今週は、社交度ゼロだった。まるでワシントンDC時代の「ウィンターシーズン」を彷彿とさせる、引きこもりぶりであった。普段は多弁な我であるが、何かに集中すると、平気で数日間、無口でいられるのがいいような悪いような。無論、夫とは話をするが、もっぱら聞き役である。
ひとつの仕事に関しては、年末に一段落するが、年明けにも一つ山場がある。加えて、日本で営業して得た仕事もいくつか入り、年始も慌ただしくなりそうだ。
仕事をすることは、願っていたことのはずなのに、一旦、始めると、ああぁぁぁ〜、めんどくさいかも〜。と思ってしまう。この矛盾が、我がことながら、耐え難い。ここしばらく、遊び呆けすぎていたようだ。
今の仕事は、四六時中、コンピュータに向かっていなければならないための、引きこもり状態である。でも、インドの人々を知り、さらには英語の勉強にもなっている部分があり、やりがいはある。いや、強がりではなく。
さて、本日午後。気分転換に病院へ行く。
先日、例の最先端なすてきホスピタルで健康診断を受けた際、婦人科ドクターより、「問題ないとは思いますが……念のために」と、なにやら特殊なスキャンを撮ってくるよう、言われていたのだ。
その「特殊なスキャン」を撮る機械は最先端病院にはないとのことで、うちの近所にある「ホプキンス・スキャンセンター」に行くよう、指示された。その結果を持って、改めて最先端病院に参上せねばならないという次第。
アポイントメントは2時。1時45分に家を出て、ドライヴァーに行き先を指示する。ちなみにドライヴァーはわたしの不在中に変わっていて、今回は4代目である。ラヴィという男だ。ちなみに2代目もラヴィだった。
ラヴィに病院の場所と名前を告げるも、「わからない」と首を傾げる。近所にいたドライヴァー仲間にも尋ねるが、だれも知らないと言う。こんな近所で、しかも優れた機械を持つ病院の名を知らぬとは、このドライヴァーら、まだまだだな。
などと、マダムは偉そうに思いつつ、病院に電話をしてドライヴァーに詳しい場所を説明してもらう。
などと喧噪の道路を眺めつつ、ほけ〜っとしていたら、
「マダム、到着しました」とラヴィ。
ちょっと〜。こんなところに、最先端病院が勧める、最先端技術を持った病院があるわけないじゃ〜ん、と思いつつ、ふと、看板を見ると……。
HOPKINS MEMORIAL ULTRASOUND SCAN CENTER......
まじかよ。ここかよ。
こりゃ、誰も知らんのは、当たり前やね。
それにしたって、こんなところで、婦人科検診……。なんだか、非常に、いやかも……。
だいたい、この、小屋みたいな建物はなによ。
いや、小屋とは失礼だな。外観は、無闇に大理石だ。ピカピカしておる。でも、目抜き通りに面したこの喧噪は許せぬ。
開け放ちた窓の向こうは待合室で、そこにはもう、排気ガスがガンガン、流れ込んでいる。まるでバス停に立っているが如くの、路上の臨場感満喫状態だ。
しかも、部屋の周囲にぐるりと置かれたプラスチックに椅子に、人々がまんべんなく、腰掛けている。人々の視線が、鋭い……。などと言いながら、隙を狙って写真撮影をするわたしもわたしである。
待合室を通過し、次の部屋にある受付で、お姉さんに「アポイントメントは2時だから、すぐに診察してほしいんですけど」と言うも、少なくとも45分か1時間は待たねばならないと言われる。
そんなの、いや。絶対、いや。
だいたいこの場所の「風水」がよくない。入った途端、どっと気が滅入る。いや、風水云々の問題じゃないな。ただ、いやなだけだな。ここで1時間だなんて、いや。本とかも持って来てないし。排気ガスパラダイスだし。
つくづく、わたしも、スポイルされた、いかんマダムである。でも、我がままマダム、もう、止められない。
「わたし、仕事の途中で抜け出して来たんです。どうしても、すぐに見てもらえないのなら、後日、出直しますから、すぐに見てもらえる日時を教えてください」
しかし、それはできぬと言う。個別の時間を予測できないから、誰もが待たねばならないという。
彼女が言うことはわかる。どんな国の、どんな病院でも、たいてい約束通りに見てもらえるとは限らないってこと。でもね。いやなの。
いろいろ言っていたら、さらに奥の部屋にある診察室からドクターがやってきた。
「君ね。仕方ないんだよ。遅くとも4時までに、検査と検査結果を渡せるようにするから。だから今日はここで待ちなさい。仕事も大事だろうけれど、身体はもっと大事でしょ?」
おっしゃる通りです。とほほな気分だ。
せめてもの抵抗で、「わたし、排気ガスアレルギーなんです」などと言い募り、受付の椅子で待たせてもらうことにした。
途中、アルヴィンドから電話。外に出て電話に出る。外には牛が歩いておる。写真では、なんだか長閑な風景だが、実際はもう、排気ガスじゃんじゃん、車の行き来じゃんじゃん、たいそうな喧噪なのだ。
どうしてわたしの撮る写真はこう、美化されてしまうのだろう。間違っとる。
「ハ〜イ、オゲンキ〜? 病院はどう?」
ご陽気なハニーの声。
「全然、元気じゃないよ。病院は、変だよ。最悪。まだ診察してもらってないけどね」
「ミホがいやと思うんだったら、家に帰った方がいいよ。別の病院を紹介してもらったら?」
「でも、あの病院のドクターが、ここを勧めたんだもん。ほかにいくつもないかもしれないし」
なんだか半泣きな気分で話しているところへ、受付譲が呼びに来た。わたしの番が来たらしい。ちょっと早めてくれたようだ。なんだか申し訳ない気もするが、そんなことを言う自分も嘘くさい。電話を切って、診察室へ。
と、受付譲、ドクターの補助を始める。どうやら彼女は、看護婦でもあるようだ。
ベッドなどの設備は原始的だし、検査の最中に隣室から人が出入りしたりして(女性だったのが幸いだが)、先進諸国じゃありえないプライヴァシーの侵害炸裂状態だったが、もう、どうでもいい気分であった。
で、瞬く間に検査結果を出してくれ、結局は3時には病院を出ることができた。実質1時間であった。検査結果は、「最先端」な感じだった。素人目で見る限り、大きな問題はなさそうだ。よかったような、無駄足だったような。
いくら診療費が安いからって、メディカルツアーで、先進国の患者をこういうところに連れて来たら、ぎょっとされるだろうな。などと思いつつ、帰路へ就く。
どっと疲労した、気分転換であった。
I updated English translation of the travel journey. Please check the previous records, again. I really appreciate Michi san's help. Thank you very much Michi san!