日曜の午後。まだまだ工事中のご近所を散策する。約200余りのヴィラが連なる、ゲーテッドコミュニティ。完成しているのは10%余りで、生活を始めているのは20数家族。数年のうちには、クラブハウスや商業施設も完成するはずで、そのころには賑やかになるだろう。
Total Environment。この不動産開発会社は、CEO夫婦の志向、趣向を反映した、極めて独特なコンセプトに基づいた家づくりをしている。芸術、音楽、環境、地球……。人々が、生きる上において望まれる要素を、丁寧な「手作り」で満たした空間づくり。
同社の物件を見た当初からそれが感じられ、選んだ。その後、CEOのカマルと会い、話をし、建築に関する趣味の一致を見た。家に対する愛着や情熱をも、理解した。「終の住処」に、この物件を選んで間違いはなかったと、確信もした。
……しかしながら!
工程の遅れは尋常ならない。まだ、開発が始まるまえの2013年。周辺が荒野だったころに購入した。当然のように、竣工が遅れた。さらには工事も遅れた。さらにはCOVID-19も来た。厳密に何年遅れたのか、よくわからないほどに遅れて、かれこれ9年の歳月が流れた。
結果的に、少なくとも我々夫婦にとっては、今がいいタイミング、であったが、だからって、看過できる遅れではなかった。
そもそも急ぎ引っ越す必要がなかった我々でさえ、最後の数年は問題視し始めた。最後の数カ月業を煮やしっぱなしだった。ここに至るまでのドラマがあるからこそ、「いい物件ですよ」と、安易に人に勧める気にはなれない。無論、完成した物件を購入するのであれば、話は別だが。
それでも、物語性が高いこの開発会社や、そこから生まれる家々のことについては、いつかきちんと記しておこうと思う。
🏘
インドに限らず、遍く世界中「住まい」には、その国の地理的条件や気候などの環境をはじめ、文化や伝統、宗教といった各家庭のライフスタイルが色濃く反映される。ゆえに、「家庭訪問」はその国を知る上で、極めて有意義でもある。
わたしは、インド移住直後の2006年から10年余りの長きに亘り、日本の大手広告代理店の研究開発局に在籍されていたクライアント女史に依頼され、実に多様な調査の仕事をさせてもらった。大半の仕事は、クライアント女史がインド出張をされ、デリー、ムンバイ、バンガロール、チェンナイ、コルカタと、各都市にて視察を行ってきた。
町や店舗などを巡る視察をはじめ、そのときどきの調査目的に合わせた企業や団体の訪問なども行った。
中でも、強く印象に残ってるのは、富裕層、中間層、貧困層……と、それぞれの「家庭訪問」による調査だ。対象となる家庭の写真を撮らせていただき、話を聞く。アンケートに答えてもらう。あるいは、世代別のグループ・インタヴューなども。若い世代の意識の変化などには、驚かされることしきりだった。
わたしの役割は、調査の動向とレポートのまとめ。毎度、気が遠くなるほどの膨大な資料をまとめてきたが、まるで「1000本ノック」のようなその仕事は、わたしにとってかけがえのない、貴重な経験だった。無論、そのクライアント以外の仕事もさまざまに受けてきたから、「ただ住んでいる」だけではわからない、この国の側面を見てきた。
だからこそ、知れば知るほどに、この国の深さ広さを思い知らされ、何につけても断言できない事情や背景に思いを馳せることにもなる。逐一、調べる習慣がつく。
話がそれたが、住まい。住まいを見れば、ライフスタイルが垣間見られる。一般にソーシャルライフを重視するインドにおいては特に、住空間は人々との交流を映す鏡のようでもある。
我が家の記録にさえも、ビジネスの着想を得られる人は、きっといるはずだ。というわけで、家の記録はのちのち、「ホーム」というカテゴリーで、ブログにまとめて残そうと思う。
……本題を記すのを忘れていた。
夏は涼しく、冬は暖かく……環境への負担を軽減すべく考えられた建築。屋根の上の、空中庭園。実はここ、住民は登れない場所。危ないからな。しかし、我が家はまだ未完成ということもあり、梯子が放置されている。ということで、登ってみた。
住人からは見えない場所さえ、花が咲いている……。なんという愛らしさ。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。