インド移住直後、一人で慈善団体訪問を始めた2007年に遡れば、かれこれ12年に亘って、地元の慈善団体を訪問してきた。ミューズ・クリエイションを創設した2012年はわたしにとって、個人的な活動から多くの人を巻き込む活動に変化した節目となった。
そして今回の訪問はまた、大きな節目の一つである。
在バンガロールの日系企業に、CSRのお手伝いをしますと声を上げ始めて数年。多くの人に、「現場」を見て欲しく、週末の慈善団体訪問などの参加者を募ったりもしてきたが、なかなか数は集まらない。それでも、同行してくれた方々の、それぞれに深く思うところがあったご様子を目の当たりにしては、地道にでも続けていこうと思ってきた。
今年に入ってNEW ARK MISSIONという慈善団体を訪問した際、AMADA INDIAのトップ・エグゼクティヴである沖氏が同行され、それを契機に、同社がミューズ・クリエイションにCSR(企業の社会的責任)予算を託してくださった。
打ち合わせに行った時の様子(社会科見学)は、以下のブログにレポートしている。ぜひご一読を。
https://museindia.typepad.jp/mss/2019/07/amada.html
これを機に、ミューズ・クリエイションに150万ルピー(約230万円)もの一部CSR予算を任せていただいた。ありがたくも、これはこれで、緊張する。信頼できる、そして資金を必要としている団体を3カ所選出。訪問プランなどもご報告し、本年度(来年3月末)までに実施することにしていた。
その第一弾が、昨日の訪問だった。ミューズ・クリエイションの有志に加え、今回は我が夫アルヴィンド、そしてAMADA INDIAのCSR担当スタッフ2名にご同行いただき、すでに2度来訪経験のある、我が家の近所のJAGRUTHIへ。
JAGRUTHIのミッションは、スラムに暮らす貧しい子供たちの救済。中でも、風俗産業に従事する母親、即ち娼婦(売春婦)の元に生まれ、虐げられた環境に置かれている子供たちの救済だ。具体的な活動内容としては、
●街中から、HIVほか性病に感染した子供たちを見つけ、医療措置を施す
●娼婦の子供たちのための孤児院、施設の運営。医療や教育の提供
●スラムにある無償の学校の運営
●HIVや性病に関する啓蒙のレクチャー
●貧困層の女性たちへの職業訓練……などが挙げられる。
http://www.museindia.info/museindia/bangalore-charity04.html
バンガロール。人口の約3割がスラム居住者だ。ムンバイやコルカタなどのように特定の「赤線」、すなわち風俗街というのは、この街にないのだが、風俗営業を行う裏社会の個人、組織は、当然のごとく存在する。かたまらず、散らばっている。
まずは全員で、創始者レヌの話に聞き入った後、近くにある学校まで徒歩で赴き、学校の中を簡単に見学した後、ホールへ。いつものように、子ども達と折り紙をしたり、歌ったり踊ったりをして、過ごす。
今回の対象は高学年の生徒ゆえ、折り紙では満足しないだろうかと懸念したが、みな、真剣に取り組む。試験を終えたばかりで疲れているのではと思ったが、好奇心旺盛だ。みなでクリスマスのオーナメントなどを作る。
実は当初の参加予定者から4人減った上に、折り紙初体験のインド男性3名の指導もせねばならず、わたしは20人近くを引き受けることになり、てんやわんや。オーナメントどころではないので、ツルを折ることにしたのだが、毎度、必ずいるはずの「できる子」がほとんどおらず、大人男子含め、すぐに手助けを求める人が多数。
「甘える機会のなかった」子どもたちは、大きくなっても、甘えてくる子が多い。しかし、甘やかしていては身がもたぬ。「しっかり観察して、自分でやりなさい!」を繰り返す。厳しいのである。
思うところ多々あり、書きたいことは尽きぬ。後日、これもまたブログにきちんと整理する予定だ。
最後、生徒の代表が感謝のスピーチをしてくれた。
「わたしはまもなく卒業し、JAGRUTHIを離れます。そんな今、こうしてみなさんと楽しい時間を過ごすことができて、本当に光栄です。わたしも大人になったら、こんな風に、子どもと一緒に意義深い時間を過ごせるよう、みなさんと同じような試みをしたいと思います」
と言われて、心中で涙腺崩壊した。
ちょっとしたことでも、真摯に取り組んでいれば、相手には伝わる。生まれ育ったときから、想像を絶するほどの困難を強いられてきた子どもたち。その怜悧に輝く瞳を見て、彼らの明るい未来を願うばかりだ。
アマダ・インディア各位にも、深く感謝する。
*子どもの顔にクローズアップした写真は、敢えて撮影していません。
*下部に参加者の感想を記載しています。
【参加者の感想】
●感想01
二度目の訪問でしたが、前回も今回も折り紙を教えるのに苦戦しました。今回はいくつか予習して、見本と途中まで折ったものを準備して行ったので、それが結構役に立ちました。
中高生の子たち相手だったので、器用な子は見本を見てどんどん先に進んだり、周りに教えたりしてくれたので、前回よりは楽でした。季節に合わせたクリスマスの折り紙だったからか、みんな素直に興味を持ってくれて、やりやすい雰囲気でした。
ただ、やるうちに盛り上がり過ぎてもっと教えてと言われて、つい付き合ってしまって、片付けが遅くなってしまい申し訳ありませんでした。
最後はみんなで歌を歌い、踊りはいつも通り盛り上がって、楽しく終わったと思います。気づいてみると、あっという間の3時間でした。
●感想02
初めてのJAGRUTHI訪問。個人的にはNew Ark Mission訪問以来、2ヶ所目の慈善団体訪問として参加させてもらいました。まずはJAGRUTHIの活動に関する話を創始者の方々からお聞きしたのですが、とにかく彼女たちの熱心さに驚かされるばかりでした。特に子どもたちの保護のみならず(それだけでも凄いことですが)、成長のための手厚いケアを、ボランティアとして行っていることには大変感銘を受けました。
またこの一生懸命さは、JAGRUTHIが運営している学校を訪問した時間にも実感することができました。学校敷地裏側のスラムとは対照的に清潔感が保たれた校舎、児童たちのための朝食・昼食の提供、勉強に集中できるような30人教室など、数え上げれば切りがありません。真に子どもたちのためを思って活動を行っているJAGRUTHIスタッフ・先生の方々、そしてその情熱を感じ感謝を気持ちを持って成長している子どもたちの素晴らしさから、とにかく学びっぱなしの訪問、貴重な経験を出来たことに大変感謝しています。
●感想03
JAGRUTHIへの訪問は2度目でした。今回の折り紙遊びは高学年の子供達とやると聞いていたので得意な子が多いかと思いきや、意外と折り紙自体やったことのない子供達ばかりでした。見よう見まねでできる子もいれば、綺麗に折れない子もいましたが、子供たち皆、私の拙い英語を真剣に聞いてくれ、合ってるよ!いいね!よくできたね!など褒めると、とっても嬉しそうに笑顔を向けてくれ、子供達の純粋さを感じました。
ダンス披露では、一緒に踊ってくれた子供達がいたり、楽しんでもらえ、歌披露では、クワイアメンバーは少なかったですが、参加者全員で歌えたのも良かったです♪ 私たち一人一人の力は小さいかもしれませんが、JAGRUTHIのような寄付を必要としている団体と、CSR予算を適切な場所へ届けたい企業との橋渡しになれたのは、とても感慨深いです。
●感想04
去年の訪問の際参加できず、ずっと気になっていたJAGRUTHIにやっと訪問できました。予想以上に大きくて立派な校舎に驚きました。教室もたくさんあり、きちんと机と椅子も並べられ、医療サービスも受けられ、普通の学校と遜色無い環境が無償で提供されていることが信じられない程でした。
全て寄付金で賄っているとのことでしたが、これだけの規模とクオリティを保つには相当必要なはずです。こういった慈善団体を訪問する度に、運営される方々の努力と愛情に頭が下がる思いです。
子供達は、元気で屈託の無い笑顔で手を振ってくれ、こちらが元気をもらいました。クリスマスが近いとのことで、子供達と一緒にツリーを折り紙で作りました。最初は難しそうにやっていた子たちも、次々と自ら新しいツリーを作ったり、他の子に教えてあげたりと、積極的に楽しんでくれて良かったです。あっという間に過ぎてしまいましたが、子供達と触れ合えて良い時間を過ごせました。
そもそもバンガロールでも、風俗業が広まっていてHIVウイルス感染者が増えているということがショックでした。考えてもみなかったですが、こういった現実がバンガロールにもあるということを知れたことも良い経験だったと思います。レヌさんが話してたように、性に関する教育が大事だと思います。知識があれば守ることができるはずです。少しずつでも、現状が改善されていくことを願います。参加された皆様お疲れ様でした。
●感想05
ジャグルティへの訪問は2度目でした。今回は事前に折り紙でオーナメント作りをするということが決まっていて、事前にいくつか候補の作品を送っていただいていたので予習もでき当日は結構楽しめました。折り紙を折るスピードが速い子がいて「マム、マム!」と急かす生徒に先生は「他の人を待つ事も必要だ」的なことをきちんと伝えており、楽しい中でもきちんと1人ずつ生徒をサポートする先生の姿が印象的でした。ただ遊ぶだけですが、こういった機会から生徒さん達が何か学んでくれているのかと思うとまた来たいと思いました。
●感想06
今回の訪問したJagruthiは、ホームも学校もすべて寄付で賄って運営されていると聞き、どんな環境なのかがとても気になっていたのですが、特に学校の方は質素ながらも整理整頓の行き届いた校舎で1クラス(1学年)当たりの人数も30名以内、プレスクールに関しては先生の他にアシスタントの先生、お世話のアンティまでいて
とても整った環境であることにびっくりしました。
折り紙のデモを通して直接生徒さんたちとも話す機会があったのですが、宿題が毎日あって大変!や将来は学校の先生や警察官になりたいなど、事前に話を聞いていなければ元々悲惨な環境にいた子供たちだとは信じられないくらい本当に無邪気な普通のお子さんたちのようで環境、設備だけでなく、子供一人ひとりへの心のケアも行き届いている様子に改めて感動しました。このような施設・学校を運営していく努力はとても言葉で表せるものではないと思います。本当に頭の下がる思いです。
●感想07
JAGRUTHIへは今回が初めての訪問でした。まずは事務所に集合し、創始者のレヌさんのお話を聞きました。事前にどういう子供を受け入れているのか聞いてはいましたが、レヌさんから創設した経緯や活動内容を直接お聞きして、その大変さに驚き、それでも支援を続けて行く姿に感銘を受けました。
その後徒歩で学校へ向かうと、小学生の子供達から歓迎の挨拶を受けました。今回は高校生と交流する予定で、小さな子供とは会えないだろうと思っていたので嬉しかったです。彼らの元気な挨拶が今も蘇ります。
肝心の高校生との交流ですが、予想していたより一生懸命、折紙に取り組んでくれました。特に女子は出来るまで頑張る子が多かったです。折紙レクチャー後はステージで歌とダンスを披露しました。生徒も何人か一緒に踊ってくれました。「インド人はダンスが好きだからグイグイ来るだろう」と勝手なイメージを持っていたのですが、意外にも進んでステージに立ってくれる子が少なかったです。そういうお年頃なのでしょうか…
ともあれ、試験期間中の彼らが少しでもリフレッシュできた様子で良かったです。彼らの未来が少しでも明るいものである事を願います。美穂さん、皆さまお疲れ様でした。
●感想08
初めてJAGRUTHI訪問に参加しました。施設のある場所はすぐ近くにスラムがあり、子ども達の通う学校はスラムで囲まれているという環境を見て、子どもたちは楽しく生活できているのかと心配になりました。実際に学校を訪れると、生徒たちが元気に体操をしていたり笑顔で活動している様子を見て安心すると同時に、想像していなかった光景に驚きました。子ども達にとって教育の場所は知識や教養を学ぶだけでなく、友人や先生と交流する大切な場所なんだと改めて気づきました。学校の中にはカウンセリングルームがあり、生徒の話を個別に聴く環境がありました。子ども達はそれぞれ複雑な背景を持っていると思うので、個別の対応は必要ですし、そのような環境があることに驚きました。
子ども達との活動ではテーブルごとに分かれて折り紙をしました。参加した生徒達が上の学年の子で、皆さん器用に折り紙をしました。中には難しいものも作ってみたいという生徒もいて、次回参加する機会があれば、もっとたくさんの作り方を覚えて参加しようと思いました。歌やダンスパフォーマンスでは皆さんとても楽しんでいたように思います。今回の訪問を通して、子どもにとって学校というものが本当に大切な場所なのだと思いました。