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7泊8日に亘っての、長過ぎる九州旅を経て、ようやく福岡の実家へ戻って来た。夫は異邦人故、わたしよりもずっと、この旅を楽しめたに違いない。妻はといえば、「日本の旅は、もう十分」という気分ではある。
思い返せば若かりしころ。海外旅行のガイドブックなどを制作する編集プロダクションにて、編集者として勤務していたころから、海外旅行への衝動が強かった。海外取材の合間に国内取材をすることもあったが、気持ちの盛り上がりが全く異なった。
未知なる世界への好奇心に突き動かされて、海外に暮らし続ける自分が在る。
世間は「歳を重ねるとともに母国が恋しくなるものだ」と言う。世界の各地で、久しく母国を離れた人々から、そういう言葉を聞き続けて来たが、わたしはまだ、その境地には達していないようだ。未だ、まだ見ぬ異国を旅したいという衝動の方が強い。
そんな自分の思いにも、気づかされた旅であった。
せっかくの九州旅を終えて、わざわざこのような感想を書くこともないのだが、本音である。ともあれ、夫は十二分に楽しめたようなので、もちろん「いい旅」ではあったのだが。
さて、昨日の長崎滞在の記録を残しておこう。
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小学校の修学旅行で訪れたことのあるグラバー邸。
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グラバー邸を一巡したあと、夫の好物を「皿うどん」を食べようと、中華街をめざし歩く。
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カステラ、皿うどん、茶碗蒸し、豚の角煮サンドなど、夫の好物が多い長崎。町を歩けば、長崎ならではのカステラ専門店が見られ、さすが本拠地は違うものだと感心する。
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夫は皿うどんを、わたしは懐かしのチャンポンを注文。このチャンポンが、大失敗だった。チャンポンは、おいしかった。おいしかったがゆえに、しっかりと食べてしまったのが、いけなかった。日本滞在も2週間近くになり、徐々にMSG(化学調味料)に、身体が慣れているだろうと、油断していたのだ。
しかし食べた直後から、喉が乾いていがらっぽくなり、目頭が熱くなり、頭が重い感じになり、急激に疲労感が襲ってきた。夕飯を食べる気にならず、ホテルそばの商店街でトマトや果物を買って、解毒する。
今朝、目覚めたら、異様なほど顔がむくんでいた。目もかつてないほど思い切り腫れて、かなり重症であった。結果的には、今日の昼頃、すなわち約24時間後まで、口内と喉の違和感が抜けず、水を飲み続けたのだった。
チャンポンは残念ながら、わたしは食べてはいかん食べ物の一つだと悟った。チャンポンに限らず、平均的な中国料理全般、日本の多くの加工食品がそうである。
日本の外食。おいしいものが多いだけに、しつこいようだが、味の素系添加物が多すぎるのは、「個人的に」本当に、残念なことである。
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夜景を見に行くつもりだったが、体調が冴えず、雨も降っていたので、とりやめに。ホテル近くの商店街を散策する。茶碗蒸しの専門店や、豚の角煮饅頭の店、カステラ専門店など、夫は次々に、吸い込まれて行く。
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あっちこっちでカステラを試食。角煮まんじゅうは試食&ご購入。存分にお楽しみになったようだ。
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最後に滞在したのは、今年9月にオープンしたばかりの真新しいホテル、「ホテルフォルツァ長崎」。部屋は狭いが、設備は万全、ベッドや枕などのクオリティも高く寝心地よく、快適に過ごせた宿であった。市街中心部、浜町商店街の中にあり、利便性も高い。
長崎出張の折には(なんてことは、ないと思うが)、また利用したいと思えるホテルであった。
さて、本日。長崎は今日も雨だった。
ゆえに、観光をすることなく、福岡を目指すことに。特急かもめに乗り込んで、一路博多駅へ。福岡もまた雨である。博多駅で遅めのランチを取って実家へ戻ることに。
目指す店は、迷いなく、『ごはん家 椒房庵』。我が家で愛用しているところの、「茅乃舎のだし」を販売している久原本家の食事処である。
安全で、素材の味が生きた、素朴な料理を食べられる店といえば、博多駅周辺でここしか思い当たらなかった。
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羽釜で炊かれた、炊きたてのご飯とともに、胃にも心にもやさしい料理を食べて、ほっと、ひと息。
たっぷりの大根おろしや、繊細な味付けのショウガの浅漬け、まろやかな酸味の梅干しなどが、ちゃんぽんでやられた胃腸をきれいに浄化してくれるようである。食べものって、本当に大切。
夫もまた、最後の最後に、好物の銀ダラを食べられて、満足の様子であった。
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朝に比べると、目の腫れもずいぶんと落ち着いた午後3時。
毎日駆け抜けるように残してきた九州旅の記録も、これで最後だ。極めて表面的な記録しか残していないが、ともあれ概ね天候に恵まれ、起伏に富んだ九州の情趣を愉しめ、いい旅だったと思う。
夫は明日の午後、香港経由でバンガロールへ戻る。わたしは5日、シンガポール経由でバンガロールだ。そして時はすでに11月。2014年もまた、終章だ。なんとめまぐるしく過ぎ行く歳月。
バンガロールのNORAを思いつつ(今日、博多駅のペットショップに立ち寄り、夫がNORAへのお土産を購入した)、自分の居場所、インドへ帰るのが楽しみだ。