常々、記していることだが、インドには、日本を好意的に見てくれる人がとても多い。インドが一つの国として独立した際、日本とインドが連携したという歴史的な経緯によって育まれた感情。あるいは、同じアジアの一国としての親近感。その一方で、多様性のインドとは対極にある極東の島国の特異性に対する好奇心。隔離された世界で育まれてきた独特の日本文化に対する敬意など。昨今では、日本のアニメーションが、子ども、若者らの関心を引き続けている。
このところ、インドのアカデミック層、あるいは、知的富裕層を対象とした「日本、もしくは日本とインドの関わり」について語る機会が増えている。それに伴い、我が特製の、英語のプレゼンテーション資料も、その種類と厚みを増やしている。
今回は、ムンバイで現在、建築中(一部完成)のラグジュアリーな高層アパートメントビルディング「25 SOUTH」で開催された、居住者や顧客向けの催し “JAPANESE CULTURE SALON” にスピーカーとして招かれた。世界的に有名な日本の陶磁器ブランド「ノリタケ」との合同イヴェントだ。会場には主賓として、在ムンバイ日本国総領事館の総領事、深堀氏も紋付羽織袴姿でお見えになった。場の雰囲気が「日本!」になり、とてもすてきだ。わたしは、毎度おなじみ、京友禅サリーを着用して参上だ。
1904年、愛知県に誕生したノリタケ。インドの隣国スリランカにも工場を持っているという背景もあってか、インドにおける認知度も高い。わたしの友人宅でも、ノリタケのティーセットを見かけることは少なくない。京友禅サリーの展示会に来てくれた親日派の友人母も、ご自身の最も大切な食器コレクションは、オールド・ノリタケのティーセットだと話していた。
さて、日本とインドの関係史については、軽く3、4時間語り続けられる厚みのある資料がある。その一部を抜粋することも可能だったが、休日の午後の、のんびりとした空気の中でのトークにつき、内容は柔らかめがいいだろうと、与えられた時間に合わせ、45分ヴァージョンの新たな資料を作った。
先月の一時帰国時に撮影した京都の情景や、伝統工芸品の写真を多用しつつ、日本の「匠の技」のすばらしさを伝え、同時に日本や中国、欧州の陶磁器の歴史的背景を語る。
磁器を生んだのは中国。そして朝鮮半島、日本へともたらされた。マルコ・ポーロによって中国の磁器がはじめて欧州に持ち込まれて以来、東インド会社によって欧州にもたらされた磁器は、たちまち欧州王侯貴族の関心を集める。しかし、その製法を模倣するのは困難で、各地で試行錯誤が続いた。
結果、ドレスデン近郊のマイセンで欧州最初の磁器が誕生する。わたしは、1991年、ベルリンの壁が崩壊した直後に東西統合直後の「大ドイツ」をドライヴ取材した。フランクフルトからベルリンに至る途中、マイセンやドレスデンにも立ち寄った。1994年の欧州3カ月鉄道放浪旅の際にも再訪。
さらには、2018年、大いなる理由があって(話すと長くなる)ドレスデンを訪れている。同地のツィンガー宮殿にはポーセリン(磁器)ミュージアムがあり、それはもうすばらしい所蔵品の数々で……と、語れば尽きぬ。
かくなる次第で、このテーマに関してもネタが多く、素材には困らない。とはいえ、わたしが盛り上がったところで、聴衆の関心が薄いと意味がないので、控えめにを心がけねばならない。資料を作るのは、たいへんだが楽しい。
それはそうと、英語のプレゼンをするようになって、自分の英語力の不足を痛感する。資料作りの際は翻訳ソフトの力を借りることができるが、語りはそうはいかない。しっかり勉強しなおすべきだと、今回、改めて痛感した。
そういえば、パンデミック時に、こんな動画も作っていた! SAREESの演奏を聴きつつ、「ドレスデンの奇跡」を知ることができます!
💝シューベルトのアヴェ・マリア。ドレスデンにある奇跡の聖母教会(フラウエン教会)の物語と共に。
🇩🇪27年越しの念願。遂には、奇跡の光景をこの目で。
https://museindia.typepad.jp/2018/%E6%97%85%E3%83%89%E3%82%A4%E3%83%84/
🇯🇵NORITAKE
https://www.noritake.in/
🇮🇳25 SOUTH
https://25south.in/