インドを知る多くの人が、ラジャ・ラヴィ・ヴァルマの絵画を目にしたことがあるだろう。彼は、絵画を通して、神々の姿を具現化。貧富の差を超え、遍く人々に版画で芸術の世界を広めた伝説のインド画家だ。
高貴な出自である彼は、英才教育を受け、想像力を育むに申し分のない環境のもとで育った。宮廷画家としてその名を馳せ、インド国内を放浪して多くの貴人を描いた。その一方、印象深いのは、自らの絵画を大量にリトグラフ(版画)印刷し、その絵を貧しい人たちにも普及させたこと。
わたしの友人であるギタンジャリ(Gitanjali Maini)は、ラジャ・ラヴィ・ヴァルマの作品を保護し振興するNPO、The Raja Ravi Varma Heritage FoundationのCEOだ。故に、昨年、オンラインでのイヴェント「ミューズ・チャリティフェスト2020」を実施した際、数本の動画を提供してもらうことができた。その中の1本はラヴィ・ヴァルマ本人の生涯をたどる動画、もう1本はラヴィ・ヴァルマの末裔であるラクミニ・ヴァルマの動画だ。
人々が信仰する神々を色鮮やかな色彩とともに具現化したラジャ・ラヴィ・ヴァルマ。当時の芸術界では間違いなく斬新な発想であり、周囲からの批判も多かったのではないかと、容易に想像がつく。この動画を見たことで、彼の生き様がより、魅力的に、興味深く思えてきた。
●絵画を通して、神々の姿を具現化。遍く人々に版画で芸術を広めたラジャ・ラヴィ・ヴァルマの生涯
●ラジャ・ラヴィ・ヴァルマの子孫、王女ラクミニ。時空を超えて彼女が描く世界。Thus Far 《ラクミニの軌跡》
◎ラクミニ・ヴァルマ
18世紀初頭から20世紀半ばにかけて、南インドのケララ州南部に存在したヒンドゥー王朝、トラヴァンコール王国。これは、その第4番目の王女であるバーラニ・ティルナル・ラクミニ・バイ・タンプランの物語です。彼女はインドで最も有名な画家のひとり、ラジャ・ラヴィ・ヴァルマの子孫。インドの二大叙情詩、『マハーバーラタ』や『ラーマーヤナ』の登場人物をはじめ、ヒンドゥーの女神たちを描いた作品を数多く残しています。インドに関わる外国人も、きっとどこかで目にしたことがあるはずです。現在、バンガロールに暮らす画家のバーラニ・ティルナル・ラクミニ・バイ・タンプランは、この偉大なる先祖の影響を、強く受けてきました。
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🎨名画の中の、友人一家。伝説のインド画家の子孫が描く現在のインド(2021/03/05の記録から転載)
➡︎https://museindia.typepad.jp/2021/2021/03/varma.html
友人アンジュムの『家族の肖像』。描き手はラクミニの息子、ジェイ・ヴァルマ。
昨日は、月に一度のYPOフォーラム・ミーティング。いつものように、元気なインド友らと会い、ランチを挟んで4時間ほど過ごしたあと、UBシティにほど近いgallery gへ。
昨年、ミューズ・クリエイションが実施したオンライン・イヴェント『ミューズ・チャリティフェスト2020』では、多くの在インドの企業や団体、ビジネス関係者から協力を受け、動画を提供していただいた。
知人のギタンジャリ・マイニが運営するgallery g、そしてRaja Ravi Varma Heritage Foundationも、すばらしい動画を提供してくれたので、日本語訳をつけて動画チャンネルに公開している。
ラジャ・ラヴィ・ヴァルマとは、絵画を通して、神々の姿を具現化。遍く人々に版画で芸術の世界を広めた伝説のインド画家だ。インドに暮らす人ならば、きっと彼の絵をどこかで目にしたことがあるに違いない。
『ミューズ・チャリティフェスト2020』では、ラジャ・ラヴィ・ヴァルマの生涯、そして彼の子孫で王女でもあるラクミニ(ご存命の画家)の軌跡を紹介している。夢と現、時代を超えての時間旅行を楽しめるすばらしい動画なので、ぜひご覧いただければと思う。
さて、昨日gallery gを訪れたのは、ほかでもない、現在公開されている、友人アンジュムの『家族の肖像』を見るためだ。描き手はラクミニの息子、ジェイ・ヴァルマ。
アンジュムの夫オマールは、ハイデラバードのロイヤルファミリーの出自。アンジュムはバンガロールの不動産開発会社大手プレステージ・グループ(UBシティやコンラッドホテル、ゴルフ場ほか多数の物件を所有)の創業一族。アンジュム自身は、家具や内装を一から手がけるインテリア会社を運営している。卓越した美的センスを持つ女性だ。
以前、我が友らが日本について語ってくれた動画を公開したが、あのとき訪れていたのが、アンジュムの別荘。動画内で紹介した絶品マトン・ビリヤニは、彼女のレシピだ。ビリヤニに限らず、彼女はフーディでもあり、まつわるエピソードは尽きない。アンジュムはまた大変な親日派。ムスリムゆえ、牛肉も大好きで、神戸牛をこよなく愛している。
それはさておき、この絵画。間近で見れば尚一層、見慣れた友人一家の表情が、あまりにもリアルで、鳥肌が立つ。表情、髪の毛の具合、手の血管、宝飾品、衣類の装飾……。アンジュムが着ているのは、彼女の母親が婚礼のときに着たという絞り染め(BANDHANI/ TIE &DYE)のサリーだ。精緻な絞り染めの触感さえ伝わるような描写力。
ラジャ・ラヴィ・ヴァルマはインドの伝統的な宝飾品や植物、果実などのモチーフを巧みに絵画に取り入れているが、彼もまた祖父や母親の意匠を受け継いでいるように見える。
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同ギャラリーでは、他の絵画もさまざまに展示されている。
●タゴールと岡倉天心、横山大観との交流。そしてベンガル地方の絵画に与えた影響などが言及されている。興味深い。タゴールと日本の交流については、坂田のセミナー動画でも言及している。関心のある方は、ぜひご覧ください。
●Raja Ravi Varma Heritage Foundation
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●ドキュメンタリー*Holiday in Golfshire, Bangalore 久しぶりに集った盟友8人。親日派の彼女たちに聞く日本旅エピソード。本場マトン・ビリヤニ最高!
●パラレルワールドが共在するインドを紐解く③明治維新以降、日本とインドの近代交流史〈前編〉人物から辿る日印航路と綿貿易/からゆきさん/ムンバイ日本人墓地/日本山妙法寺(岡倉天心やタゴールにも言及)
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