太陽光を受けて熱い岩盤の上に設けられた700段余りの階段。日差しが照りつける中、素足で熱を受け止めつつ、息を切らして登った果てに、目に飛び込んできたバーフバリ像。全長17メートルの巨大な石像を見た瞬間に覚えた違和感は、その真新しさが理由だった。
「本当に、1000年以上も前に作られたの?」と疑念が脳裏を過ぎる。981年に建立されたというが、パッと見「コンクリート製?」と思うほどだ。訝しく思い、バッグから資料を取り出し読み直すも、再構築されたという記述はない。
前回投稿した頭部横顔の写真。螺髪や頬や肩には、シミひとつない滑らかさだ。わたしなど、横顔のシミが目立って仕方ないというのに。一説によると、バーフバリの美肌の秘訣は、12年に一度開催される「マハーマスタカビシェカ (MahaMastakabhisheka)祭」にあるようだ。
日本でいうところの「灌頂(かんちょう/水や香水などの液体を頭部から注ぐもの)」に相当する祝祭。12年に一度行われるジャイナ教の重要な祭りで、前回、2018年の儀式は、西暦981年に始まった祝祭の、88回目だった。次は2030年だ。
まず、祝祭の前の数週間は、精製水と白檀のペーストを像にかける。その後、マハーマスタカビシェカが始まると、特別に用意された1,008個の器を持った信者により、聖水が振りかけられる。
その後、沐浴された像には、牛乳、サトウキビのジュース、サフラン、ギー、ターメリック、ヴァーミリオン(朱色の粉末)などがふりかけられ、花々や宝石なども捧げられる。
1枚目の写真はWikipedia (Gommateshwara statue during the Grand Consecration in August 2018) より借用したもの。2018年の儀式の様子だ。
この儀式こそが、バーフバリ像の鮮度を保っている理由だとされている。
石像を吟味するに、一部、指先にわずかな損傷が見られる以外は、ほぼ完璧な状態。足に絡まる蔦や、蟻塚から這い出す蛇の様子などは、近代の芸術作品のようにさえ見える。
ここ、シュラヴァナベラゴラは、2300年以上に亘って、ジャイナ教の文化、芸術、建築の集う聖地とされてきたようだ。このほかにも、数多くの寺院が点在しているという。果てしない。実に、果てしない。
【ジャイナ教にまつわる他の記録】
[ラジャスターン旅 03@ジャイサルメール](2017/12/20)
タール砂漠の真ん中で。印パ国境。シルクロード。https://museindia.typepad.jp/2017/2017/12/jaisalmer.html
[ラジャスターン旅 04@ジャイサルメール] フォトアルバム(2017/12/21)
https://museindia.typepad.jp/2017/2017/12/jaisalmeralbum.html
[ラジャスターン旅 05@ジョードプル]聳える城塞とジップライン。宮殿ホテルとマハラジャの歴史。(2017/12/21)
https://museindia.typepad.jp/2017/2017/12/jodhpur.html
[ELLORA エローラ] 仏教、ヒンドゥー教、ジャイナ教……。岩山に刻み込まれた、三つの宗教のかたち。(2011/02/06)
https://museindia.typepad.jp/2011/2011/02/ellora.html
神戸で生まれ育ったムンバイ在住のインド人女性たち〜ジャイナ教、豆腐の話題/STUDIO MUSE
https://museindia.typepad.jp/2020/2020/10/kobe.html
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