インドの伝統的な手工芸世界について、多くの示唆を与え続けてくれる我が友人Devika。2枚目の写真は、先日、彼女のFacebook投稿で目に止まった絵画だ。バイクの周辺に散らばる赤い模様は、ディワリなどで使われる爆竹。Madan Meenaの作品で、タイトルはChildhood Memories - BULLET CHAAP PATAKHA とある。
他の作品も見たくなり、Madan Meena氏のページに遡った。折しも現在、彼がデリーのインド国際センターで展示会をしていることを知り、足を運んだのだった。
アーティストであり研究家、キュレーターでもあるラジャスターン州出身の彼。故郷コタをはじめとする農村の人々や遊牧民、部族のコミュニティと幅広く関わり、調査を続けているという。彼らのアイデンティティや伝統を守るべく記録を残し、書籍も出版するなど、幅広い活動をされている。
ギャラリーを訪れたところ、幸いにもご本人がいらした。話を伺いつつ、作品を眺める。
今回のエキシビションのタイトルは、「Wondering Connections」。不思議なつながり。数奇な縁。
たとえば、アジュラークと呼ばれるインドでも最も古いハンドブロック・プリント。16世紀の大航海時代以降、日本に伝わった「インド更紗」のひとつでもある。そのアジュラーク発祥と伝播を伝える「地図」を絵画的に仕上げた作品や、ジャイプールの、やはり「地図」をモチーフにして、伝統工芸発祥の地をポイントしたものなどは、極めて興味深い。
あるいは、故郷を彩る無数の樹木を丁寧に描き、細密画のアーティストとのコラボレーションで一つの作品に仕上げたものなども、絵画に込められたメッセージがストレートに伝わってきて楽しい。
劇的に変容する現代社会の中で、自然や動物、あるいは古来からのテキスタイルや地図をモチーフにしながら、ノスタルジアを「モダンな手法で」具現化する。これもまた、不易流行。人々の心に眠る「ヒラエスHiraeth(ウェールズ語で「望郷」「郷愁」「憧れ」「もう帰ることができない懐かしいもの」を意味する)を刺激する。
これまでは、インドの伝統工芸の世界を眺めるとき、あくまでも「個人的な趣味と関心」で完結していた。しかし、「京友禅サリー」のプロモーターを引き受けたことで、日本とインドが共通して抱える課題(麗しき伝統の継承)について、より深く捉え、能動的に未来へのアプローチを考えねばと思うようになった。世界は示唆に満ちている。
書きたいことは募るのだが、時は迫る。
昨今ではインドにも店舗を持つMUJI(無印)のノートに、手描きの絵画が施されたものを1冊購入した。大切な記録を残すノートにしようと思う。氏のインスタグラムをぜひご覧ください。
さらには、関連する情報がたっぷりの下記動画も、ぜひご覧ください。
Madan Meena
https://www.instagram.com/madan4meena/
https://kynkyny.com/madan-meena-biography/
http://www.kotaheritagesociety.in/
【インド発、世界】 🇮🇳🇯🇵数千年の歴史あるテキスタイルが新たな感性で蘇る。 若手が担うインドの伝統的な手工芸。絣(かすり)や絞り染めなど、日印に共通する技術も。