今週のニューヨークは、雨のようだ。まだ、この街に来て秋晴れの青空を見ていない。来週は晴れるといいのだが。
夫は今日、いくつかのミーティングに出かけた。わたしは、五番街のあたりを歩いた。服などを買い求め、小雨まじりの街を、傘をさして歩く。
昨日、今日と、なにか身体が街になじまない、と違和感を覚えていた。
が、雨の中、ふと我に返り「歩く速度を上げた」途端、見事に身体が街に溶け込んだ。
そうだそうだ。この街にいたころは、いつもに増して「早歩き」で、そのリズムこそが大切だったのだ。
まるでゼンマイ時計のネジを巻くように、ぐいぐいと巻き上げて、力を溜めるみたいに。
急ぐ用事があるというわけでもないのに、カツカツと、かかとを鳴らしながら大きな歩幅で闊歩するマンハッタンの町並み。
淀んだ思考が霧散するような爽快さ。
買い物の紙袋が雨に濡れている。ジャケットの裾も、ジーンズの裾も、濡れている。けれど、なんだか元気が出てくる。
ニューヨーク時代に行きつけだった五番街にあるランジェリーショップ、RIPPLU。
店長のAKIMIさんとは同時期にニューヨーク入りした古くからの知り合い。
年齢も同じ、仕事に一生懸命、どこか通じ合うところがあった。
折りにふれ、店を訪れては長居をして、おしゃべりをしたものだ。
我がMUSE PUBLISHING, INC.が社費出版していたmuse new yorkも、店頭に置かせてもらっていた。ロックフェラーセンター紀伊國屋での『街の灯』のサイン会&レクチャーの折には、多忙の最中、店を抜け出して、駆けつけてくれた。
今日は2年以上ぶりの再会だった。下着を買い溜め(写真の赤い下着ではない。などとわざわざ断り書くこともないが)、そうして1時間ほども長居をして、おしゃべりをした。
夜は、アルヴィンドのMBA時代の友人、ヘンドリックと夕食。去年も一度、彼の妻を交えて4人でブランチをとった。
1年後の彼は、去年と変わらず東南アジアでのビジネスを切望していたが、やはり中国系米国人の妻の同意を得られていないようす。
香港へ一度連れて行ったらしいが、彼女は気に入らなかったとのこと。一人っ子の彼女はロサンゼルスに住む両親のそばから離れるのがいやで、ともかくは彼の望む香港やシンガポールには住みたがらないという。
さらにはおめでたいことに彼女は妊娠中で、3月には女の子が生まれる。照れ隠しもあるだろうが、しかしヘンドリックは困惑していた。家族と自分のキャリアの両立。このまま、景気が停滞している米国に居続けるよりも、兄弟たちも活躍しているアジアを目指したいと。
みなそれぞれに、いろいろと、あり。
アルヴィンドとヘンドリック。同じような投資関係の仕事をしている。
ぱくぱくと、料理を口に運びながら、しかし二人の会話は尽きない。
ほろ酔い加減のわたしは、聞き役に徹している。
見た目はおっとり、しかし才に長けた優秀な男たちが、切れ味よく語る仕事の話を聞いているのは、楽しいものである。
見ていてほのぼのとする。
自分のことはさておき、「がんばれよ!」と思う。