ダージリン、セカンドフラッシュのマスカテル。初めてインドを訪れた2001年、ニューデリーの紅茶専門店で購入して以来、わたしの一番好きなインドの紅茶だ。
マスカットのような香りがする、上質とされるこのセカンドフラッシュ。昨日は久しぶりに、しみじみと味わった。
ミューズ・クリエイションの特別企画で実施したティーテイスティング。バンガロールで初めて、紅茶専門のティーハウスをオープンしたInfiniteaのことは、過去に何度か記した。わたしたちが移住当初暮らしていたカニンガムロード沿いに本店があるため、オーナーのガウラヴとは、当時からの知り合いである。
今まで仕事でも何度かインタヴューをさせてもらったほか、ミューズ・クリエイション以前、チャリティ・ティーパーティをやっていたころに、紅茶講座と、彼らによるティーテイスティングを拙宅で開いてもらったこともあった。
数カ月前、まだオープンしたばかりのインディラナガール店に夫と訪れランチを楽しんでいたところ、久しぶりにオーナーのガウラヴに再会。彼がティーテイスティングを始めたということで案内をくれたのだった。インドは紅茶の原産地でありながら、簡単においしい紅茶に巡り会えない。
しかも、北インドに比して、南インドはコーヒー文化圏であり、なおさら専門店なども少ない。それをして、ミューズ・クリエイションのメンバーからも、インドのお茶について知りたいとのリクエストがあったことから、Infiniteaにて、紅茶講座とティーテイスティングをまとめて実施しようということになったのだった。
さて、当日。参加者15名分の資料を準備して、Infiniteaへ赴いた。以前作っていた資料に手を加え、カラープリントしての、毎度なかなかに役立つ資料だ。
CONTENTS
1. 意外に新しい、インドのお茶の歴史
2. インドの人々の、お茶の楽しみ方
3. ストレートティーの歴史は始まったばかり
4. インドのお茶の産地とその種類
5. インドで生産されるお茶の種類
6. インドにおける、上質茶の購入先
7. 紅茶(リーフティー)の、おいしいいれ方
8. 身体にいい、お茶のレシピあれこれ
9. 聖なるバジル:トゥルシの葉
……といった内容である。これを知るだけで、インドのお茶の歴史やその世界の広がりがわかって、より「ありがたみ」が増すというものだ。
さて、こちらはガウラヴが敢えて日本人である我々向けに、用意してくれたテイスティングのメニューだ。ファーストフラッシュ、セカンドフラッシュ、そしてアッサムは入れて欲しいと頼んでおいた。
それ以外にも、ダージリン産のグリーンティ、やはりダージリン産のフラワーティなどを加えておいてくれたのだった。
ティーテイスティングの詳細を記したいところであるが、となると話が非常に長くなってしまうので、今日のところは主に写真を掲載しておく。
ガウラヴは、それぞれのお茶にあった「マカロン」を準備していてくれていて、そのマカロンの味わいが格別であった。
ガウラヴが以前から熱心に語っていたのは、「お茶に合う料理やお菓子を出すこと」であった。彼はそもそも「音楽関係」の人であり、料理の専門家ではなかったのだが、自分でいろいろと研究し、最初は料理のメニューを完成、その後、スイーツ類の研究も始めたと言っていたのが5、6年ほど前だったか。
2年ほど前からは、「マカロンに挑戦している」とのことで、わたしも試してみたことがあった。そのときも、それなりにおいしかったのだが、今回のマカロンは、格段においしくなっていた。
ガウラヴは相当に努力家らしく「2年間、研究を重ねたんだ」とのこと。みなに「おいしい!」と褒められると、思い切り照れながら、とてもうれしそうであった。
お茶とのコンビネーションを知り尽くしているガウラヴだけあり、組み合わせは本当に、絶妙だった。
お茶がマカロンの味を引き立て、またマカロンがお茶の味を演出する。さほどマカロン好きではない、という参加者も、完食していた。
このマカロンは、ティーテイスティング用に小さめに作っているとのことだが、このサイズはスイス旅行のときに心を奪われた「ルクセンブルゲルリ」とほとんど同じだ。この大きさならば、いろいろな味を少しずつ試すのにも好適である。これを販売してみたら? とガウラヴに言ったら、実は今、箱などを準備中なのだとか。
マカロンとお茶をセットで買うというのも、いいかもしれない。
上の写真は、とてもインドらしいマカロンとお茶の組み合わせ、アッサムティーとチャイ・マカロン。チャイマカロンには、すりおろしたショウガとカルダモンのクリームが入っており、一般にはミルクティーとして飲まれるアッサムティーのストレートと、なんとも言えず、絶妙なコンビネーションであった。
ちなみに、上のメニューにもあるが、組み合わせは下記の通りである。
◎ファーストフラッシュ・ダージリン・ウーロンティ(ダージリン産の半発酵茶)
●ラズベリーマカロン
◎エメラルド・ダージリン・グリーンティ(ダージリン産の無発酵茶)
●レモンバタークリームマカロン
◎ピオニーロゼット・ダージリン・フラワーティー
●ソルテッド・キャラメル・バタークリームマカロン
◎アッサムゴールド・セカンドフラッシュ(アッサム産の全発酵茶/ブラックティ)
●チャイマカロン
◎マスカテル・セカンドフラッシュ・ダージリン(ダージリン産の全発酵茶/ブラックティ)
●ベルギーチョコレートマカロン
ティーテイスティングは、それぞれのお茶に関するガウラヴからの説明を受けながら、時に乾燥した茶葉の香りをかぎ、あるいは、お茶を出したあとの茶葉の香りを試してみつつ、和やかな時間である。
ガウラヴ曰く、「緑茶はすばらしく健康にいい」ということで、参加者があまり緑茶を飲まないと知るや、「なぜ? 日本人なのになぜ?」と、訴えかけるように問うていた。ちなみにここ数年、インドでは主には富裕層の間で「ダイエットに効果あり」「健康にいい」とのことから、かなりのブームである。
スーパーマーケットのティーコーナーも、あらゆる種類のグリーンティが見られる。先日も、その割合の多さに驚いたばかりだった。グリーンティは砂糖を入れずに飲む、ということが受け入れられやすいことから、健康にいいということに直結するのかもしれない。
緑茶の存在を見直すべきか、とも思わせられるテイスティングである。
ティーテイスティングのあとは、みなで好みのお茶を購入したり、記念撮影をしたり。
この10年の間に、お茶の値段が数倍にも上がっていることはに驚いたが、しかし同じクオリティのお茶を日本を始め先進諸国で購入するとなると、更に1.5倍、2倍となっている。いいもの、というのは、そういうものである。
ちなみに、CTCや、マサチャイ用のダストティーは、これまた庶民の味でもあるゆえ、桁違いに安い。ミルク、そしてカルダモンやジンジャー、クローヴなど好みのスパイスを入れて煮出せば、風味豊かなチャイになる。
ちなみにティーテイスティングは、10名以上から受け付けているとのことで、一人600ルピーから。今回の企画は、紅茶講座の資料代とミューズ・クリエイションへの寄付を含めさせてもらい、計1,000ルピーで実施した。ともあれ、みなさんには十分に楽しんでもらえたと思っている。
思い返せば、ワイナリー巡りやインドのワインテイスティングなど、色々な企画があったはずだが、生まれては消え、生まれては消え……というものも少なくない。
このような、インドの断片を知るための「課外活動」も軽やかにやりつつ、ミューズ・クリエイションの活動を続けて行きたいものだと思う。
■十億分の一のインド:2006年にガウラヴをインタヴューしたときの記事(←Click!)
(これは、インド移住当初の過去の企画。インドの人口、すでに12億超である)
■Infinitea (←Click!)