●米国は遠く。しかし第二、第三の故国であるに違いなく。
カリフォルニア在住時代より、America Clubというサイトに毎月、記事を書いている。最初は「ヴァーチャル・カリフォルニアライフ」というコーナーで、現地からの生活情報を送っていたが、現在は、在米十年の経験に基づいた「アメリカで暮らす」というコーナーを担当している。
月に2、3回ほどの更新なので、ひと月分をまとめて書いて送る。文字量にしてみれば、たいしたことはないのだが、このごろは、書き出すまでにかなりの気合いがいる。
半年に一度は米国に行っているとはいうものの、どっぷりとインド生活に浸っている身。気持ちを米国にシフトするのに気合いがいるのだ。
さて、今日は、1カ月の休みをいただいたのち、久しぶりに心をアメリカンにして記事を仕上げた。このところ、アメリカの食生活事情を書いていて、今回は内陸部の外食事情と題し、大陸横断をしたときの食生活をレポートした。
ファストフードやダイナー続きでうんざりした……ということを書いていたのだけれど、バーガーキングのハンバーガー、ウォッパーのことを書いているうちに、無性に食べたくなった。ウォッパー。たまにたべるとかなりおいしく感じるのだ。インスタントラーメンと同じで。
ところでアルヴィンドはこのところ、"THE LOOMING TOWER"という本を読んでいる。9/11に至るアル・カイーダの足跡をたどるルポルタージュで、著者は雑誌 "New Yorker" のライター、ローレンス・ライト (Lawrence Wright)。
ムスリム(イスラム教)の話、CIAとFBIの軋轢、さまざまな史実現実がレポートされ、あのテロを食い止める機会はいくつもあったということなど、かなり興味深い内容のようである。
結構、分厚い本なので、わたしは読む根性がない。夕食時、本の内容を夫が語るに任せて聞くばかりだ。
9/11を機に、変わってしまったわたし自身の暮らしや考え方について、思いを馳せる。
あの年の、秋から冬にかけての、吹く風の冷たさと揺れる星条旗の遣る瀬なさ。あるべきものがなくなって、見通しのよいぽっかりとした空だけが見えたあのあたりの光景。
厳戒レヴェルの、オレンジや赤の切迫感。ニューヨークとワシントンDCを行き来するアムトラックに揺られながら見る夕陽。あのころの光景が、脳裏を駆け巡る。
●西日本新聞に、ちょっとだけ連載、決まる
11月末、福岡に帰省した際、西日本新聞にアポイントメントもなく訪問したことは、旅の途中の記録に書いたかと思う。あのとき、受付譲が電話をつないでくれ、幸いにも国際部の方を話をする機会を得た。
その場では簡単な自己紹介をし、『街の灯』をお渡しし、インドについてをダダダッと語り、「何か機会があれば」ということでおいとましたのだった。
実はその方から数日後、まだわたしが福岡にいる間にメールが届き、アジア関連のページに寄稿のようなかたちで原稿を、という話をいただいていた。早速電話をし、ひとまずは一本原稿を書き、できれば何度か書かせていただきたいので企画案もお送りする、という旨をお伝えした。
年末年始は立て込んでいたが、先週の金曜日に原稿と企画案を作ってお送りしたところ、早速お返事が届き、2月下旬から月に一度、1年ほどの予定で連載のスペースを設けていただけることになった。写真を掲載するスペースもある。うれしい限りだ。
フリーランスのライター・編集者になって以来、早くも15年がたとうとしている。その間、さまざまな媒体に文章を記して来た。しかし、新聞というのは、今回が初めてのこと。たとえ地方紙とはいえ、西日本新聞は九州および、山口県の多くの人々に読まれている。新鮮な緊張感がある。
わたしにとっては、子供の頃からなじみの新聞でもある。中学2年のころ、福岡県の作文コンクールで最優秀賞をもらったときには、作文の全文を掲載してもらった。
梅光女学院時代、大学祭実行委員長をつとめた折、西日本新聞の当時編集局解説委員長だった益田憲吉氏に講演に来ていただいた。彼が夕刊に記していた「くるま座」は、子供の頃からときに目にしていたが、彼の著書『情報の選択(世界を操る裏の陰謀を見ぬけ)』 を読んで(内容はすっかり忘れてしまったが)、彼に講演をしていただきたいと思ったのだった。
『街の灯』を出版した際には、「ひと」の欄に、わたし自身を紹介していただいた。ちょっと写真が変な顔なのが辛いが。
思えば『街の灯』も、ある日、偶然たどりついたポプラ社の第三編集部のサイトに「ピピッ」と来て、それまで書きためていたメールマガジンの原稿を、だめでもともとの気分でまとめてFedexで送ったところ、編集者の目にとまり、出版に至ったのだった。
当然ながら百発百中ではない。ニューヨークでミューズ・パブリッシングを設立したときも、いやというほど営業をしたし、本の原稿などもこれまで、いくつかの出版社に送った経緯があり、「当たらない玉」の方が遥かに多い。
けれど、こうして、稀に一つでも当たると、とてもうれしい。当たることもあるのだ、とわかると、またがんばろうとも思える。
今回、たとえそれが「寄稿」という形であったとしても、こうして福岡とインドを結ぶ機会を得られたことはありがたいことだ。こうして少しずつ、自分のできることを広く表現する好機を、これからも探していきたいものだ。
●久しぶりに、アーユルヴェーダのスパへ。
本日は、久しぶりにThe Grandのスパへ出かけた。やっぱり、全身オイルは気持ちがよい。身体の芯まであっためられる思いだ。特に湯量不足から浴槽に浸かれない日々を送っているインド在住者としては、この「身体の芯まであったまる」感覚が必要なのだ。
奮発して2時間のトリートメントを受け、外へ出ればすでに夕闇。心地のよい風がそよそよと吹いていて、本当に気持ちがいい。テラスでビールでも飲みたい気分だったが、もう、夕飯の時刻だ。おとなしく、帰宅した。