※このブログを投稿後、読んだ友人の計らいで、杉山龍丸の子息である杉山満丸氏と連絡を取り合うことができた。満丸氏から送られてきた膨大な資料も、近々整理して掲載したい。
⬆︎父方祖父母の家があった福岡市東区唐原。この背景の山間一帯が、杉山龍丸の農園だった。父の夢野久作から受け継いだこれらの土地を売るなど私費を投じて、龍丸はインドの緑化事業に貢献した。
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25年前の七夕、我々夫婦のNYでの出会いは「必然だった」と思わされる出来事の多さについては、幾度となく記してきた。そのひとつは仏教。我が父方祖母の日蓮宗信仰、父が建設を仕切った糟屋郡久山の日本山妙法寺仏舎利塔、ムンバイ日本山妙法寺の森田上人と我が実家とのご縁、そしてナーグプルの佐々井秀嶺上人とのご縁など……。
昨夜は「土地」を巡るご縁が明らかになり。Googleマップにて、我が故郷である福岡市東区の地図と、夫の故郷であるデリー及びパンジャーブ州の地図を交互に眺め点検しながら、またしても、奇妙な時間旅行に没頭した。
そしてノートに一旦、書き出さないと、なんとなく、気持ちが落ち着かなかった(手書きは脳内整理によい)。
昨年、インドライフスタイル・セミナーの資料をオンライン向けに拡充すべく作業をしていたとき、「頭山満」の名を初めて知った。調べてみて驚いた。
福岡の黒田藩士だった彼は、明治から昭和前期にかけて活動したアジア主義者の団体、玄洋社の総帥であった。彼と、中国の孫文や蔣介石、あるいはインドのラス・ビハリ・ボースやタゴール、スバス・チャンドラ・ボースとの関わりについては、初めて知ることばかりだった。
その「玄洋社」の主要メンバーの一人に杉山茂丸という人物がいた。彼は福岡市天神界隈で誕生したという。そうそう、なぜわたしが杉山龍丸のことを改めて調べたかといえば、一昨日、「ハチドリ電力」のオンラインイヴェントで「福岡テンジン大学」代表である岩永真一氏のお話を聞いているときに、ふと、杉山龍丸のことが脳裏を過ぎったからだった。
昨日は「福岡テンジン大学」について書こうと思っていたのに、杉山龍丸のことを調べ始めて、いきなりシフト変更。
杉山龍丸が拠点としていた杉山農園は、我が父方祖父母の住まいのすぐ近所であり(写真の背景に見える山のあたり)、パンジャーブ州は、夫の故郷であり、祖先がラホールからアムリトサル経由でデリーに入り、途中のヤムナーナガールには、夫の祖父が創業した鉄鋼所や製糖工場が、今でも従兄弟の運営でそこにある。
去年、義父ロメイシュが他界したとき、わたしも遺灰を流すために、ヤムナーナガールのガンジス川最大の支流、ヤムナー川を訪れたのだった。
話を戻す。玄洋社の杉山茂丸の息子は、作家の夢野久作。夢野久作の息子が、インド緑化の父とされる杉山龍丸だ。福岡生まれでインドの緑化に尽力した人物であるという、極めてあっさりとした情報しか脳裏になかったのだが、昨日、調べてみて、驚いたのだ。資料をかいつまんで記述する。
●陸軍士官学校卒業後、陸軍航空技術学校に進み、飛行整備隊長として満州や東南アジアで戦闘を経験。
●戦後、厚生省援護局で、死亡兵士の記録を留守家族に報告する仕事や、戦死した部下の家族を尋ね、冥福を祈る旅へ。
●僧侶になった陸軍士官学校同級生が、インド独立を目指すガンディーに共鳴。農業開発分野で支援したいと龍丸に資金提供依頼。
●日本にいるインドの青年らに伝統工芸など専門職を学ぶ機会を提供、帰国させる。
●1955年/ネルー首相から特使が派遣され、感謝と今後の支援要請を受け、龍丸は国際文化福祉協会を設立。
●1962年/初めてインドを来訪。ガンディーゆかりの場所を旅する。
●パンジャーブ州ピラト総督から招かれ、インドを豊かにするための提言を仰がれる。すでに調査をしていた龍丸は植林の重要性を説き、ユーカリが適していると答えた。
●植林の場所については、デリー、アンバラ経由アムリトサルをつなぐ印パ国際道路沿いを提案。この470km間はヒマラヤ山脈と並行。ヒマラヤ山脈に降った雨が国際道路の下に潜っていることから、木の根が地下に壁を作り保水できるようになるという考えだった。
●1963年/ピラト総督は早速ユーカリ植樹事業に乗り出すも、インドは大飢饉に陥る。龍丸はインド全域に及ぶ餓死者の続出は森林消失が原因と判断。龍丸は、「祖父と父が残した4万坪の杉山農園を切り売り」して資金を作った
●1964年〜1972年/ユーカリの植樹を実施。ちなみにわたしは1965年生まれ、夫は1972年生まれ。ちょうど我々が生まれたころに、杉山龍丸氏は、インドでせっせと植樹の事業をされていたのだと思うと、それだけで感慨深い。
●合計470kmに4m間隔でユーカリの植林が完了した結果、植林帯周辺約2kmの地帯で「蓬莱米」の栽培に成功。生長が早い台湾の蓬莱米の種を台湾からの入手するに際しては、龍丸が、かつて孫文を支援した茂丸の孫ということで可能になったという。
●やがて、国際道路の周囲の土地では、稲、馬鈴薯、麦の三毛作が可能となり、現在、パンジャーブ州はインド一の穀倉地帯となっている。
●インド西北部にシュワリク丘陵で、モリンガの栽培。
……と、ネット上の資料をかき集めて記しているので、正確さに欠ける点もあるかもしれないが、偉業の片鱗を記すだけでも驚嘆の事実だ。書きたいことは募るが、きちんと調べずに言及するのは憚られる。今日のところは、彼の存在を一人でも多くの人に知っていただきたく、取り急ぎ、記す。今後また、調べては紹介していきたい。
【必読】🌿インドを緑に変えた偉人─ Green Father 杉山龍丸伝 ─
杉山龍丸の御子息である杉山満丸氏が書かれたすばらしい記事。インド、特に農業に関わる方には、ぜひ読んで欲しい。
➡︎http://www.jiid.or.jp/ardec/ardec52/ard52_key_note7.html
以下の文章などは、今の我々が見つめ直すべきだと、鳥肌が立つ思いだ。
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……(龍丸は)インドは地下水位が低いこと、および土壌に有機物が少ないことに気づき、それが、レンガを焼くために森林を伐採した結果であることを確信します。そして、「世界中で、古代文明があったところは砂漠になっている。これは、森林(自然)と共存できない文明は滅ぶということだ」という結論に達し、インドの仲間たちに樹を植えることを提案し実践しました。また、次のようなメッセージを残しています。
(1) 食物を自給できない国は滅ぶ。
(2) 化石燃料を消費するばかりでなく、 エネルギーが循環する新しい仕組みを作らないと、人類は滅ぶ。
(3) 西洋の科学では、植物があると蒸発+蒸散があるので木があった方が人間が使える水が少なくなるとなっているが、日本には古来から「木が水を作り出す」という考え方がある。この考えを広めていかなければならない。
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🌿杉山龍丸氏/関連文書アーカイブ
➡︎https://geolog.mydns.jp/www.geocities.co.jp/kubo_yasu/
🌿杉山龍丸 インドで緑地化に献身したグリーン・ファーザー
➡︎https://www.mitsubishielectric.co.jp/fa/compass/lectures/pioneers04/report.html
🌿砂漠化を防ぐ方法は植林 杉山龍丸
➡︎https://www.ifsa.jp/index.php?Gsugiyamatatsumaru
🌿インドのグリーン・ファーザー 杉山龍丸
➡︎http://yagiken.cocolog-nifty.com/yagiken_web_site/2018/10/post-0b4b.html
【坂田発信の関連情報を記したブログ】
🌏土に触れて、宇宙を思う。食、健康、美容、エコ、ゴミ、有機、農業、衛星……。
➡︎https://museindia.typepad.jp/library/2021/06/earth.html
【インド・ライフスタイルセミナー】
●パラレルワールドが共在するインドを紐解く/セミナー動画
①多様性の坩堝インド/多宗教と複雑なコミュニティ/IT産業を中心とした経済成長の背景/現在に息づくガンディの理念
②「広く浅く」インドの歴史(インド・パキスタン分離独立)/インドの二大政党と特筆すべき人物/テロが起こる理由とその背景
③明治維新以降、日本とインドの近代交流史〈前編〉人物から辿る日印航路と綿貿易/からゆきさん/ムンバイ日本人墓地/日本山妙法寺
④明治維新以降、日本とインドの近代交流史〈後編〉第二次世界大戦での日印協調/東京裁判とパール判事/インドから贈られた象/夏目漱石
【今日、この記事を書くことになった契機】
◉ハチドリ電力
➡︎https://hachidori-denryoku.jp/
◉福岡テンジン大学
➡︎https://tenjin-univ.net/
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