夫のビジネスフレンドのご夫人ニーシャが、神戸で生まれ育ったということで、動画を撮って送ってくれていた。4分足らずの短い動画の中にも、ジャイナ教徒の一族であるニーシャのコミュニティの様子、日本で唯一のジャイナ教寺院を設立されたことなどに言及されていて興味深い。
ニーシャの友人プージャは、日本在住時に食べていた豆腐の味を忘れられず、ムンバイで豆腐ビジネスを始めたという。彼女のブランドの豆腐を食べてみたい。ムンバイ在住の方は、ぜひお試しを。
ところで、海外では認知度が低いジャイナ教。紀元前6世紀ごろ、仏教と同時期に、東インドで誕生した。ジャイナ教は徹底した不殺生(アヒンサー)を教義とし、遍く「生き物」を尊重。害虫さえも殺すことを厭う。「野菜を掘り起こす際、土壌中の虫を殺す可能性がある」ことに加え、「根は、野菜の命の源である」という理由から、玉ねぎや人参、芋などの根菜類も食べない。食べないから質素な食生活かといえば、そうではなく、限られた食材を大切に、自然の恵みに敬意を払いながら丁寧に調理し、食する文化がある。むしろ手間をかけているように思う。豆料理など、わたしも何度か食べたことがあるが、滋味があり、とてもおいしかった。
土を耕すことを忌避する宗教的背景から、ジャイナ教徒には、商人や金融者が多い。信者数は極めて少ないながらも、一定した社会的地位を保つコミュニティである。
土を耕さないという点においては、ラマ教を信仰してきたモンゴル遊牧民も似ているかもしれない。大地を崇め、鍬を入れることを忌避してきた彼らは、羊肉や乳製品(ヴァラエティ豊かなチーズなど)でさまざまな栄養素を摂取してきた。ソ連による社会主義管理下に置かれていた時代に、農耕が進められたと記憶しているが……。
これは1992年、北京から国際列車で36時間かけてウランバートルまで赴き、モンゴルを「無謀ひとり旅」した時の記憶につき、事実誤認があるかもしれない。あの旅は、途中で消えててもおかしくない旅だった。話が逸れた。
ともあれ、こういう話を思い返すつけ、昨今「乳製品はダメだ」「小麦粉は避けるべし」「砂糖は百害あって一利なし」といった情報を目にするにつけ、人類がその土地土地で育んできた食文化を否定する気かと言いたくなる。欧州からパスタやピザやパンやチーズやスイーツを奪ったらどうなる?
ちなみにバンガロール郊外には、ジャイナ教の聖地シュラヴァナベルゴラ(Shravanabelagola)があり、全長17メートルの巨大なゴマテーシュワラ(Gomateshvara)の完全裸像が屹立している。ゴマテーシュワラとは、ジャイナ初代祖師の息子であり聖人のひとり。彼は直立不動の姿勢で何年間も修行を続けたため、脚には蔦がからみ、足元にはアリ塚ができたという。
その伝説通りの姿を象徴したその像は、今から1000年以上前の西暦981年に建立された。バンガロールから近いにも関わらず、わたしはまだ訪れたことはない。インドは広く、未踏の地の多いこと!