2019年も、まもなく半分が終わる。
明日の午後は、バンガロール日本人会より依頼されての「インド・ライフスタイルセミナー〈必修編〉」を実施する。今年で3回目。普段、自分(=ミューズ・リンクス)が主催するセミナーは、自宅が会場だが、日本人会主催のこのセミナーは市内のチャンセリーホテルにて開催される。
今回はやや広めの会場にて30名が対象。2017年の1回目は2時間足らずという短時間だったので、その場で説明できることは限られたことから、資料を充実させねばと分厚いものを準備した。昨年からは、主催者と交渉し、3時間ほどに拡大してもらったが、それでも実際のところ、伝えたい最低限を伝えるには、時間が足りない。この4月に『バンガロール・ガイドブック』を作り、情報をオンラインでシェアし始めたが、しかしどれほど、読まれているかも定かではなく。またしても、鬼のように資料を作る。
「ライフスタイルセミナー」とはいうものの、インドの多様性の実態に始まり、宗教、歴史、政治、ビジネスの際に知っておくべき社会的背景、その他。テーマは多岐に亘る。それに加えて、バンガロールの生活情報や、インドでの食生活や健康管理の情報についてもシェアしている。この資料を持っていれば、のちのち役立つという位置付けで、準備している。
本当なら、複数のセミナーを受講していただきたいところだが、その実現は非常に難しいことを、すでにここ数年で実感している。「一期一会」でどこまで伝えられるかが肝だ。
今回は新たなテーマも準備した。そのひとつは「異文化コミュニケーション」について。普段は「若者向けセミナー」の際に話しているのようなことについても、軽く言及することにした。日本から何冊か本を取り寄せて目を通した。全部を読んだわけではない。が、参考になる点は引き出せた。それと同時に、わたしが普段「若者向けセミナー」で語っていることと、極めて近い話が多いことに気づいた。
わたしは大企業に勤務したこともないし、駐在員として海外で働いたこともない。しかし、自分の経験に加え、日本人に限らぬ多くの人々の話を聞いてきたことで、さまざまケースを吸収してきた。そこから学んだことは、自分の在り方に影響を与えている。海外で暮らし働く人は、「異文化」を学び理解することは、必須条件だとも思う。
そして最終的に、毎度、若者に話をしている夏目漱石『三四郎』の「囚われちゃ駄目だ」にたどり着き、先日の『倫敦塔』観光からの漱石の英国留学時代のエピソードの見直しをしているうちに……。明治維新、日清、日露戦争、そして漱石の懸念というものが(先日もブログに記したが)、いかに、現代の日本人にも通づるものがあるかということを、強く実感した。地理と歴史の重要性。
これを大人にも伝えた方がいいと思ったのは、昨年、我が母校「梅光学院大学」にて、「国際関係論」の枠で、学生たちに向けて講演をした際、彼らからの感想を目にしたことが大きな理由だ。自分が伝えようとしていることが、あながちピント外れでも時代錯誤でもないということを実感した。
ともあれ、みなさんの反応を見つつ、暴走しない程度に、がんばろうと思う。
ところで昨日は、STUDIO MUSEのお茶の時間向けに、アップル・クランブルを作った。これは夫の大好物だ。夜、久しぶりに我々の行きつけ、シャングリ・ラのYataiiで日本食を楽しんだ後、夫は帰路、アイスクリームを購入。「アップル・クランブルと一緒に食べる」と、準備万端だ。
上機嫌でテレビを見つつ、アップル・クランブルを食べる夫。
「ねえ、ミホ。日曜日のセミナーは午後からだよね? 午前中からに変更して、午後はみんなで、クリケットの試合を見ようよ。インド対イギリスだよ! 絶対、見逃せないから!」
こ、この男は……。
どうやら、いつものように自宅でセミナーを実施するものと思っていたらしい。だからってね。その提案、ないやろ!? だいたい、セミナーの対象は日本人で、その大半がクリケットに関心を持っていないということを知っているにもかかわらず……。
「みんなでビール飲みながら、インドを応援するのはどうかなと思ってさ」
「だいたい、あなたはわたしの仕事に対して、全然、敬意がないでしょ?!」
と、詰め寄るも虚し。これこそが、夫と出会って以来23年、日々、日々、日々、直面している「異文化コミュニケーション」である。
「あ、しまった! 大事なこと忘れてた! W杯の準決勝と決勝の日は、出張、避けなきゃいけなかった! まずい、ムンバイとデリー出張の予定、練り直さなきゃ! あの時期にムンバイに行っても、誰もミーティング、来ないし!!」
と、急に慌て出す。
「あ〜、やっぱり試合見に、ロンドン行こうかな〜。まだヴィザの期限も残ってるし……」って、もう、好きにしてください。
インドで働く日本のみなさん。7月は、クリケットのワールドカップが山場を迎えます。大事な試合の日には、おおよそのインドの人々が観戦に心を奪われます。ミーティングのスケジュールなどにはご注意を。
今日は久しぶりにのんびりとした1日。6時を過ぎるや否や、ビールとおつまみの準備。スナックは、ピーナッツとマカナ(MAKHANA)を乾煎りしたもの。マカナとは、蓮の実のスナックで、これまたインドのヘルシーな食べ物のひとつ。最近は、インドの健康志向は「温故知新」の傾向が強く、このマカナも香ばしく炒って味付けされたものが店頭で売られている。栄養価については改めて記すとして、わたしは、廉価な大袋を購入し、自分で炒って岩塩をまぶして食べている。ほんのり甘いビールともよく合う。おいしい。
昨日の午後は、バンガロール日本人会主催による、坂田の「インド・ライフスタイルセミナー〈必修編〉」が実施された。日本人会より依頼を受けての同セミナー開催は、今年で3回目。昨年に引き続き、30名以上の方が参加された。
1回目は、バンガロールに赴任されたばかりの方の「交流の場」としてもこの機会を利用したいとのことで、セミナーに与えらえた時間は1時間半、その後の親睦会がメインだった。実際には2時間近くお話ししたものの、それではあまりに短すぎたことから、昨年からは3時間をいただいている。理想をいえば、丸一日使って、あるいは数日にわけて実施したい内容だ。しかしそうなると、参加者は激減するだろう。
自宅で実施している「ミューズ・リンクス」のセミナーでは、時間の調整もしやすく、参加者は十数名なので、様子を見ながら話題の取捨選択ができる。しかし大人数を対象に、限られた時間内では、当然ながら伝えられることに限度がある。
休憩を挟んで実質3時間余りのセミナーのあと、20名ほどが懇親会に残られた。参加者同士の名刺交換も活発に、各テーブル、会話が盛り上がっていた様子で、とても意義深い夜であった。しかしながら、帰路の車中では、「あの部分をもっと話したかった」とか「あのテーマは不要だったか?」などとの思いが脳裏を渦巻いた。
帰宅後、居間でクリケットの試合を見ていた夫に、「オツカレサマ〜!」と声をかけられ、セミナーの成果を尋ねられたので「もっと話したかった……」とこぼしたら、「3時間以上も話して、話し足りないとか信じられない!」「ジャパニーズ・ビジネスマンは日ごろのハードワークで疲れてるから、日曜日の午後は眠たかったはず」と、バッサリ。おっしゃる通り。わかっているのよ。
しかし、インドに住めば住むほど、得られる情報は増え、「シェアしたい」と思う事柄も増える。初めて同セミナーを開始したときから、資料は改訂を重ねつつも、厚みを増す一方だ。
インドを語るということは、欧州全体を語るようなもの。広大で多様性に富み、豊かな歴史を湛えたインドのことを短時間で伝えるのは本当に困難だ。情報を盛り込みすぎると、聞き手は、消化不良を起こすであろうことも理解している。ゆえに、資料を厚くして復習しやすくし、何かを知りたくなる「きっかけ」「端緒」を提供する。
今日は、参加された方々から早速メールをいただいた。インドにおける「多様性」の実態の、具体例の一端を示したことで、インドに対する見方が変わったという方。宗教の項でお話しした佐々井秀嶺上人を描いた『破天』をKindleで購入し、早速、読み始めたという方。端折られた箇所をもっと聞きたかったという方……。自社のCSRへの取り組みに関し、個別相談のご依頼も受けた。反応をいただくのは、とてもうれしい。今後の参考にもなる。
一方で、ここ1、2年のわたしは、ビジネスを見据えてのセールスはほとんどしておらず、ほぼヴォランティアでの活動がメイン。少々、緩い。『バンガロール・ガイドブック』の編集にしても然り。こういう時期もあっていいと思う一方、自身のセミナー実施や視察コーディネーション、リサーチなどの仕事も含め、仕事に対する取り組みを見直さなければとも考えている。課題は尽きない。ともあれ、今の自分にできることを、ひとつひとつ丁寧に、やり遂げていこうと思う。