本当は一昨日、ミューズ・クリエイションのメンバーやそのご家族と訪問する予定だった慈善団体、NEW ARK MISSION ~HOME OF HOPE~へ、先ほど一人で行ってきた。
先週の金曜日に州政府からCOVID-19にかかる行動制限が発令されたことを受け、やむなくグループでの訪問は断念した。しかし寄付金は、今年度中(3月末)までに託さねばならない。銀行振込ではすませられない大切なものであったがゆえ、足を運んだ。
ミューズ・クリエイションが、在バンガロールの日系企業に、CSRのお手伝いをしますと声を上げ始めて数年。一度でもいいので「現場」を見て欲しく、ミューズ・クリエイションのメンバー以外にも、バンガロールに暮らす日本人に、慈善団体訪問の参加者を募ってきた。
昨年、NEW ARK MISSIONを訪問した際、AMADA INDIAの沖氏が同行された。それが契機となり、同社は150万ルピー(約230万円)もの一部CSR予算をミューズ・クリエイションに託してくださった。
信頼できる、そして資金を必要としている団体を3カ所選出。訪問プランなどもご報告し、本年度(来年3月末)までに実施することにしていた。
すでに2団体へは寄付をすませていたが、100万ルピーを託すNEW ARK MISSIONへはまだだった。最も重要視していた場所にみなで訪れることができなかったのは残念だ。
ミューズ・クリエイションが支援するバンガロールの慈善団体などの情報は、下記のページに記しているので、ぜひ目を通していただければと思う。
http://www.museindia.info/museindia/bangalore-charity.html
路上で死に瀕していた人を、街角に捨てられていた赤ん坊を、記憶を失い彷徨う人を、運び込み、洗い、治療し、食べ物を与え、寝る場所と、死ぬ場所を、提供する。日々、生き死にが巡るここでは、現在、約750人の老若男女が暮らす。
わたしがここを初めて訪れたのは2011年。今日はちょうど10回目の訪問だった。あいにく創始者のラジャは不在だったが、新しく増築された事務所にて、妻と娘が出迎えてくれ、小切手を受け取ってくれた。
とても、喜ばれた。
寄付のお菓子や衣類も託した。子どもたちの棟に、様子を見に行った。
「今日は、みんなは来ないの? 子どもたちは遊びに来てくれるを楽しみにしてるんです」と、グレイシー。
初めて会った時には十代半ばだった彼女は、もう22歳。大人びている。
手足の不具が理由で、ラッセルマーケットに捨てられていた赤ちゃんも、利発な少女に育っている。
顔なじみの子どもたちが、近寄ってくる。
ビスケットを食べたあとのベタベタの手、泥で汚れた手、垢のついた手……。ここは「ばい菌パラダイス」。
しかしいつも、構わずに触れてきた。さもなくば、一緒に遊べない。そして毎回、訪問後、反省会という打ち上げの場所へ赴いたら、まずは手を入念に洗うのが習慣になっている。
しかし、今日は手を伸ばされて、一瞬、怯んだ。新型コロナウイルスと、今、この場に飛び散っているであろうばい菌と、いったいどっちが強烈なのか。
新型コロナウイルスに過敏になって、抗菌が叫ばれる昨今。目の前の光景と世界の動きとの乖離に、脳みそがどう行動すべきか、うまく指令を出せない。彼らにナマステ合掌で挨拶だなんて、通じない。彼らは一緒に遊びたいんだもの。我に返って、いつものように、手に触れ、頭を撫で、「またみんなで来るからね」と言って、別れた。
この週末から、COVID-19の世界的な流行に伴う「人間の在り方」について、あれこれと、とめどなく考え続けている。半世紀あまり生きてきたが、このような経験は、わたしが敢えて言うまでもなく、初めてだ。誰にともなく、書きたいこと、伝えたいことが多すぎて、脳内を整理できないでいる。
どんな状況にあっても、そこに光を、希望を見出せるような心の在り方を。この先に死があるのは、生きとし生けるもの、みな同じ。
わたしたちの家もまた、HOME OF HOPE。希望の家であり続けるように、前向きに。
夏を迎えるバンガロールの、車窓から情景を眺める。なんて美しい空だろう。緑だろう。花々だろう。
生命力に満ちた、地球の美しい光景を、見つめ、享受し、ありがたく生きたいと、切に思う。
* * *
「二十億光年の孤独」(1952年/谷川俊太郎)
人類は小さな球の上で
眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間を欲しがったりする
火星人は小さな球の上で
何をしてるか 僕は知らない
(或はネリリし キルルし ハララしているか)
しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする
それはまったくたしかなことだ
万有引力とは
ひき合う孤独の力である
宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめ合う
宇宙はどんどん膨んでゆく
それ故みんなは不安である
二十億光年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした
* * *
……今はうかうか、くしゃみさえ、していられないのだ。目に見えぬ国境が、四方八方に張り巡らされて、母国にさえ、自由に飛べない。