瞬く間に旅も後半。長いと思っていた2週間も、あっというまである。
今日は夫とは別行動。わたしは友人のSHIZUKAさんとAKIEさんとロックフェラーセンターでランチ。そのあと六番街を南下、ビーズやアクセサリーなどの「卸売店」が立ち並ぶファッション・ディストリクトへと足を運ぶ。東京でいうところの「合羽橋」的な店があるのだ。
ここで、夫のスーツやジャケットのためのボタンを購入する。先日、デリーの実家が御用達のテイラーで、夫のスーツをあつらえたところ、米国で新品を購入するよりもリーズナブルに、しかも高品質のジャケットを作ってもらえた。しかし、気に入ったボタンを見つけることができなかったので、ここで仕入れることにした次第。
さまざまなビーズやタッセルなど「工芸の素材」が無数にあり、こういうところに来ると、ついつい何かを作りたくなってしまう。
さてその後、近所にあるMACY'Sへ赴いて買い物をしたあと、再び北上して紀伊國屋などに立ち寄りつつ夕方ホテルへ。
夜は、毎度おなじみ、夫の叔父だか従兄弟だかのランジャンと、その妻チャンドリカが暮らすアッパーイーストサイドの邸宅へ赴く。
今夜は彼らの友人たちを招いてのパーティーだった。2年前にニューヨークからジャイプールへ帰国したという夫婦、それからデリー在住で、マンハッタンの息子の家に遊びに来ているという元インド軍元帥の夫婦。
元帥とその妻はことのほかフレンドリーだった。1968年から3年間、日本に住んでいたとのことで、日本語も少しできる。聞けば、二人が現在暮らしている場所はデリーのマルハン実家のご近所。二人はアルヴィンドの亡母さえ知っていた。
ニューヨーク郊外で日本人駐在員マダムに英語を教えているというインド系米国人女性もいる。
おいしいワインをいただきつつ、更にはメイド手作りのおいしいインド家庭料理を味わいつつ、心地のよい宴が続く。
彼らの家は、相変わらずゴージャスだ。11年前、アルヴィンドと出会って数カ月後のサンクスギヴィングデーに招かれてここを訪れたときには、ひたすら圧倒されたものだ。
壁にはインド現代絵画の第一人者M.F.フセインの作品があちこちにかけられている。彼が広く世界に知られるようになる前、チャンドリカが購入した絵画だ。
彼らが30代のころ、150,000ドルの資金しかなかった時点から、ふたりそれぞれに、ビジネスの道を切り開いて来たという。チャンドリカは起業してマンハッタンで指折りの女性起業家として名を馳せ、ランジャンはまた、自らのビジネスで最高のポジションに上り詰めている。
チャンドリカの妹のことは、これまでも何度か記したが、去年米国ペプシコの社長となり話題となったインドラだ。彼女たち姉妹の尊敬すべきキャリアの断片はメールマガジンやこのブログに記して来た通りだ。
仕事や富やステイタスが人生のすべてだなんて到底言うつもりはない。しかし学生時代にインドから渡米し、一代で底知れぬ富とゆたかな地位を築き上げた人たちの努力と才能とには、敬意を払わずにはいられない。
もちろん血がつながっているわけではないが、たとえ遠縁でも、こんなにもすばらしき女性たちと身近になれたことを誇らしく思う。
上の大きな写真は、インドから来ているというシンガーが、歌を披露してくれているところ。左隣の、濃紺の服を着ている女性がチャンドリカである。デリーにある音楽アカデミーの総長も同席している。
シンガーは、タンプーラ(タンブーラ)マシンと呼ばれるイコライザのような電気機械で音を出し、それにあわせて歌う。
チャンドリカは自らもインド音楽の造詣が深く、自分のCDを出している。更には故郷のチェンナイに年に何度も帰国し、慈善活動にも積極的だ。
ひとかどならぬ仕事をし、子どもを育て上げ、更なる自己発現や社会貢献にも積極的。すごいものだと感嘆する。
しかしながら。以前とは少し異なる、わたしは自分自身の心境にも気づいている。
かつては、こうしてマンハッタンに邸宅を持ち、優雅に暮らすのは一つの理想の形と思えていた。が、今はインドに暮らし、インドを拠点にして、こうしてマンハッタンやその他世界の国々に足を伸ばす暮らしの方が、自分に、自分たちにあっているし、そちらの方が楽しいと感じている。
ことに、自分たちと同様、インドを拠点に、米国を、世界を行き来する人たちとこうして集い語ると、その思いを強くする。同時に、とても打ち解けた気分になる。
いくらインドの今が面白いからと、インドの中にいるだけではよくない。ここへ来ると、米国の視点からインドが、世界が見られる。経済の動きも、世の中の動きも伝わって来る。
永住権、市民権の問題がクリアになれば、半年に一度米国を訪れる必要がなくなるので、欧州やアフリカや、その他の国々をもっと旅したいとも思う。その一方で、ニューヨークはやはり、わたしたちが出会った街であり、拠点であり、欠くことのできない場所なのだとの思いを新たにする。
インドからは遠すぎるのが難だが、デリーからならニューヨークまでの直行便も出ている。ムンバイからの直行便も近々就航するはずだ。今後はルートを変えつつ、この地に赴くのもいいかもしれない。