのないインド産赤ワインを、試しに購入してみたのだ。なんでも、試さないことには、わからないからね。そうしたらもう、これがたまらんほどまずくてびっくり。でも、料理には使えるからとっておいたのだった。
●内装設計士と大工決定。合板に詳しくなった我。来週には実働開始
結局のところ、知人紹介の会社に勤める内装設計士と大工に仕事を任せることにした。彼らは同じ会社なので、なにかと意思の疎通が図れトラブルが軽減されるとみたのだ。
彼らに決めた理由はほかにもある。「約束の時間通りに登場」し、「約束の期日に見積もりを持って来」、「素材の説明を怠らず、高い物を押し付けようとはしない」といった点にあった。彼らの仕事ぶりもすでに見ているから安心だ。
たとえ値段が安くても、いい仕事をしてもらえないと意味がない。特にインドでは「時間を守れる」ことが大切。
本当は、以前ここに写真を載せた大工集団に頼みたかったのだが、言葉や設計の点で他者を挟まねばならず、チームワークに不安があったので断念した。
彼らはラジャスタン地方の職人らしい。基本的にラジャスタン地方には、いい職人がいるらしい。
確かに、彼の地の家具は装飾が凝ったものが多い。たとえば下の写真がそれだ。ムスリム的緻密なデザインが、木の家具、大理石の家具に反映されている。
右上の写真のブランコもまた、ラジャスタン地方にありがちである。
でも、ブランコは、取りあえず、いらないしね。
彼らに任せたい気持ちはやまやまだったが、作ってもらうのはキッチンとクローゼット。
キッチンにラジャスタンテイストを加味されても困るので、いや、頼まなければ加味することはないに決まっているのだが、さておき、今回はよしとした。
さて、使用する素材を決めるにあたり、「PLYWOOD(合板)」について、あれこれと学んでいる。日本における合板事情もチェックした。ほうほうと、感心すること、多々ある。この件については、また改めて記したい。
●新居チェックの帰路、Namdhari'sで買い物&イタリアンディナー
夕方、夫と新居へ赴く。今週中には支払い完了の予定で、その時点から我々の所有物となり、工事を開始できる。その前に、不備な点、改修すべき点などを、デヴェロッパーの業者に伝え、修理などを依頼していた。その進行具合をチェックしにいったのだった。
夕暮れのそこもまた、平穏で、いい。特に、西日がこぼれ落ちる庭。ここで夕暮れ時、ワインでも飲みながらくつろぐのは最高である。昼間はカフェテラス、夜はバーでも開けそうである。
さて、帰り道、オーガニックの食材を扱う、インドにしてはハイカラな食料品店Namdhari'sへ赴く。小さいスーパーマーケットではあるが、欧米の食品なども扱っている。清潔感のある、いい感じの店だ。
夫はこの店に来るのは初めてのこと。「きれいな店だね〜」「ラッセルマーケットと違って原始的じゃないね〜」と感激している。
いまどきは、インドにだって、いろいろあるんだからね。なに今頃、驚いているのよ。と、呆れつつも、ご機嫌のいいハニーを見ているのはこちらもうれしい。
わたしが今夜の食材を調達している間、彼は英国Walkersのビスケット(ショートブレッド)を買いたがる。インド産のBritanniaのビスケットでも十分おいしいよ。とくにバタービスケット。値段は十分の一よ。
と思うのだが、彼はインド産のビスケットをまずいと思い込んでいる。わたしはしばしば、食べているのに。Parleの子供向けビスケット(Parle-G) もおいしいのに。
そんなわけで、Namdhari'sオリジナルのサンドライドトマトなどやBarillaのスパゲティなどを購入し、今夜はイタリアンである。オリーヴオイルやパスタなどは先進諸国同様の値段だが、野菜は実に安い。地元マーケットに比べると割高だが、それでも安い。
さて、今夜の夕食はあっさりヴェジタリアン。
ガーリックと鷹の爪、オリーヴオイルに、塩こしょうとゆで汁少々を加えるだけのシンプルなスパゲディ、「アーリオ・オリオ・ペペロンチーノ」を作る予定だったが、夫のリクエストによりサンドライドトマトも加える。
サラダは小振りのインゲンとレタスをバルサミコ酢とオリーヴオイルであえたシンプルなもの。これにウォルナッツなどを散らすのもいい。マンゴーの季節にマンゴーを散らしたことがあったが、それがまた、おいしかった。甘いネクタリンや洋梨も合う。
せめてパルミジャーノチーズ(インド産で結構おいしいのがあるのだ)を買ってくればよかった。今日は何もないので、これもサンドライドトマト。
あと、ホワイトマッシュルームとオイスターマッシュルーム、ガーリックをバターとオリーヴオイルで炒めたもの。最後に白ワインと醤油を垂らすのがポイント。塩こしょうも少々。
非常に少ない素材による、簡単かつシンプルなメニューであったが、何かと「煮込みがちな日々のインド食」とは異なる軽やかな味わいで、おいしい。
引っ越しをしたら、インド素材でいかにインターナショナルな食卓を実現するか、試みてゆきたいと思う。