土曜とはいえ、今週ばかりは「週末返上」である。夫は仕事で多忙につき、本日もオフィスへ出かけた。そしてわたしも外出である。まずは、バンガロール中心部にあるデパートメントストア「セントラル」へ。
ここの周辺で、仕事に必要な「写真撮影」をしたあと、掃除道具を購入。洗剤や箒、ビニル手袋にモップ、ブラシなど、工事で荒れ果てた新居を掃除するための道具だ。
それからヌードルバーで軽くランチ。おすすめのコーンラーメンを頼んだが、「誰かの食べ残し?」としか思えぬほど、スープばかりで麺が少ない。隣の人たちが食べているのは、別の種類とはいえ、麺はたっぷり入っている。
店員に苦情を言い、麺を追加してもらう。と、豚骨ラーメンの「替え玉」を思い出し、急に食べたくなる。しかしあれは、なぜ「替え玉」と呼ぶのだろう。「替える」わけではなく「追加」なのだから、「追加玉」が正しいのではなかろうか。
そんなことはさておき、買い物を終えて、さて今日も新居である。自宅から持って来ていた保温ポットを携え、近所のチャイ屋兼食堂へ。大工衆への差し入れのチャイを買うのだ。
昼時で込み合った店内。荒れた厨房の一画で、たっぷりのミルクを火にかけ、ぐつぐつと茶を煮だしてもらう。たっぷりの砂糖、そしてカルダモンも入っている。興味深いので、厨房の傍らに立って見つめていたら、店主から、
「マダム、どうぞあちらでお待ちください」と、入り口を指差された。わかってはいたんだけどね。邪魔だったらしい。
大工衆の作業は、一見、緩慢なように見えるが、しかし一生懸命働いている。朝から晩まで、裸足で、手袋もなく、ヘルメットもなく、身を守る何もなく、身体を張って働いている。
言葉の通じぬマダムが何やら訴えていることに、一生懸命、耳を傾けている様子もある。
地方から出て来て、きっと粗末な家にすみ、ただひたすらに、働くばかりの日々であろう。そう思うと、一日に一度くらい、ゆっくりとチャイでも飲んでもらいたいと思うのである。
甘くてミルキーなチャイをぐっと飲めば、きっと以降の仕事にも集中できるに違いないはず。そんなわけで、チョコレートやキャンディーも用意した。
そして、一番に飲んでいるのは、わたしである。甘いけど、おいしいのだ、これが。
さてさて。ユーテリティールームの水道管も、きれいに「隠された」ようだ。それにしても、なんと粗いコンクリートか。セメント分が極めて少なく砂が主成分である。この粗さが「インド標準」だ。
今日は、2階のクローゼットの最終磨き段階に入っている。なにやら猛烈にシンナー臭い。ドアの外に立っていても、目にしみるほどの匂いなのに、中では労働者たちが、マスクもせず「素のまま」作業をしている。
「労災」の概念は、ないのである。
さて、ダイニングルームのロフト部分。ここの延長工事のために、鉄筋を加工せねばならないのだが、機械を動かすべく電流が足りないという。機械の電源をいれると、すぐに電流が落ちるというのだ。
またしても、アパートメントのエレクトリシャンとかけ合いにいく。ちなみに我々は、言葉はほとんど通じていない。ここでもすべて、「ムード」による会話である。
エレクトリシャンに導かれ、地下にある「電気格納庫」のようなところへ行った。言葉で説明できないから、目で見ろ、ということらしい。
我が家のメーターと機械が入った扉を開けて中を見る。許容量は16アンペアらしい。隣をあける。48アンペアだ。どうやら、このソケットだかなんだかを取り替えれば、48アンペアまで使えるらしい。
そのソケットは400ルピーくらいで買えるらしい。取り替えるだけで許容量が増えるのなら、話は簡単だ。彼におつかいに行ってもらい、取り替えてもらう。
ところで、今日、セントラルで買い物をしているとき、新たな壁塗り(塗装業者)の女性から電話があった。
実は昨日、コマーシャルストリートで引き出しのハンドル類を買った店の一画に、Asian Paintsのペンキの山を見つけたので、店のマネージャーに塗装業もやっているのかと尋ねた。
すると、彼の兄さん夫婦がやっているという。しかも、1スクエアフィートあたり、12〜14ルピーだという。もうほとんど、14ルピーの「クリスチャンのサニー」で行くことに決めてはいたが、一応、連絡をくれるよう頼んでおいたのだ。
そうしたらちゃんと電話があり、今日すぐにも来てくれるという。早速、新居で待ち合わせたところ、彼女、モナはアシスタントの男性を連れてやってきた。品のいい優しげな女性だ。
まず、値段のことを確認したところ、同じペンキを用いて、1スクエアフィートあたり11ルピーでやってくれるという。最初のおじさんの、16ルピーに比べると格安だ。合計で10万円ほどもの違いが出る。
とはいえ、「安かろう、悪かろう」ではまた、困るというものだ。
そのあたりもさりげなく察しを入れるが、最初のおじさん(共通言語なし)、クリスチャンのサニーに比べて、最もプロフェッショナルな雰囲気だ。鞄から色見本を取り出し、壁色のアドヴァイスもしてくれる。
「この窓の部分は白で、サイドは淡い黄色かアイヴォリーですね。あと、エントランスの右側、ここも白がいいでしょう。天井はこのままで大丈夫です」
なんだか的確に指示をしてくれる。聞けばインテリアのカラーコーディネートを学んだのだという。こうでなくっちゃね。
ダイニングルーム、ベッドルーム、リヴィングルームと、それぞれごく淡いピーチピンクやライトオレンジなどを用いることで、「微妙」に色を変えることにした。
どんな雰囲気になるのか楽しみだ。
やはり、探せば、いるものである。信頼のおける人が。しかし見つけることの、そこに至るまでの、なんとたいへんなことか。
マダムが昨夜のうちに制作し、壁に貼付けておいたスケジュール表に基づき、塗装の予定を決める。
なんとか来週後半から始められそうだ。
スケジュール表によると引っ越し日は30日となっている。31日でもいいのだが、30日。来週中には、内装、メタルワークがすべて終了する算段だ。
尤も、スケジュール表の英語を読める人は、ここにはほとんどいない。でも、「雰囲気」としてね。必要なのだ。こういうものが。
さてさて、勝負は来週。いきなり月曜は祝日らしいが、どうなることやら。
そして夜。毎度おなじみGrand Ashokのスパへ。
そしていつものマッサージ「アビヤンガ」(二人の女性が同時にシンクロナイズドなオイルマッサージをしてくれる)と、シロダラ(額にトゥルトゥルとオイルを流すこと45分)をやってもらう。
シロダラをやってもらっている間、深く深く熟睡し、目覚めたら「一晩寝たあと」くらいのすっきり感があった。すばらしい。
スパを出れば、夕暮れ。そよそよと、夜風がことのほか心地よい。
なんだかんだと、楽しい日々ではある。