昨日の夜、我が家の運転手であるアンソニーの娘アリスの結婚披露宴に出席すべく、パーティ会場へと赴いた。彼らはクリスチャンにつき、結婚式は昼間、教会で執り行っている。インドの結婚式のスタイルについては、諸々言及したいことがたくさんあるが、今日のところは長くなるので割愛。
披露宴のゲストは数百人と聞いていたが、なんと1000名を軽く超えていた模様。想像以上に大規模な会場だ。ゲストは、新郎新婦と写真撮影をしたあと、食事……という流れである。日本の結婚式のような「式次第」はない。三々五々感が半端ない。
今は亡き彼らの長男アンソンも、きっと会場にて、アリスの晴れ姿を見守ってくれていたことだろう。
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インドにおける運転手や使用人(メイド)と、雇用主との関係性は、一言では表現できない。お互いが、持ちつ持たれつ。どんなにインドライフの利便性が高まっても、「人間同士のやりとり」が重要なインド社会にあって、使用人皆無のライフは困難だ。
もっとも我が家は、現在バンガロールで二拠点生活中。新居のコミュニティが未だ工事中につき、基本的にはウイークエンド・ハウス状態。ゆえに新居はメイドを雇っていないので、わたしがひとりで「エクササイズを兼ねて」家事全般をやっている。これは極めて特殊な例である。
旧居には月曜から土曜まで、毎日数時間、メイドに来てもらい、掃除や洗濯を任せている。料理はわたしが自分でやる。庭師には、週に一度、来てもらっている。今のところは、それで暮らしが成り立っている。
他人とはいえ、我々の生活空間を自由に行き来する彼らとの関わりは、決して浅いとは言い難い。特に運転手は、車内という閉鎖された空間の中で、雇用主の会話や電話での話を耳にする。
同じ駐車場にて居合わせた運転手同士が雑談に花を咲かせるのは珍しいことではない。家庭内のいざこざなども、運転手ネットワークを通して、たちまち世間に拡散される。ゆえに、望まれるのは運転の技術だけではない。我が家のように、車だけでなく、家の鍵を託し、留守中の家の管理や猫らの餌やりなども託している運転手に対しては、信頼関係の構築が重要だ。
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インド移住後の数年間、我が家は運転手を雇うたびに、看過できないトラブルに見舞われ、交代交代の連続だった。しかし2011年の終わり、アンソニーが来てからは、そのストレスフルなドラマに終止符が打たれた。彼は、友人夫妻が久しく雇用しており(彼らは現在、米国在住)、信頼性についてはお墨付きだった。
とはいえ、全く問題がなかったかといえば、そういうわけでもない。それなりの波乱はあった。しかし、いずれの軋轢も些細に思える出来事が、彼らの家族にはあった。ゆえに、わたしたちも、彼らに対しては、ある意味、通常以上に心を寄せていたともいえる。
アンソニーには、妻との間に、2人の息子と、1人の娘がいた。過去形なのは、彼らの長男が7年前に、不慮の水難事故で他界したからだ。わたしたち夫婦は、アンソニーに給与や保険などを補償するほか、子どもたちの教育支援も続けてきた。あらゆる点で、他人事ではなかった。
その後しばらくは、本当に、タフだった。どんなに時間が流れても、痛みが消えることはないということも、重々理解しつつ、歳月を重ねた。やがて娘がエステティシャンとしてビューティーパーラーで働き始め、次男は大学に進学……。いろいろなことがあった。
アリスの結婚に際しても、ここ数年は父親であるアンソニーが伴侶探しに奔走。インドでは、親が結婚相手を探すという家庭が今なお多数だ。恋愛結婚が増えたとはいえ、見合い結婚が主流である。このあたりの結婚事情については、過去に記録を残しているので、ここでは割愛。
婚約式や結婚式にかかる費用その他についても、我々夫婦とアンソニーとの間で、諸々あり、どうするべきか、頭を抱えた。何が正解か……などということはわからない。自分たちの選択が正解だと信じて、未来を見つめる。
アンソニーは、結婚式の前後1週間ずつ、都合2週間、休暇を取っている。娘の結婚式のために、長期休暇を取る父。一般常識の一般というものがない国において。自分たちなりのスタンダードを育むべし。いずれにしても、アンソニーは大いに肩の荷が降りたであろうし、わたしたちもまた、喜ばしく思うと同時に、ほっとしている。
2人のスタートラインを、心から祝福したい。
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ところで、昨夜着用したのは、おなじみMRINALINIのサリー。これを最初に着用したのは、新居のプジャーの日。ハレの日用のサリーと化している。プジャーには、ご近所さんでもあるYashoとHari夫婦が来てくれた。後半の写真はそのときのもの。家に火が燃え移るんじゃないかっていうくらいの迫力の焚き火。Yashoからは、引越しのプジャーに関するあれこれを教わって、とても勉強になった。
💝彼らの笑顔が胸に沁み入る。勤続13年の運転手アンソニーの長女、アリスの「婚約式」に参席。
🙏2017年11月9日。敬虔なクリスチャン一家。巡礼の旅先でドライヴァーの息子が非業の最期。
🏡結婚式を思い出す。炎に祈り、煙で清めるPooja(プージャー/儀礼)