朝、チューリヒ空港をたち、あっというまにフランスのご近所、ジュネーヴに到着。空港から町までは、ひと駅の移動なので、列車に乗り込む。ホテルは駅のすぐ目の前。とても便利なロケーションである。
ホテルの部屋からは、レマン湖の大噴水が眺められ、その向こうには雪をいただいた山並みも見渡せる。
今日もまた抜群によい天気で、空気は澄み渡り、本当に気持ちがよい。
さて、アルヴィンドはジュネーヴで知り合いと会う約束がいくつかある。
本当はジュネーヴに1泊の予定だったが、時間の調整が難しいのに加え、毎日移動するのも疲れるとの判断から、2泊することにした。
従ってはローザンヌに立ち寄らず、明後日はレマン湖の東端にあるモントレーまで、直接列車で足を延ばすことになる。
軽くサンドイッチでも、と思っていたのだが、大通りにはマクドナルドやフランス的ステーキ&フレンチフライの店などしか見つからず。
お腹は空いたし、探すのが面倒で、ついつい「観光客向け」な店に入ってしまう。
今日のおすすめ定食を頼んだら、たいへんなヴォリューム。
ポークピカタとスパゲティ。
イタリア人が食べたらテーブルをひっくり返しそうな、のびのび柔らかスパゲティ。まあ、それはそれで、食べられないわけではないが、おいしいわけではない。
旅の途中、お腹が空くと判断力が鈍り、ついうっかり「やばいかも」という店に引き込まれてしまう、これがよい例である。
食事の後、アルヴィンドは打ち合わせに。わたしはその間、街を散策する。
高級時計や高級ブランドのブティックが軒を連ねるあたり。
それにしても、腕時計。
腕がいくつあっても足りないのではないか、と思うくらいに腕時計。
この、無数の、しかも何百万円もする過激に高級な腕時計の存在とは、いったいなんなのだろう。
時間を知るための道具、という存在感を遥かに超越している。
存在の耐えられない重さ。
あれこれと見ているうちに、なにがなんだかよくわからなくなってくる。
さて、本日の夕食。ホテルの近くにあるイタリアン、Nologoという店。店の雰囲気もよいが、料理が格別だった。あまり期待をせずに訪れたのだが、先客が食べている料理のおいしそうな様子に期待が膨らむ。
ハウスワインがイタリアのモンテプルチャーノ、と言うだけで、幸せな気分である。
更には、パンに緑色が強いヴァージンオリーヴオイルを浸して食べるだけで、より幸せな気分である。
それに加えて、料理。
アカザエビ(手長エビ)のリゾットとイカスミのパスタ(リングイニ)を注文。
リゾットはオレンジの風味にアーモンドのスライスが加えられ、何とも爽やかな風味で、エビとの相性も抜群である。
リングイニもまた、イカの風味がよく、トマトの酸味もほどよく、旨味が凝縮されていて、本当においしい。
実は夕食前、アルヴィンドと内乱を起こしたため(旅行中は交流の濃度が高いため内乱が頻発する)、仏頂面だったのだが、おいしいものを前にして、ついつい笑顔がこぼれてしまう。
更には店主がやってきて、「お味はいかがですか?」と挨拶をしてくれる。
二人とも満面の笑顔で「すばらしいです!」と答える。
店主のふるさとはチュニジアなのだとか。
「チュニジアでは、オレンジは鎮静作用があると言われています。オレンジを口にすると、心が落ち着くんですよ。今夜お二人は、きっとゆっくり眠れると思いますよ」
とのことである。内乱のことを見抜かれているようでもある。
そういえば、以前チュニジアを訪れた知人から、彼の地の料理はイタリア料理にもよく似ていて、非常においしいと聞いていた。
料理だけでなく、景観のすばらしさもまた。いつかチュニジアを訪れてみたいものだ。