バンガロールに戻って以来、瞬く間に数日が過ぎた。早くも12月は後半。2010年がやってくる。先週の木曜日にムンバイから運び出した荷物のうち、バンガロール宅への配達分が、予定よりも「数日早く到着」したとの電話が入った。昨日のことである。
数日早い。
インドにしては、ありえない展開である。落とし穴がありそうである。つい構えてしまう悲しい性だ。ともあれ、「明日の11時に配達に伺います」とのことであったので、期待せずに待つことにした。一日中、家でデスクワークの予定だったからちょうどよかった。
インドで11時と言えば、それは11時半過ぎを意味する。10時半をさしている時計を見ながら、「あと1時間はあるな。ひと仕事しよう」とコーヒーを入れ直して2階に上がるや否や、「ピンポ〜ン!」とベルが鳴る。10時35分。引っ越し屋の到来。遅れるどころか25分も早い! まさかの展開だ。
おじさん&おにいさんたちはテキパキと、22個の段ボール箱を運び入れ(少しだと思っていたが、たくさんになってしまったよくあること)、開封し、内容物をキッチン、書斎、ベッドルームへと、指示に従って運んでくれる。
作業は1時間ほどで完了!
あとはわたしが仕分けをして、クローゼットに収納するなどせねばならないが、それは引っ越し業者とは関係のない話で、つまりはたいそう見事に仕事を終えてくれたのだった。
速やかにことが運びすぎると、なにかあるのではないか? と疑り深くなってしまう自分がいや。物足りなさすら覚えて、なにやら「不完全燃焼」な気分すら、する。が、これでいいのだ。もう終わったのだ。
ところで月曜日、夫と二人でバンガロール郊外にあるアーユルヴェーダグラムというアーユルヴェーダの施設へ赴いた。その詳細は、「別人格ブログ」改め、「きれいごとブログ」に記しているが、こちらにも一応書いておく。
旅の多い我々。年末くらいはゆっくりと飛行機に乗らない時間を過ごしたい。夫はモルディヴはどうかという。しかしわたしは、前々から行きたいと思っていたアーユルヴェーダグラムでの「合宿」を提案したのだった。
わたしは、多少の問題はあれど、押し並べて健康体だが、夫は遺伝性疾患を含め、各種成人病の予備軍でもある。特にインド人に多い高脂血症をはじめ、高血圧、肥満など気になるところが多い。
毎朝ヨガをやっているものの、体質が改善される兆しはなく、ここは抜本的な体質改善が必要だと思われる。従っては、夫にアーユルヴェーダ道場での修行を提案したのが、案の定、「いやだ」との答えが帰ってきた。
せめて1日体験をして決めようと誘い、訪れ、結果的に1週間(7泊8日)の滞在を決定した。いや、夫はまだ、「迷い」があるようだが、ともあれ現時点では決定だ。
ヨガ、アーユルヴェーダのトリートメント、朝食、問診、呼吸法、ランチ、瞑想、トリートメント……といったことを繰り返すばかりの日々である。宿泊施設もリゾート的と言えなくもないが、基本、質素である。
「こんな南インドのヴェジタリアン料理を毎日食べてたら気が狂う!」
「男からオイルマッサージをされるのはいや! キモチワル!」
「ベッドのスプリングが寝心地悪い!」
「退屈すぎる!」
などと、ネガティヴなコメントを連発していたが、ドクターの親身且つ丁寧なコンサルテーションに感銘を受けたのか、完全には否定しない。更には、海外からのリピーターな来訪者(7割が海外からのゲスト)との会話で、滞在を勧められ、やや前向きな様子である。
そこを狙って、妻は説得。最終的には12月23日から30日にかけてを、ここで過ごすことにしたのだった。わが人生で一番の、地味でストイックなクリスマスである。酒なし、肉なし、娯楽なし。考えられん。
そもそも、8日間もヴェジタリアン食だけを摂取するなど、これまでの人生、なかった。尤も、ヴェジタリアン食だからといって、痩せるわけではない。インド人のヴェジタリアンで肥満者が多いのを見ればよくわかるが、ヴェジタリアンでも、油脂や炭水化物を取りすぎれば、太るのである。
とはいえ、できれば贅肉を落としてきたい。心身ともに、すっきりとしたいものである。
多分、時間を持て余すだろうから、書物やお絵描き道具などを持って行こうと思う。冬のある国だったら編み物でもしたいところだが、編んだところで使う機会がないから却下だ。
なお、パブリックスペースでインターネットは接続できるらしいので、もし可能であれば日々の様子をレポートしようとは思う。
アルヴィンドが途中で帰ると言い出さないことを祈るばかりである。
バンガロール・ハッバの一環として、アートスクールで開催されているクラフトフェアにて撮影した。
毎年、同じようなものが展示されているので、驚くほどの発見はないのだが、しかし、そのときどきで「これ、いいかも」と思うものに出合う。
そういう小さなものを、少しずつ、買う。しかも、安い。
この件についても、「きれいごとブログ」に記しているので、読んでいただければと思う。
思えば、こちらの読者を増やしたいがための新ブログの開設だった気がするが、なんだか流れが逆転している。が、細かいことは、気にすまい。
ところで、ここ数カ月のバンガロール「日本人界」は、別れと出会いの季節のようである。数日前、友人マダムのお別れ会ランチに招かれた。
前日に、主催者から「おひとり一品ずつ、お持ちください。飲み物でも構いません」といったメールが届いた。まだバンガロールに戻って以来、食料品の買い出しに出ていなかったわたしは、料理の準備ができないため出来合いのものを買って行くことにした。
念のため、朝、主催者の友人に電話をして、「何か必要なものはある?」と尋ねたところ、特に参加者に対して持参するものをふりわけたわけではないので、なんでもいいですとのことであった。
「え〜、みんながジュースばっかり持って来たらどうすんの〜?」
などと冗談まじりに言いつつ、自分はジュースとワイン、それから近所のベーカリーで出来合いのペイストリーを購入して持参したのであった。
12時〜12時半の間に集合ということだったので、12時半に到着したところ、すでにテーブルにはゴージャスな料理が山ほど!!
打ち合わせなしで、これだけヴァラエティ豊かな料理が持ち寄られるあたり、ブラボー日本人マダムである。無論、日本人以外のマダムも数名いたけれど。ともあれ、すごい。アメリカのポットラックパーティーじゃ、こうはいかない。
さほどお腹が空いていたわけではなかったのだが、箸が進んだ。
いったい何をしにいったのだ、という話ではある。
ところで、旅立つ友人は20代の女性である。
OWCのお世話係なども積極的に手伝ってくれた彼女。
「美穂さんとは、もう一生会えない気がする!」
と言う。
「また、どこかで会えるよね」
という別れが一般的なお別れ会の場にあって、かなり鮮烈なコメントである。最初は、「え〜、なんでよ〜?!」と驚いた。
彼女曰く、他の人たちとは日本で会える気がするけれど、わたしは日本には戻らないだろうとの前提があっての「一生会えない気がする」らしい。
しみじみと、その言葉を噛み締めれば、そうなのだ。
実際、「また会えるよね」と言い合って別れて来た人たちが、無数にいる。しかし、その人たちの中で再会する人は、ごく一握りだろう。
もう、会えないと思えばこそ、出会えたことが色濃く、鮮明に、心に刻まれる。
彼女とは、たとえこの先会うことがなかったとしても(いや、かなり会える気がするのだが)、忘れてしまうことは、決してないだろう。ともあれ、GOOD LUCK!
■一日体験。アーユルヴェーダ道場
■インド各地の手工芸品が一堂に。
■働く人々。ムンバイ暮らしの名残。