長らくシンガポールに滞在していた義父ロメイシュと義継母ウマは、数日前にデリーに戻って来たようだ。彼らの話を聞いていると、ムンバイの「蒸し暑」ごときで文句をいっていてはいかんな、と思う。
デリーはなにしろ、「アラフォー」である。最高気温がアラウンド摂氏40度なのだ。今日は40度を超えていたらしい。激暑らしい。一方、ムンバイはこのところ「アラサー」なので、湿度が高いとはいえ、ましなのかもしれない。
今日は夕刻より、ウェリンドン・クラブへ。夫がプールで泳ぎたいというので出かけたのだが、夏日の週末とあってプールは家族連れであふれかえっている。
子どもスープ。
という言葉がひらめくほどに、子どものだしがよ〜く出たスープ、いやプールである。
「だめだ。今は泳げない。子どもがいなくなる7時まで、待つ」
とのことで、ラウンジでココナツジュースを飲んだり、ライブラリーで読書をしたりして過ごす。
それにしても、だ。インドの子供たち体型の、きれいなことといったら。子どもなのに八頭身。男女を問わず手足が長く、艶やかな褐色の肌がまた、美しい。同じ人間とは思えない。
なのに大人になると、ぶくぶくと太ってしまい、その短い胴体にたっぷりと脂肪をたくわえ、布袋のような体型となってしまう。もったいない限りだ。
今やガネイシャ体型のマイハニーも、子どものころの写真を見ると足が長くて美しい体型だ。
今だって、生まれついての「ハイレグ」を偲ぶことができる。
足の付け根の角度が違うのだ。
日本人の場合、足の付け根がほぼ水平だが、インド人の場合は、ハイレグ水着を着たりせずとも、最初からV字型に切れ上がった美しい足の付け根、なのである。
見せてあげたいくらいだ。
見たくないだろうけれど。
そんなことはさておき、7時から8時近くまで夫は泳ぎ、わたしはライブラリーで過ごし、帰路、おなじみのチャイニーズ、Ling's Pavilionで夕食をとり、平和な一日であった。
ところで、新しいメイドのヨギータ。初日からたいへん好印象。なんだかよくわからないが、ジャヤよりも、むしろいいかも。な状況だ。
「家事に慣れている」という感じで、細かなところに目が行き届いている。お茶やジュースの入れ方も上手。英語もうまいからコミュニケーションが取り易い。
むしろ、「事態は好転」である。神様ありがとうございます、という感じである。
『スラムドッグ・ミリオネア』がなぜあそこまで、アカデミー賞で好評を博したのか、理由がようやくわかってきた。確かにあの映画はよかったけれど、それよりも、他の映画の大半が「暗すぎる」「重すぎる」のだ。
だからこそ、あの、いろいろあったけど最後には、能天気な感じでハッピーエンドな映画が好評だったのかもしれない。
各部門のノミネート作の中から、これまでいくつか見たけれど(途中で見るのをやめたものも含む)、重いものが多かった。実世界が不景気なんだから、もうちょっと明るい話題が欲しいだろう世間は、とさえ思ってしまう。
●Milk ミルク
男優二人のキスシーンが多すぎる気がして、だんだん辛くなって来て、途中で見るのをやめた。
●The Reader 愛を読むひと
いい映画だと思うが、重い。前半、ケイト・ウィンスレットがヌードになり過ぎ。あまりも個性的な乳首に気を取られてしまう。アルヴィンドが一時停止して巻き戻して見直す始末。従っては一時、関心が話の本筋からずれてしまう。
●The Dark Knight ダークナイト
ムンバイのテロの直後にDVDを借りたが、現実の事件で沈み込んでいる上に、映画で銃の乱射を見るのが辛くて、途中でやめてしまった。
●Doubt ダウト~あるカトリック学校で~
重い。フィリップ・シーモア・ホフマンは、『カポーティ』以来、冷血でミステリアスな感じの演技が巧みだな、と思うけれど。『Before the Devil Knows You're Dead その土曜日、7時58分 』も、重かったなあ。
●Changeling チェンジリング
アンジェリーナ・ジョリーのわなわなとした泣き顔ばかりが出て来て辛い。目と口が大きくて、怖い。ピカソの『泣く女』を思い出させる。ということはすでに書いたが。
●Rachel Getting Married レイチェルの結婚
冒頭から、楽しくない世界。アン・ハサウェイの転身ぶりは見事なのかもしれないが、でも。昔なら興味を持ってみられたであろう映画が、このごろは、見続けられない。最後まで見ていないから、なんとも言えない。
●Revolutionary Road レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで
機内で、途中から見た。途中から見ただけだが、重い愛のムード満点。なんでそうなるの? なにもそんな形で燃え尽きなくても、という結末で、たまらん。
●The Wrestler レスラー
痛い。流血が痛すぎる。ミッキー・ロークの体当たりな演技には敬服するけれど。44歳にしてヌードダンサーをやったマリサ・トメイの引き締まった美しいボディには見入ってしまったけれど。
●Vicky Cristina Barcelona それでも恋するバルセロナ
楽しかったけど、ウディ・アレンだけど、でも、なんだかなあ。
……と、時間をおいたらもう、まともな感想すら思い浮かばない。各映画ファンには申し訳ないが、どれもこれも、インパクトが弱かった。
インドに暮らし始めて、わたしは映画に対する感じ方が著しく変化した。そのことを冷静に分析する気力がないので、今日はこのへんにしておく。