◎今日の記録もまた長いが、どうか最後まで目を通してほしい。どんなに言葉を尽くしても。どれほど文字を重ねても。百聞は一見にしかず。それでも、綴り伝えたい。
◎8月下旬、ニューアーク・ミッション (New Ark Mission, Home of Hope)を訪れた際、同団体が未曾有の危機的な状況に陥っていることは記した。理不尽な事情で、今年に入り、海外の篤志家からの送金を受け取れない状況が続いている。結果、毎月必要な額の3割程度しか得られておらず、すでに数カ月前、土地を「切り売り」して、当面の経費を捻出した。しかし、それも尽きかけているとのことだった。
◎800名近い人たちの、せめて食費だけでも、工面できないものか。わたしは、寄付を募るべく早急に資料を作り、各方面にシェアした。夫も協力してくれた。結果、夫が属しているサットサンの仲間たちに、現場を見てもらうことになった。ミューズ・クリエイションからも1家族が参加してくれた。ちなみに「サットサン」とは、サンスクリット語で「真実を探求する仲間」という意味。仏教用語の「サンガ」とも相通じる。
◎いつものように、創始者のRajaのオフィスで、ニューアーク・ミッションの活動を伝える動画を見る。衝撃的なシーンが多いため、Youtubeにアップロードできない。動画を見たあと、Rajaが語る。そしてわたしは、彼の活動の歴史を語る。Rajaがこれまで話してくれたこと、自分では言いにくいであろう、彼の献身と慈愛についても。
◉「普通、4、5人の家族のことを考えるだけでも、たいへんなのに。僕は800人もの家族のことを考えなければならない。時々、うわ〜っと叫びたくなる」と、彼は言った。それまでは笑顔だった彼が、一瞬、黙り込み、「本当の気持ちを話す」と、語り始めた。奇しくも、わたしたちが訪れる数時間前に、2度目の土地の売却をすませたという。
◉「昨夜、僕は家族と一緒に泣いたんです。27年間で、こんなに辛いことは初めてです。どうしていいかわからず、頭の中がうわ〜っとなって、発作的に、目の前にあるナイフで、自分の太ももを刺しました。深く突き刺さってしまいました」……涙をこらえる彼を、サットサンのグルが優しく抱擁した。そして、自分がしていた大切なお守りの数珠を、Rajaの首にかけた。
◎「なんてことをするの。自分を傷つけるなんて。みんなも心配するでしょう……」などという自分の言葉が、軽く虚しい。笑ったり、泣いたり、諭したり、苦しんだり、感情がとっ散らかって収集がつかない。
◎Rajaが救い続けている人の多くは、路傍で死にかけている人たちだ。治療費を払えぬ彼らを受け入れる病院はない。警察からも押し付けられる。飢えてやせ細り、正気を失っている人……。身体のどこかが、著しく腐敗している人や、傷口が広がって爛れている人や、身体中に蛆虫が這い回っている人や、性別不詳で糞尿まみれ倒れている人……。
◎今際の際(いまわのきわ)を彷徨っている人たちは、すさまじい悪臭を放ちながら、息絶えることもできずに打ち捨てられている。そんな人らを、Rajaは「素手で」抱え上げ、自らの経験で身につけた「医療法」や「治療法」で救い続けてきた。
◎Rajaには、毎日のように、救済依頼の連絡が来る。バンガロールだけではない。隣の州までも、何十キロ、いや何百キロ離れたところまでも、彼は行く。今でこそ、救急車があるが、以前は自らバイクに乗って、引き取りに行っていた。
◎彼の活動の歴史の、ごく断片を捉えた動画を、Googleドライヴにアップロードした。見るに堪え難いが、しかし、見てほしいと思う。Rajaの行いのすさまじさと、人間の生命力と慈愛の奇跡に、驚嘆させられる。
https://drive.google.com/file/d/1PCukIeySXL8wU-nJR4RhhamSlJXUdGsR/view?usp=sharing
◎「金銭」にとらわれている人は、人の行いをして、すぐに金銭目当てではないかと疑う。Rajaはそのことでも、これまで随分、苦しめられてきた。彼がやってることを、誰ができる? お金をもらえばできるのか? 彼の中傷を無責任に流す輩の首根っこを捕まえて、椅子に座らせ、上の動画をじっくりと見せながら、問い正したい。1日でも、やってみ!
◎人間の目的は、「金銭」であってはならない。「金銭」は目的を遂行するためのあくまでも「手段」だ。「宝くじが当たったら、何に使おうかな」ではない。「〇〇をしたいから、宝くじが当たったらいいな」である。両者は似ているようで、全く異なる。無論、現在の資本主義世界では、「はじめに金銭ありき」が横行していて、人々は理想を見失いがちだ。「金銭」は理想にはなり得ないのに。「手段」でしかないのに。
◎この日もいつものように、館内を見学した。キッチンには食材が潤沢にあって、少し安心した。先の補償はないにせよ、今日、食べるものはある。最近完成したばかりの病室。今日は初めて、男性の病棟にも訪れた。みな異口同音に、救済されたことを感謝していた。
◎毎日誰かが死んで、誰かが運ばれてくる。誰のもとにも、尊厳ある死を。それが、Rajaの願いだ。身体を清め、心地よい場所で。最後の晩餐に、ピザを食べたい、コーラを飲んでみたい、そういう人もいるという。そんな人らの願いも、Rajaは叶えてあげる。
◎土曜の午後だったこともあり、子供たちもいた。久しぶりに会う顔馴染みの子ら。みんな元気だ。いつものように、ヤクルトを配る。一緒に飲む。「また踊ろう!」「今度はいつ来てくれるの?」と子供たち。近々また参加者を募って、遊びに行こう。
◉午後3時に集合して、館内を巡ったり、ひたすら話をしたりしているうちに、太陽は翳り始めていた。帰り際、Rajaの奥さんに会った。「本当にたいへんですね。わたしもできる限りのサポートをします。Rajaの太ももの傷が心配です……」と伝える。と、彼女は泣き笑いのような表情で言う。
「昨夜は、みんなで泣いたの。だけど男は、弱いわね。女は、あんなふうにはならないわ!」。ラジャをしのぐ、たくましさ。妻の協力と理解なくして、ラジャの活動、ニューアーク・ミッションはあり得ないと再確認する思いだ。
返す言葉に窮しているわたしに、彼女は続けた。「仕方ないのよ。わたしは、彼のことを、とても愛しているから」
◉今日、サットサンのグルは、WhatsAppにて、ニューアーク・ミッションの支援グループを立ち上げてくれた。多彩なバックグラウンドの、国内外、50名を超える人々が賛同。未来を見据えた支援の仕組みを構築し始めてくれた。よかった。
◉訪問を希望される方。個人、企業を問わず、ぜひご連絡をください。CSRのご相談も、前のめりでお受けします。
💝ニューアーク・ミッションへの支援をご検討の方は、どうぞ以下の記録をご覧ください。
🇯🇵🙏インドに関わる友人知人、フォロワー各位へ。バンガロールの慈善団体、ニューアーク・ミッションへ寄付のお願い
💝NEW ARK MISSION/過去の訪問記録。参加者の感想も、毎回載せている。
🇯🇵必見! CSR/ AMADA (INDIA) 日系企業の社会貢献活動をミューズ・クリエイションがお手伝い