諸々の出来事が凝縮している日々。毎日毎日、自分の耐性を試験されているかのようである。
忍耐力、柔軟性、寛容性、的確な判断。
あくまでも、わたしは「部外者」であり「異邦人」であるのだということを、この地には「お邪魔させていただいているのだ」ということを、肝に銘じながら、わきまえながら、抑えて、抑えて、抑えて……。
と思うのだが。
うぉ〜〜〜〜っ! とインドの中心で吠え叫びたくなるんですよこれがもうほんとにっ!
いやはや、本日は、この1カ月半でも最高に「振り回された」一日ではあった。その一部を列記してみるに。
シャンデリアの取り付け業者が、わざわざデリーからやってくる。それに先立って航空便で届くべきシャンデリアが届かない。
シャンデリアの取り付けには、はしごか台座が必要だ。が、その手配をアパートメントのエレクトリシャン(小柄で子犬みたいなおじさん)に頼んだが、「ノープロブレム」と言うばかりで大丈夫なんだかどうだかわからない。
約束の午前10時、子犬おじさんは来ない。彼の仕事仲間曰く、「今日は彼、夜勤だから午後7時からですよ」
途方に暮れる。また、上海雑技団状態になるのかしらん。
しかし、午前中に届くべきシャンデリアも届かず、従っては、全体が大幅に、足並みそろえて遅れていて、問題ないといえば問題ないところがたまらん。
メタルワーク業者のヴェニートの部下に、溶接の火でダメージを与えられた例のダイニングルームのタイル。ようやく数日前、張り替えてもらったにも関わらず、踏むと「カパカパ」する部分がある。
自分でセメントこねて、自分で張り替えたい。いやもう、99%本気。プロの仕事に口出しをしたくないが、これはプロの仕事ではない。
タイル業者のおやじを呼び寄せて文句をいう。なのにおやじはこういうのだ。
「インドのタイルはね、質が悪くて水平ではないんですよ。だから、こうなっても仕方ないんです」
質が悪いのは、自分の仕事やろ!
さらには、
「わしはこの道25年。わしの部下の仕事にも、問題はないはずですよ」
と、豪語する。
どう考えても、仕事が悪いのだ。この件に関しては、絶対に、許せないのだ。
「わたしの父はね、建設業者だったよ! わたしはね、悪いけど素人じゃないの(ほんとは素人だけどね)。これはね、セメントが均一に塗布されてないからこうなるのであって、タイルのせいじゃないのよ! わからないんだったら、やり方を教えてあげるわよ! ちょっとこの一枚、はがしてみなさいよ!」
もう、自分でも、自分がいやになるような言い草であるが、妥協はできんのだ。しかしおやじは非を認めない。しまいには、
「マダム。多少、浮き沈みがあっても、タイルがはずれることは、ありませんから」
なんちゅ〜言い草やろうか。思わず握りこぶしが震えたね。心の中で、パンチをお見舞いしたね。
こんなこともあろうかと、予備のタイルを十数枚、購入しておいたのだ。十数枚である。準備万端なのだ。
で、タイルをはがしてみたらあ〜た。だいたい破壊することなく、きれいにはがれてしまうところからして、「貼り」が甘いのだが、ともかくは、想像を遥かに超越したひどい有様。
せめて中央と四隅にしっかりとセメントがついていれば、安定するはずなのに。なんなんだ、この劣悪な仕事は。
それはあたかも、クリームが挟まれたビスケットを2枚にはがしたとき、クリームがまばらに片面にくっついている、といった状態なのだ。
もういや。
ギザ(温水器)の不具合がある。メンテナンスを頼むが、テクニシャンは英語ができない。
大抵の業者が、住所をしっかり確認せずに出てくる。で、電話で場所を尋ねる。
「ヒンディー? カナラ(地元言語)?」
と言われてもね。悪いけど、どっちもできんとよ。
電話で何度も、気が遠くなりそうなほど、所在地への道筋を説明する。が、わかってもらえない。ちょうどペンキ塗りに立ち会っている塗装業者マネージャーのモナに、通訳してもらう。
浄水器の取り替え人からも、電話が来る。住所がわからない。英語も話さない。モナに通訳してもらう。本日、都合5回、モナの通訳に頼った。
シャワーヘッドの取り付けがあまくて、シャワーを浴びている途中、墜落して来た。
ペンキ塗り立ての壁を、職人が汚い手で触る。
もういや。
外のタイルの、やはり貼りが甘くて、割れた。
モハンが乱雑に掃いて、ブーゲンビリアの育ちはじめの枝を折った。
モハンがコーヒーメーカーを力一杯、水洗いして壊した。
「外で洗ってね」と言っているのに、トイレのゴミ箱を台所で洗っている。
ぞうきんと台所のタオルが、仲良く一緒に干されている。
もういや。
インドなの。ここはインドなの。みんな免疫力が高いの。そう自分にいい聞かせる。しばし、自室にこもり「瞑想」をする。
夕方、一日遅れでデリーからシャンデリア取り付け人(2名)が到着。が、サイドランプ(壁のランプ)5つのうち、2つをつけただけで、本日の仕事は終了。
つまり、はしごは、またあした。
電気が通ってない電源が1カ所ある。
ネジ用に穴をあけていたら、あけ損ねて壁の一部を損壊した。またペンキの塗り直しだ。
シャンデリア取り付け人2名はわざわざ我が家のために飛行機でやってきて、数泊滞在する。どこに泊まっているかしらんが、売り上げは、たつんだろうか。
彼らのクライアントはほとんどがホテルや企業で、この職人によれば、個人宅で仕事をするのは初めてらしい。先日オーナーがバンガロールビジネスを拡大したいといっていたから、我が家の仕事がとっかかりになるのかもしれん。
それにしても、2人分の航空券や宿泊費。
防犯のために、窓のアーチ部分にもメタルワークを施すことにした。業者が採寸にやってくる。
両隣との木の塀を、やはり我が家からも作ることにした。大工が採寸にやってくる。
その間、書斎の片付け終了。
4月19日から10日間、米国へ行く。その航空券の手配など。
アーユルヴェーダでオイルを浴びる暇もなく。来週はハウスウォーミングパーティーをやろうと思ったが、大規模パーティーは米国から戻ってからにしたほうがいいかもしれぬ。
都合のつく友人らだけでも来週末招きたい。
インドで家を一から立てる、なんてことは、わたしにはできないな。と痛感した。間違いなく、神経衰弱になる。
ところで、夕べ、ムンバイから戻った夫が、「初物マンゴー」を2ダース、お土産に買って来てくれた。
アルフォンソマンゴー。
それを夕食後、食べた。
まだ、季節には早すぎるのか、味はいまひとつ。
でも、うれしかった。
去年スジャータに教わって何度か利用したシーズン中のみ営業のマンゴー店。いつオープンするのか、問い合わせなければ。
月日が、怒濤のように流れていく。
元気で、やってます。
反省しながらもアグレッシブに、生きてます。