ことあるごとに、歴史は知っといたほうがいいと言い続けて幾星霜。年を重ねるほどに、その重要性を実感する。わたしは学生のころ、大して勉強しなかった。歴史もほとんど関心がなかった。しかし、社会人になった1988年。初めての海外取材で台湾を訪れることになってから、異国の歴史や伝統、文化を学ぶことの重要性を痛感した。ガイドブックを編集するに際しては、知っておくべき出来事があまりにも多かった。
関わる国の歴史や文化、習慣を、最低限でも知っておくと、世界を「視る目」が変わるし、自分のためにもなる。勉強にせよ、趣味にせよ、結婚にせよ……。ごく限られた自分の経験や、浅薄な知識で、事象を一刀両断することの危険性も同時に悟る。
インドにおいては、各種セミナーを実施しているわたしではあるが、遍くテーマにおいて「広く浅い知識」であり、専門家の見識には遠く及ばぬ。それでも、偏りなく、自分の知ることをできるだけ、周囲に伝えたいと思う。
図書館などへ足を運び、「紙の情報」を収集していた時代に比べれば、インターネットのおかげで時間がかからなくなった。しかし、情報の質が上がったとはいえず、適切な記述を取捨選択をするのは難しい。ソース(源)の見極めが問われる。特に、出自の不明な浅薄で断片的な情報があふれている昨今の世界にあっては。
毎回、セミナーをするたびに、資料を洗い直す。ガンディにせよ、アンベードカルにせよ、調べるたびに、新たな史実が芋づる式に出てくる。その都度、人物像に彩りが添えられる。人間ひとりひとりの生き様に、たやすく白黒付け、評価することの恐ろしさも思う。
ガンディという偉人も、アンベードカルの立場から見るとまた、異なる人物像が浮かび上がる。史実は複数の視点から眺め、考察すべきとの思いを痛感する。
🖋
難しいながらも、同時に、調べる作業は本当に楽しくもある。たとえば、この資料にあるチャップリンの『モダン・タイムス』などはその顕著な例。ガンディの資料を整理しながら、「ひょっとして、チャップリンはガンディの影響を受けているのでは……?」と閃いた。調べたところ、ビンゴ! チャップリンはガンディに会っていた!
こういう勘が当たると、楽しさが増す。
知らないことは、知らないとの自覚を肝に据え、他者の生き様に謙虚であれと、知れば知るほど、そう思う。
*映画『Ghandi』は、インド・パキスタン分離独立前後のインドを知る上でもお勧め。ちなみに複数あるので、ベン・キングズレーが主演の方を見ていただきたい。実は彼、先祖はインドのグジャラートからザンジバルに移住した香辛料の貿易商。本名は、クリシュナ・パンディット・バンジ(Krishna Pandit Bhanji)と、こてこてにスパイシーなお名前。
クイーンのフレディ・マーキュリー同様、インド出自であることを隠していたが、この映画のヒットで、インド人であることがむしろ、大いにアピールされる結果となった。ちなみにパールシー(ゾロアスター教)出自のフレディ・マーキュリーの本名はファルーク・バルサラ。彼はザンジバル生まれ。
🇮🇳DASTKAR Nature Bazaar/ 手工芸品に息づくマハトマ・ガンディの精神など(2019/07/06)
https://museindia.typepad.jp/2019/2019/07/gandhi.html
🇮🇳本日、10月2日は、マハトマ・ガンディの誕生日だ。写真の資料は、坂田がセミナーで使用するために作成したものの一部。詳細に関心のある方は、ぜひ「インド・ライフスタイルセミナー必修編①〜⑤」をご覧いただければと思う。
【インド・ライフスタイルセミナー】
●パラレルワールドが共在するインドを紐解く/セミナー動画
①多様性の坩堝インド/多宗教と複雑なコミュニティ/IT産業を中心とした経済成長の背景/現在に息づくガンディの理念
②「広く浅く」インドの歴史(インド・パキスタン分離独立)/インドの二大政党と特筆すべき人物/テロが起こる理由とその背景
③明治維新以降、日本とインドの近代交流史〈前編〉人物から辿る日印航路と綿貿易/からゆきさん/ムンバイ日本人墓地/日本山妙法寺
④明治維新以降、日本とインドの近代交流史〈後編〉第二次世界大戦での日印協調/東京裁判とパール判事/インドから贈られた象/夏目漱石
⑤ インド国憲法の草案者、アンベードカルとインド仏教、そして日本人僧侶、佐々井秀嶺上人
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。