3泊4日のゴールウェイ滞在も瞬く間に過ぎ行き。明日の午後にはダブリンへと戻る。
先ほど、ホテルのバーで、ギネス以外のビールを試したいとバーテンダーに尋ねたところ、スタウトが好きならば、強いビールがあると勧められて飲んだ、その名もインペリアル・スタウト。1本で3度おいしい。とでも言いたくなる、濃厚さと旨味、そして強さ。1本飲んだだけで、現在クラクラしているのは、疲れて酔いが回りやすかったせいではない。平均的なビールのアルコール度数は5%前後であるのに比して、これは10%超! ワイン並みである。
そんな状況ながらも、日々律儀に旅の記録を残しているのは、ほかでもない、帰国してからまとめて記すには旅が長すぎるからだ。ライターという生業を四半世紀以上続けていると、旅の記録は、残さずにはいられない衝動である。それを楽しみに読んでくれる人がいるならば、それはとてもうれしいことであるが、それ以上に、自分自身が記録をしておくことで、旅が完結するような気になれるのだ。
などと、冒頭がくどいところからして、酩酊状態だ。というわけで、今日のところは手早く箇条書きで記すとしよう。
🍀目覚めれば、快晴。しかしアイルランドの気候は油断ならない。晴れ、曇り、雨、嵐が一日のうちに何度も繰り返される。
🍀本日もまた、ドライヴに出かける。2日目は、アウディ兄さんともだいぶわかり合えるようになった。最近の車の進化に驚く。サイドブレーキのぐいっと引っ張るハンドルがない。ワイパーが雨量に合わせて勝手にスピード調整をしてくれる。なにより驚いたのは、ブレーキ。踏み込むと、勝手にエンジンが切れる。緩めると、勝手にエンジンがかかる。燃費をよくするためらしいが、最初はエンストかと動揺した。自宅の車は3年前にオートマを購入したが、運転はドライヴァーに任せきりで、自分で運転をしたことがないため、気づかなかったが、多分同じような構造だ。だめだ、酔っているとむしろ文章が冗長になる。
🍀本日の目的地はコネマラ国立公園にあるカイルモア修道院。コネマラといえば、チェンナイのタージグループのホテルに、コネマラというホテルがある。アイルランドの人々の歴史は、英国統治下の国々にも、その余韻を残している。旅に際しては、その国の歴史や文化を学んでおくと、より深く、広く、楽しめる。
🍀道中のクラフトショップで、ウール製品のあれこれを眺めて、心が躍る。セーター。着る機会がないが、うっかり欲しくなる。セーターの代わりに思い出に、クラダーリングを買った。クラダーリングについては、また後日記したい。
🍀カイルモア修道院は湖畔にたたずむ優美な城。19世紀、マンチェスターの富豪、ミッシェル・ヘンリーが、妻のために建てた邸宅だったが、妻は、旅先のエジプトで熱病にかかり、40代前半で客死する。その後、彼は敷地内に教会を建て、城を売却。やがて修道院となった。
🍀敷地内の遊歩道を歩き、ガーデンを散策する。妖精は、いない。ツーリスティックな旅をしていては、妖精には出会えない昨今の、明るすぎるツーリズム。旅の有り様についても、あれこれと思いを巡らす。妖精がいないので、またしても、自ら妖精のふりをしてみる。妖怪ではない。
🍀ホテルへ戻ったあと、少し休憩して、「Trad On The Prom」のパフォーマンスを見にシアターへ。アイリッシュ・ダンスやアイルランド音楽を中心とした舞台作品、リヴァーダンス的なパフォーマンスが披露されるとのことで、急遽、チケットを購入して赴いたのだが、これがもう、すばらしかった!! 既述の通り、リヴァーダンスの公演は、ニューヨークで3度、訪れた。CDを購入し、音楽はその後も、ひとしきり聞いた。大ホールでのコンサートとは異なり、数百名規模のアットホームなステージで、ヴァラエティ豊かに、とにかく楽しい。
🍀音楽やダンスについては、綴りたいこと山の如しだが、取りあえず、そろそろ寝たいので、このへんに留めておく。ただ、最後に忘れ得ぬ話しをひとつ。ステージを終えたあと、ダンサーたちはゲストと写真撮影をしてくれた。そのときに、クリエイティヴディレクターのクリス(青いシャツの男性)と話しをした。わたしが日本人だと知った彼に出身地を尋ねられたので、福岡だと答えたら、彼がリヴァーダンスに所属していた際、妻(ヴァイオリニスト)と共に、2000年の福岡公演に訪れたという。
🍀更には! わたしの右側に写っている青年は、彼らの息子だとのことだが、彼は「Made in Fukuokaなんだよ!」とのこと。即ち、福岡公演のあと、おいしいものをたくさん食べて、おいしい日本酒を飲み、そういうことになったわけらしい。面白い。
🍀世界は広くて、狭い。ということを、改めて思う。そして、言葉を交わすことの面白さを痛感する。社交的すぎる夫には辟易することも多いけれど、元来「ひとりが好き」なわたしには、いい刺激なのかもしれない。ともあれ、音楽。音楽はすばらしい。本当に、楽しかった。
🍀11時近くになってなお、「白い夜」の道路を走る。静かな郊外の田園風景の中を走り抜ける。前方を、黒猫が、横切る。刹那、近くに妖精が、いるような気がした。
🍀ぜひともこのサイトをご覧いただきたい。音楽やダンスの動画の断片を見ることができる。