バンガロールに拠点を持つ日系企業、YASKAWA INDIA(安川電機/ 福岡県北九州市)のCEOの浦川明典氏に声をかけていただき、先日、同社のCSR活動にご同行した。YASKAWA INDIAのバンガロール工場へは、一昨年、ミューズ・クリエイションのメンバーとともに工場見学をさせてもらった経緯がある。
訪問先は、同社が過去7年以上に亘って支援している身体障害者向け教育・職業支援の非営利団体、Samarthanam Trustだ。かつて同団体の系列だった貧困層女性を支援する組織に、ミューズ・チャリティバザールに出店してもらったこともあるなど、既知ではあったものの、実際に郊外の拠点を訪問するのは、今回が初めてだった。
Samarthanam Trustは、自ら視覚障害を持つマハンテュ(Mahantesh G K)氏が、1997年に幼馴染の友人とともに創設した。身体に障害を持つ子供たちが、きちんと教育を受け、職能を身につけ、社会に出て自立できるよう、多角的な支援を実施している。歳月とともに団体の規模は拡大し、その支援内容は時代の流れに即したものに変化しているようだ。
マハンテュ氏はまた、盲目の選手たちによる「ブラインド・クリケット」の組織の創設、振興に尽力されている。
YASKAWA INDIAは、同団体に限らず、女性の職業支援や貧困層の健康維持、環境問題の改善などに貢献するCSR活動を実施されている。今回、Samarthanam Trustへは、「スクール・バス」を寄付され、この日はその「寄贈式」が目的であった。
それに伴い、数十名の同社社員がSamarthanam Trustを訪問。活動内容を見学させてもらうという流れである。部外者のわたしもまた、YASKAWAのポロシャツをいただき、着用。ちなみに浦川氏のご夫人は、元ミューズ・クリエイションのメンバー。数年前に本帰国されているが、折に触れて、インドに来訪されており、今回は久々の再会であった。
わたしはこれまで、バンガロール市内にあるいくつかの身体障害者向けの非営利団体を訪問してきたが、いずれも基本的には「盲学校」「聾学校」「HIV罹患者」といった具合に、障害や疾病の別によって団体が分かれていた。一方、Samarthanam Trustは、あらゆる障害を抱えた人たちを対象にしているという点において、その多様性と対応の濃やかさに、感銘を受けた。
盲目の人向けのオーディオ・ブックを録音するレコーディングルーム、地元企業のBPOを担うコンピュータルーム、テイラーを養成するべくミシンを備えた部屋、さまざまな書籍を揃えた図書館、身体障害者の子どもを持つ両親のための教育施設、音楽の才能がある人たちのためのミュージック・スタジオ、手工芸の講習が行なわれている部屋、盲人向けソフトがインストールされたコンピュータルーム……。
館内のあちこちを、見学させてもらう。枚挙に暇ないほどの多岐に亘るそれら現場では、多くのヴォランティアが指導に関わり、全ての部屋がアクティヴに稼働している。
以前、ミューズ・クリエイションでJYOTHI SEVAという盲目の子供たちの施設を訪問した際、盲人向け音声ソフトがダウンロードされたコンピュータを、巧みに操る学生を見て感じ入った。操るばかりか、本体の蓋を外して、パソコンの不具合を修繕している様子には、驚嘆したものだ。
今回は、よりパワーアップした感じの音声ソフトを使って、その使用法を説明してもらった。アマゾンのサイトを開いてショッピングさえもできる。非常に面白い。デモンストレーションをしてくれた青年曰く、スマートフォンも利用していて、UBERもSWIGGY(フード・デリヴァリーサーヴィス)も日常的に使っているとのこと。
「テクノロジーの進化によって、僕たち身体障害者のライフは、本当に向上しているんです」とのことばに、深く感じ入った。
彼の着ていたピンクと白のギンガムチェックのシャツがかわいかったので、「すてきなシャツですね。よく似合ってますよ」と褒めたところ、とてもうれしそうに微笑んでいた。誰が選んでくれたのだろう。
給食室を見学し、ヴォランティアで配膳を手伝う子どもたちと挨拶をし、並んで食事をする子どもたちと笑顔を交わす。栄養価の高い食事を提供することもまた、同団体の大切な活動の一つである。
壁に掛けられているのは、ヒンドゥー教の女神、アンナプルナ。豊穣と食の神様だ。我が崇めるべきは、アンナプルナ神かもしれないと、絵を眺めながら思う。
別れ際、マハンテュ氏から、贈り物をいただいた。同団体に属する両腕のない少年が、足で描いた水彩画。のびのびと自由に、優しげな風景画だ。
この度の訪問でも、学ぶこと多く、このような機会を提供していただけたことに感謝したい。