11月のムンバイ。11月感ゼロのムンバイ。相変わらず暑い。しかし空気が軽く、そよそよと吹く風も心地よい。いつもは人々が行き交うご近所の通りが、数日前の一瞬、静かだった。上の写真がそれである。
人通りが途絶えると、緑が際立つ。こんなに鬱蒼と茂っていたか、としみじみ思わされるほどに。
さて、ここ数日の、写真が残っている事柄について、綴っておこう。
■バンガロール宅:ブルー・モルモンという名の蝶。
バンガロール宅の庭に、しばしば訪れる蝶である。以前写真を載せた(←文字をクリック)ところ、蝶に詳しい日本の友人から「珍しい蝶だ」と教わった。
そのときに「天竺揚羽」という名前だということも知った。
しかし、インドでは普通に飛んでいるのだろうと思っていた。
どうやらインドでも、結構、珍しい蝶であるらしい。
インドで二番目に大きいらしい。
Blue Mormonという名前らしい。
そう。写真だと白く見える部分が、実際には光の加減で、淡く優しいブルーに見えるのだ。
それはまた、銀色に輝いているようにさえも、見える。
珍しい蝶が、さりげなく、庭に飛んでくる環境。
幸せなことである。
いつまでもバンガロールの緑が守られて、我が庭に蝶が舞い飛ぶ環境が維持されてほしいものだと願う。
■バンガロール宅:ハトが産卵。卵、温めてます。
毎朝、野鳥のさえずりで目覚めるバンガロールとは趣を異にし、カラスがけたたましく吠える(鳴くというより吠える)ムンバイ宅。厚かましくも窓辺にとまり、油断すると内側を覗き込む。
窓辺に向かって「コルァァァ〜!」と威嚇しなければ、出て行かない。図太い。
ハトに至っては、たまに室内に入って来たりするから呆れたものだ。危機感ゼロである。
その危機感ゼロなハトが、我が家の冷房の室外機付近に巣を作って産卵していた。
バルコニーなどがあれば、事態は由々しきことになりそうだが、幸い、ない。
洗濯物は乾燥機を用いるか室内で干すので、汚される心配もない。
従っては、放置している。
それにしても、だ。
現在、日中の最高気温が35度を超えるムンバイ。
室外機と外壁の間という熱気がこもりそうな場所である。40度はいくのではないか。卵を温める必要はないんじゃなかろうか。むしろ風を送った方がいいのではなかろうか。
余計な心配をしつつ、孵化するのをさりげなく楽しみにしている。
■今度はリンゴとレーズンを入れて焼いてみた。パン。
またしても、パンを焼いた。菓子を焼くと、食べねばならない。二人で食べると、デブが加速する。従っては、しばしば作るべきものではない。
その点、パンは主食である。毎日食べてもいいものである。となると、焼いて問題ない。ということに、今更ながら、気がついた。
発酵させる時間待ちが、若干不便だが、家にいる時間が長い日には、問題ない。粉を混ぜて捏ねるのに20分ほど。形を整えるのに10分ほど。実質かかる時間は短い。
ただ、焼き加減、味わい、その他にこだわり始めれば、簡単とも言ってはいられないのだが、わたしたち二人が「おいしい!」と言って食べられている限りにおいて、満足である。
今回は、リンゴのスライスを砂糖で軽く煮たものとレーズンを生地に巻き込んで、またしても型に入れて焼いた。
もうちょっとふんわりさせたかったが、詰め込んだせいか、どっしりとした仕上がりとなった。型にいれず、シナモンロールのようにふわっと巻いて、ひとつひとつを離して焼いた方がよかったかもしれない。
ともあれ、それなりに、おいしく焼けた。リンゴとレーズンのほんのりの甘み。これにプロシュートを挟んでサンドイッチにして食べてみた。甘みと塩味が調和して、おいしかった。
■北ムンバイで過ごす一日。
本日、Mumbai Connexion(ムンバイ在住の外国人女性のためのクラブ)が主催するチャリティを目的としたクラフトセールを訪れるべく、北ムンバイへ足をのばした。
南ムンバイにある我が家からは、距離にすれば20数キロという近さなのだが、渋滞その他で、かつては軽く1時間半を超えていた。
しかし、数カ月前にシーリンクと呼ばれる橋が完成して以来、1時間程度で行けるようになり、行き来がずいぶんと楽になった。
クラフトセールでは、手工芸品のほか、食品や古書などが売られていた。
さほど規模の大きなものではなく、品数も少なく、もっとヴォランティアの支援が必要に違いないと思わされた。
北ムンバイに暮らしていれば、いや、せめて一カ所に定住していれば、わたしも微力ながら手伝えたのだが、ただ買い求めにだけ行ったのは、我ながら少々残念ではあった。
ともあれ、ケララ産のコーヒー豆や粒胡椒、クリスマスツリーのためのオーナメントなどを購入した。
久々にユカコさんとランチである。
このホテルのダイニングは、吹き抜けの開放感がなんとも心地いい。
ランチブッフェの料理も華やかで、コンチネンタル&インド料理を、少しずつあれこれと味わう。
気がつけば、午後4時。
ドライヴァーを呼ぼうと電話をしたところ、なんと南ムンバイの自宅にいるという。
夫にドライヴァーをジュフに送るよう頼んでおいたのだが、連絡不行き届きである。
ムンバイの市井を走るタクシーは問題が多く、長距離ライドは辛いのだが、幸い冷房の利くタクシーがホテル前から出ていて、料金交渉の上、無事に自宅に到着した。
やれやれ、とアパートメントの玄関前に立ち、バッグから鍵を出そうとする。
出そうとする。
出そうとする。
が、ない。
ガガガガガ〜リン!
鍵を家に忘れてきた!
しかも、こんなときに限ってトイレに行きたい。
人生、往々にして、そういうものである。
ご近所、徒歩3分の場所にあるホテル、タージ・プレジデントに直行する。
ありがとう、タージ・プレジデント。
取り敢えず、難を逃れたものの、鍵がない。夫は打ち合わせに出ている。電話をかけたところ、
「20分後には帰るから、待ってて」
と言う。しかし、所詮はインド人である。20分後に帰ってくるはずがあろうか。あるわけがない。
結局、タージ・プレジデントのロビーで1時間ほど待った末、ようやく自宅に戻れたのだった。
やれやれやれ。
ともあれ、ありがとう、タージ・プレジデント。