学生時代、49歳で死した夏目漱石をして、当時の日本人の平均寿命は40歳代前半だった……ということを、教授から聞いて、衝撃を受けたことを思い出す。
新生児死亡率が高かったがゆえの平均寿命の短さということもあるが、ともあれ人生100年時代と言われる昨今から思えば、隔世の感あり。1947年を過ぎてようやく、男性の平均寿命が50歳を超え、同時に女性の寿命は53.8歳になったという。サザエさんちのおばあさん、磯野フネさんは、原作では48歳の設定だった。
時代が時代なら、「お前はもう、死んでいる」のだと、自らを戒めたここ数日。
「人間の歯の寿命は、年齢の寿命に追いついていない」とか、「昔の女性は、閉経するころには死んでいた」といった文献を読むたびに、今の時代の老後というのは、人体に多大なる負担がかかっているはずだから、50歳を過ぎたら無理をすまいと心がけてきたのだが。
このところ、調子がいいのをいいことに、うっかり自分の身体を「大切な楽器」ではなく、「ラケット」や「バット」のように扱っていた。
8月31日。誕生日の朝に発症した左の腹部から腰にかけての発疹。多分、帯状疱疹だろうと察し、土日はゆっくり過ごし、昨日月曜日、友人らが勧める皮膚科へと赴いた。友人らの言う通り、フレンドリーで、こちらの話をしっかり聞いてくれる感じのいい男性医師。患部を一瞥するなり「これはヘルペス・ゾスターだね」。やはり帯状疱疹であった。
抗ウイルス剤と鎮痛剤を処方され「1週間の安静」を言い渡される。普段あまり薬を飲まないので、極力最低限にしたいと伝えると、「君の気持ちはよくわかる。鎮痛剤はSOSのときのために買っておけばいい。痛くなければ飲む必要はない」とのこと。
帯状疱疹は一般に、鋭く刺すような強い痛みや神経痛がみられるらしいが、わたしの場合、幸い痛みはあるものの我慢できないほどではなく、生活に支障はない。
「金曜日にイヴェント(チャリティ・バザール)があるんですけど……」と言ったら、「で? なにも君が動くことはないでしょう。他の人に任せなさい。君は椅子に座って指示すればいいんだ」と言われ、なるほどな、と納得する。
病院の帰り、会場となる1Q1に最終の打ち合わせに行き、帯状疱疹の件を話すと、若者担当者2名に「他の人にやってもらえばいいじゃないですか。なんならステージ脇にディレクターズチェアを用意しましょうか」とあっさり言われた。
確かにそうなのだ。だいたいわたしは、いろいろやりすぎる。メンバーの入れ替わりが激しかろうがなんだろうが、もっと周りにドシドシやってもらえばいいのだ。思い返せば7周年記念のときに、「力を抜く」と決めたはずだった。
というわけで、抗ウイルス剤服用中は、たとえ元気でも、普段の「0.25〜0.5倍速」で動こうと決めた。しかしこれが結構、難しい。動けるのに「安静に」というのが、難しいのだ。安定期に入る前の妊婦さんというのも、こういう感じなのだろうかと、未経験者は思う。帯状疱疹を胎児と思って(思えん!)、じわじわ動こうと思う。
とはいえ、歌や踊りのステージには出演する。ドクターからはエクササイズを控えろと言われたが、「ちょっとだけ、踊るのはいいですよね」と言ったら、呆れられつつも「ちょっとだけならね」と言われたので、ちょっとだけ。
ちなみに帯状疱疹とは、子供の頃にかかった水疱瘡のウイルスが体内に何十年も潜んでいて、疲労やストレスがたまったときに、発症するとのこと。他人に感染しない。
結構、一般的な疾患のようなので情報をシェアする。
・帯状疱疹は特に50歳以上で増加し、80歳までに日本人の約3人に1人が発症する。
・帯状疱疹はひどくなる前に治療を始めることが重要。発症から3日以内の投薬が望ましい。
・日本の成人の約9割の方が帯状疱疹の原因となるウイルスを持っている。
・長い間痛みが続く帯状疱疹後神経痛は、50歳以上では約2割に起こる後遺症。極めて辛い症状。
・高齢者(50代以降)や免疫力が低下した人は、再発する可能性が高い。
・投薬中は、できるだけ安静にし、アルコールは控える。😢
50代以降が高齢者とみなされることや、アルコールを取れないところに哀しみを感じる。54歳になってから、まだ1滴もアルコールを飲んでいない。これは「自戒せよ」という神様からの誕生日プレゼントだと思って、忌々しいけど、今まで以上に健康に配慮せねばと思う。
毎朝のヘルシー野菜&果物ジュースに加え、家にあるだけのスーパーフードを摂取し、さらにはBigBasket.comでココナツウォーター(天然の点滴)を注文。帯状疱疹にいいというティーツリーオイルをくんくん嗅ぐ。そしてたっぷりと良質の睡眠。
油断すると通常モードになるので、短冊に「安静」と書いて貼る。幸い、先週末からバザールまでの金曜日は、他の予定を入れていなかったので、心置きなく、のんびりと過ごせている。回復しても、すぐに調子に乗らないよう、気をつけます。