◎家具探しのバンガロール探検。だいぶ絞り込めてきたが、いつまた「第三波」でロックダウンになるかもしれず、時間に余裕がある今、極力、見ておこうと思う。
昨日はインディラナガールの「新旧の店」を巡る。インドの家具は、一般に重厚だ。英国統治時代から、ティーク(チーク材)やローズウッド(白檀)、クルミ材など、さまざまな天然木(ソリッドウッド)や大理石を配した家具が多いのも理由の一つ。
◎我が家の家具は全て、移住当初にインドで調達した。ティークやローズウッドの古い家具は修繕、新しい家具も敢えて「昔の意匠」を取り入れた、マホガニー材のもので揃えた。これらの家具は、美しさは変えず何十年も持つ。
インドでは、伝統的な家具が受け継がれてきた一方で、過去十数年のうちにも、軽くて廉価な家具が出回り始めた。しかし、2018年にハイデラバードに一号店をオープンしたスウェーデンの家具大手IKEAなどの売り上げが、パンデミックが妨げになっているとはいえ、他国に比して伸びていないのは、インドの伝統的な「住文化」も大きな理由だろう。
*追記/日本も昔は「婚礼家具」というものがあり、天然木の重厚でどっしりした家具のセットを嫁入り道具に持っていくのが一般的な時代があった……。ということを、先ほどFacebookでコメントをいただいて、思い出した。祖母の家にもどっしりと味わい深い家具があったものだ。
◎ここ4、5年の傾向として「レンタル家具」のスタートアップが急成長しているという。米国ではずいぶん昔から家具のリースは一般的で、わたしたちもカリフォルニアに数カ月暮らした時に利用した。インドではかつてなかった「借りる」という文化が各方面で見られ始めたのも、最近の傾向だ。
実は「レンタル家具」については、今日のランチタイムに夫から聞いて知ったのだった。これまで関心がなかったはずのインド家具業界のトレンドについて、詳細を語り始めたのだ。
「なに? なんで、そんなに詳しいの?」と尋ねたら、今、投資のためにリサーチしているから。とのこと。夫は投資関係(プライヴェート・エクイティ/ヴェンチャー・キャピタル)の仕事をしている。
てかさ。なんでそれを先に妻に教えない? 過去2週間、妻は独自の情報収集で東奔西走しているんだが。
「え? 話さなかったっけ……?」と、しらばっくれる。うるわしくない天然。
◎さて昨日は、お気に入りの家具店のひとつ、PETE’S FURNITUREへ。無論、最後に訪れてからは8年ほど経っている。久しぶりにもかかわらず、顔なじみの中国系インド人オーナー、アンジーが、笑顔で歓迎してくれた。
先日紹介したTHE VINTAGE SHOP同様、ソリッドウッドの古く味わい深い家具がたくさんある。当初、新居には新しい家具を7、8割……と思っていたが、ここにきて、古い木材の味わいとアール・デコのデザインに引き込まれ、割合が逆転しそうだ。
目に止まった椅子という椅子に座ってみる。座って「立ち上がりたくない」と思える椅子が、いい椅子なのだ。それはサリーを試着していて、「脱ぎたくない」と思えるものがいいというのと似ている(坂田基準)。
自分でソファーのファブリックを選べるのもいい。傷んだらいつでも張り替えられる。ちなみに我が家の家具は、16年間、張り替えずともさほど傷んでいない。毎週金曜日、ミューズ・クリエイションのメンバーが座ってきた椅子もソファーも、健在だ。ここでもまた倉庫を探検した。ローズウッドのいい椅子を発見してうれしい。
◎アンジーがおいしい烏龍茶を出してくれた。彼女はコルカタ出身の広東人系インド人。ハズバンドはムンバイ出身の中国系インド人。
この店は40年前の創業だが、それ以前の1970〜80年代にかけて、アンジー夫婦は、市街中心部で唯一の中国/アジア料理店を経営していたという。「南京」という名のその店には、日本人常連も多かったとのこと。
その話を聞いた瞬間、閃いた。
夫が子どものころ、義父ロメイシュはインド各都市に赴任していたことから、夫と姉のスジャータはデリーの祖父の家に暮らしていた。しかし、折に触れては、赴任地を訪れ、家族で共に過ごしたという。
ちょうど1980年前後、義父はバンガロールに駐在していた。帰宅後、夫に「南京」の話をした。
「その店だよ! ぼくがウエイターから、お箸の使い方を教わったのは」
やはり……!
アルヴィンドはインド人ながら、箸の使い方が非常にうまい。むしろわたしよりうまい。出会った当初、その理由を聞いた。子供のころ家族で訪れた中国料理店で、ウエイターに教えてもらったと言っていた。両親と姉は関心を示さず、フォークやスプーンを使っていたらしいが、夫は箸を使うのが楽しかったらしい。
その店のオーナーが、アンジー夫妻だったわけだ。
ささやかな偶然が、殊の外、愛おしく思える。
不易流行。温故知新。過去を慈しむ暮らしの中で、新しく学び、知り、絆や縁の「有り難き」を思う。
◎なんか情けない表情の1枚目の写真は、別の店。先日紹介したTHE PURPLE TURTLESのインディラナガール店。気になっていた椅子に改めて座り、座り心地を確認中。すごく大きくて重たい椅子なのだが、わたしが座るとあまり大きく見えないのはなぜだろう。😅
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。