ミューズ・チャリティバザールのレポートを記してから、早くも半月が過ぎた。折に触れて日々を綴ることは、経験を整理するのにも、考えをまとめるのにも、役に立つ。
インドに暮らしてまもなく、丸8年になる。が、記す話題は少なくなるどころか、書いておきたいこと、誰かに伝えたいことは、益々、募る。それは日常の些細なことから、大きなテーマまでさまざまだ。インドは本当に、奥深く、興味が尽きない。
翻って日本。
今年も今月末より来月にかけての2週間余り、一時帰国する。それもあって、今月もまた、少々立て込みそうだ。
それにしても、2020年の東京オリンピックの開催には、心底驚いた。福島の原子力発電所の現状が、コントロールされているかのような安倍首相のスピーチにも、言葉を失った。
2011年3月に起こった震災は、「震災」という言葉のせいで、あたかも「天災」のような印象を受ける。しかし福島原発の事故に関しては、「福島第一原子力発電所大爆発事故」とでも明確に記し、それが人災であることを強調すべきだと思う。
黒澤明監督による日米合作映画に、1990年公開の『夢』という作品がある。8つの物語によって構成されたオムニバス形式の映画だ。その一つに「赤冨士」という話がある。
富士山が大噴火を起こして、人々が逃げ惑っている。空は怪しく不可解な色に染まり、まさにこの世の終わりのような光景が広がっている。しかし実は、背後にある原子力発電所の、6つの原子炉が爆発していたのだった。
黒澤氏のすごいところは、目に見えない放射能に色をつけて、視覚的に放射能を捉えさせ、恐怖を与えているところだ。空も、海も、怪しい色に染まりゆく悪夢。
しかし実際の放射能は、目には見えない。だから看過することができる。それが、恐ろしい。
「猿は火を使わない。火は自分たちの手で負えないことを知っているからだ。ところが人間は核を使い出した。それが自分たちの手に負えないとは考えないらしい。火山の爆発が手に負えないのをわかっているのに、原子力発電所の爆発ならなんとかなると思っているのはどうかと思うね。」(黒澤明の手記より抜粋)
福島原発の、とてつもなく深刻な状況に関して、また日本の原発に対しては、かつてのブログでも折に触れて記してきたが、学ぶほどに、書きたいことが山ほどある。が、この件に関して深入りすると、絶望的な気分になるので、今日のところは久しぶりの記録につき、このへんにしておこうと思う。
この映画は、本当にすごい。全くもって、日本の現状を予測している。結局は、作中にあるように、「知らずに殺されるか、知ってて殺されるか、それだけだ」という違いだけ、なのだろうか。
映画の中では、6つの原子炉が爆発したとされているが、奇しくも福島第一原子力発電所には、6つの原子炉がある。
『生きものの記録』という映画も、強烈だ。いやはや、日本では「この期に及んで」も、反原発を訴える人が、この映画の中の三船敏郎(当時35歳の彼が70歳の役を演じて話題になったらしい)のような存在感で見られている節があるのだから、途方に暮れる。
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