福岡7泊、名古屋3泊、東京5泊の半月に及ぶ旅を終えて、バンガロールに戻ってきた。久しぶりの一人旅は、日本発見の旅だった。旅を始める数日前に「日本の着物」に目覚めたことで、今回は「新しい目」を授かったような日々だった。
福岡、名古屋、そして銀座……。自分でも呆れるほどに、「呉服関係」の店舗や催しに足を運び、着物に関わる人々と言葉を交わした。今回はあまり使うことはないだろうと思っていた名刺を、すべて使い切ってしまうほどに。
書きたいことは募るが時間の余裕もない。とはいえ、インドに戻るとたちまち日常。実は半年前の銀座での経験も、書き残さないまま写真だけが眠っている。ゆえに、せめて備忘録として、記憶に残る写真をできるだけ残しておこうと思う。
🗽
10月21日の午前中は、インド関連の仕事の打ち合わせがあったので、サリーを着て出かけた。ちょうど銀座の中央通りは歩行者天国になっており。お気に入りの一張羅、オリッサ州のイカット(絣)のサリーを着用。写真は、映える撮影が上手そうな東アジア系旅行者の女子に撮ってもらったもの。
12年前、当時20代だった若き職人が1年半もかけて織ったサリー。インドテキスタイル省からの受賞作品でもある。詳細は以下のブログに記録を残している。あのとき「地味?」と思ったがしかし、買っておいてよかったとつくづく思う。
午後は、やはり銀座で開催されていた「Saul Leiter ソール・ライター」にまつわるトークイヴェントに赴いた。ソール・ライター(1923〜2013)は、ニューヨークのイーストヴィレッジを拠点に活動していたジューイッシュ(ユダヤ系米国人)のアーティスト。自分の生活拠点から定点観測するかの如く、マンハッタンの情景をカメラで捉えた。カラーフィルムの黎明期にパイオニアとして活動したフォトグラファーとして知られているようだ。彼はまた、水彩画の画家でもあった。
実は、わたしはソール・ライターのことを知らなかった。半年前の銀座で、ニューヨーク在住時の友人でエメラルド作家のHONOKAさんの展示会に足を運んだのだが、その会場となっていた森岡書店を経営する森岡督行氏のソーシャルメディアの投稿で知ったのだった。
『Saul Leiter The Centennial Retrospective』(青幻舎)の出版を記念してトークイベントを開催します。本書にソール・ライターの絵画についてテキストを執筆した平松麻さんと、「ソール・ライターの原点 ニューヨークの色」展を企画したコンタクト代表の佐藤正子さんをお迎えして、ソール・ライターの絵画と写真の特徴や、その現代性について、スライドを交えてお話しいただきます。
本来ならば、少しはソール・ライターについて予習をして訪れるべきところ、ほぼ下調べをせずに会場へ向かった。ただ、「ニューヨーク」というキーワードに導かれるように。ゆえに、スクリーンに映される彼の作品 〜水彩画および写真〜 はどれも初めて目にするものばかりだ。
ピッツバーグの敬虔なユダヤ教徒の家庭に生まれ育ち、ラビ(祭司)への道を望まれていた彼が、神学校を去り、アーティストを目指してニューヨークへ移り住んだという彼のライフの背景を聞きながらスライドを眺める。
「部屋に飾りたくなるような」穏やかな色彩を湛えた水彩画や、マンハッタンの「ガラス越し」あるいは「雪や雨に降られて」ぼやけて柔らかな色彩の詩的な情景写真の数々……。敢えて曖昧に、絵画に寄せたような写真は、ニューヨーク情景を彷彿とさせて、懐かしい。
絵画はライフワーク、写真は趣味でありテーマ……。などと、勝手な印象を抱きつつ思うところ尽きず。昔日のマンハッタンが恋しい。
イヴェントの終わりに「くじびき」が行われた。ソール・ライターのイラスト入りバッグと、彼が好きだった「コーヒー」と「日本文化」に因んでの「珈琲どら焼き」。……欲しい! と念じていたら、当選者4名のうちに見事、選ばれた。とてもうれしかった。
会場を出たら急にコーヒーが飲みたくなり、近くのスターバックスに入った。……と目に飛び込む「1996」の文字。そこは、スターバックスの日本1号店らしき銀座松屋通り店であった。わたしと夫がマンハッタンのスターバックスで出会った1996年七夕の1カ月後にオープンしたらしい。今回の銀座では、つくづく、我がニューヨークの初心を思い出す。夫と出会ったばかりのころのことを、思い出しなさいということかもしれない。Well….
[🇯🇵DAY 19−2 TOKYO] 一冊の本を慈しむ森岡書店で20年ぶりの再会! 婚約指輪とエメラルドと天然真珠のご縁。(2023/04/24)
https://museindia.typepad.jp/2023/2023/04/jpn19-2.html
🇮🇳インドの伝統工芸と職人たちを支援し続けるDASTKARの創始者、Lailaを訪ねる朝。(2022/10/31)
https://museindia.typepad.jp/fashion/2022/10/dastkar.html
🇮🇳熟考の末、オリッサの絣、マスターピースを求む。(2011/08/12)
https://museindia.typepad.jp/fashion/2011/08/ikat.html