今回、Clubhouseのニューヨーク関連の部屋で、わたしが暑苦しくインドの現状を語っているのを、たまたまお聞きだった旅行ジャーナリスト&フォトグラファーのシカマアキさんから取材依頼を受け、上記タイトルの記事が世に出た。シカマさんは、わたしの意向をご理解のうえ、真摯に取材をしてくださった。
先日も記したが、日本からの不躾で雑な取材依頼には辟易しており、取材を受けることに対しての警戒心があった。さらには「FRIDAY」という媒体に対しても、正直なところ抵抗があった。しかし、シカマさんが過去記した記事を拝読し、入稿前に原稿を確認させてもらえることも了承していただいたので、お受けした。
海外取材経験は豊かでいらっしゃるが、インドは未踏とのことだったので、「あらかじめ見てほしい」とお願いし、昨年作っていたインドのライフスタイルセミナーのYoutube動画リンクを送った。インドのバックグラウンドや、昨年のCOVID-19の状況など、取材前に知っていただくに越したことはない。お忙しいであろうところ、数日でご覧になり、そのうえでのZOOMによる取材となった。
結果、わたしの思いが伝わった記事となって世に流れたことを嬉しく思う。公開された一昨日から昨日にかけては、インドに住む、あるいはインド在住経験のある日本人の友人知人からも、共感のメッセージを何通か受け取った。わたしだけの印象ではないということが再認識できて、心丈夫にも思った。ともあれ、ぜひお読みいただければと思う。
✏️コロナ感染爆発インド「報道で見えない真実」を在住ライターに聞く
➡︎https://friday.kodansha.co.jp/article/180705
* * *
わたしは、ニューヨークで出会ったインド人と結婚、自らの意思でインド移住を目指した果てに、現在ここにいる。だからといって「インドが大好きで住みにきた」という立ち位置ではない。
当然ながら、どの国にもいい面、悪い面がある。少なくともわたし個人にとって、日本よりも米国よりも、このバンガロールに暮らすのが一番、心地よく楽しく幸せだという個人的な嗜好の結果、ここにいる。
故に、ライターという立場にあっては、少なくとも情報発信をする際には、意識的に、バランスよく物事を見つめようと努力をしている。この広大無辺の多様性の国を前にしては、学ぶこと尽きず、多分、死ぬまで「新たな発見」の連続だとも思っている。
しかし、このインド感染拡大を受けての、諸外国における報道の偏りっぷりには、日々、辟易していた。報道にある側面も確かに事実だ。しかし、その悲劇への偏りは、なんなのだ?
日々地味にソーシャルメディアで発信するに飽き足らず、Clubhouseでもインドを語ってきた。その結果、こうして記事に至る出会いを得られたことを幸運に思う。わたし自身がライターであり編集者だという立場ゆえ、取材相手から原稿の内容を云々言われることが、心地いいことではないことは、重々承知している。そしてそれが「一般的ではない」ということも理解している。
しかし、「事実が曲げられて伝えられている」無数の記事を目にしてきた以上、少なくとも「わたし自身のコメントの部分」だけは、意図しない表現に変わることを恐れた。そのあたりの意図も汲んでいただき、配信の数時間前、更に編集側の手が入ったオンライン原稿をチェックさせてもらえた。その段階で、どうしても譲歩できない修正が入っていることに気づいた。
読者の目を引きつける言葉に変えられていたそれは、記事全体を「読ませるため」の手段だということはわかる。その上で、こちらも決して譲れない旨、シカマさんに伝え、編集が変更してくれた。無理をお願いしたが、安心した。
「報道の目的」とは、なんだろうと、このごろはしばしば、考える。
将来、同じ失敗を繰り返さないために、戦争や戦闘の悲劇を伝える。その教訓は、「未来への希望に結び付いてこそ、意義がある」と、わたしは思う。しかし今、世にあふれる情報の多くは、ネガティヴを誇張し、楽観より悲観へ、希望より絶望へ、人々の心を導いているように思えてならない。暗闇の中の光、絶望の中の希望の存在に、子どもたちが気付けるよう、大人は指南すべきではないか?
さもなくば、子どもたちは未来をどう生きる?
もしもわたしの言葉に、共感を覚えてくれる人がいるならば、ぜひ、ロベルト・ベニーニ監督/主演の『ライフ・イズ・ビューティフル (La vita è bella)』(1997)というイタリア映画を、見て欲しい。ナチスの強制収容所に送られた父と息子。父親の「機知」から生まれた「嘘」によって、息子は希望を失うことなく生き延びることができた。
悲劇的な事実を伝えることばかりが、「あるべき姿」ではないのだ。
【インド発、世界】 🇮🇳🇯🇵 インドにおける新型コロナウイルス感染症の現状と背景(2020年6月1日)
1. 自己紹介
2. 多様性の国家インドの実態
3. インドにおけるCOVID-19を巡る出来事と現在
★この動画は、2020年6月3日、坂田マルハン美穂が個人のYoutubeチャンネルで公開したものを転載しています。
異国からの情報は偏りがち。多様性の国、インドの実態は、他のどの国よりも、その傾向が強い。今、世界的に大きなテーマとなっている新型コロナウイルス感染症の実態にしても然り。この国に住んでいてなお、全国の状況を遍く理解するのは不可能だが、ここではできる限り、バランスのとれたレポートを心がけた。
冒頭に自己紹介を入れたのは、情報発信をする人物の「視点」を、あらかじめ知っていただくためである。また、インドの多様性についての具体例を紹介しているのは、この国を「一つの国」として捉えることが、どれほど困難かということを、理解してもらうためだ。
伝えたいことは尽きぬが、2020年6月1日現在、わたしが感じるところを、1時間の動画に凝縮した。インドに関わり合いのある方はもちろん、関心のない方にも、どうかこの国の実態を知ってほしいと思う。最後まで視聴していただければ幸いだ。
●この資料は、わが母校である梅光学院大学(旧梅光女学院大学)の樋口学長からの依頼を受け、「異文化間コミュニケーション」のオンライン授業(2020年5月23日)にて使用すべく作成した。インドにおける「COVID-19/ 新型コロナウイルス感染症」を巡る実情をレポートするものである。
●ここではインドにおけるCOVID-19を巡っての政府や国民の動向について、その「ごく一部」を取り上げて紹介している。あくまでも「医療の専門家ではない」坂田個人の視点により、情報の取捨選択がなされている。
● COVID-19を巡る状況は、地球規模で刻一刻と変化しており、誰一人として未来を的確に予測できない。また同じ現象を取り上げていても、情報収集先、あるいは読み手の理解度や予備知識、考え方やその方向性によって、異なる印象を紡ぐ。ここでは、できる限り、イデオロギーに偏らない、なるたけ客観的な立場から資料を整理したいと心がけた。