夫は太宰府へ行きたかったようだが、あいにくの雨。屋内で過ごすべく、大濠公園のほとりにある福岡市美術館へ。コンパクトながらも、好みの収蔵物が見られ、非常に満たされた。大好きなサルバドール・ダリの作品『ポルト・リガトの聖母』。最高。この絵の舞台であるスペインのカダケスを旅した若かりしころを思い出し、しばらくこの部屋でじっとしていたいと思いつつ左に視線を映したら!
これまた大好きなベルギーの画家、ポール・デルヴォーの『夜の通り (散歩する女たちと学者)』があるではないか! たまらない。初めて彼の作品に出会ったのは、20代前半。ベルギー取材の際、実際にいくつかの作品を目にしたが、今日は歳月を経て、沁みた。
ベルギーは欧州唯一の石炭産出国で、絵画の背景にあるのは蒸気機関車とぼた山だという。その説明を読んで、自分が彼の作品に心をひかれる理由がわかった気がした。わたしの最も古い記憶のひとつ(2歳ごろ)に、祖父母が暮らしていた筑豊の炭坑や、旅立つ親類を見送る夜の蒸気機関車の汽笛などがある。その記憶とこの絵画はリンクしているのだろう。
同美術館のコレクションはまた、九州出身の画家の興味深い作品が多々あり、言及していると尽きない。また、特別展覧会の、『ギュスターヴ・モロー展 サロメと宿命の女たち』も、非常に興味深かった。『ギュスターヴ・モロー展』は、東京に暮らしていた20代のころ、母が東京へ遊びに来たときに、上野の美術館の展覧会で見て以来だ。
美術館内にホテル・オークラのダイニングがあったので、そこでランチをすませ、博多駅に向かう。明日からの列車旅に備え、ジャパン・レイルパスを発券してもらうためだ。
現在、ラグビーの試合中で、明日は大分が会場ということもあり、美術館でも、駅でも、外国人観光客を多く見かけた。あちこちでフレンドリーに話しかける夫。今日も数カ国の人たちに、日本の旅の楽しみ方を伝授している。
それはそうと、福岡市美術館の残念なところは、作品ひとつひとつの説明が、タイトルと作者以外、全て日本語しかないこと。これだけ外国人も来るのだから、作品の背景を英語で紹介すべきだ。みんながみんな、追加料金を払ってオーディオガイドをレンタルする訳ではないのだから。作品数は大して多くないのだから、すぐに翻訳して張り出せるはず。すぐにも改善して欲しい。
帰り際、2日早めに母の誕生日を祝おうと、小さなケーキを買う。日本のデパ地下はまばゆい。妹夫婦も来訪したので、5人で祝福。おめでとう。
わずか一日にして、エピソード満載。諸々、記録を残しておきたいところだが、明朝から瀬戸内を目指すため、夜更かしせずに寝ようと思う。