明日の日本への一時帰国を控えて、なんとか予定通りに仕事を仕上げ、昨日、サロン・ド・ミューズをオープン。それにしても、この数週間のあれこれと濃かった。
解決していない問題もあれど、ともかくは一段落。時間の合間に荷造りもほとんどすませているから、今日は諸々の雑事のメイドへの引き継ぎや、仕事の処理をすませ、夕方アーユルヴェーダでトリートメントを受ける予定。
昨日は、ミューズ・クリエイション「チーム食」の活動日であった。「チーム食」のみ、積極的な活動をしていなかったので、日本へ帰る前に一度は、と思っていたのだ。
メンバーからのリクエストは大きく二つに分かれて、「丸ごと鶏肉の料理」vs「スコーン」。
肉か菓子か。どっちにするか悩んだ挙げ句、どっちもやることにした。
キッチンの都合上、定員10名としていたが、結局12名となり、もうそれだけで、かなりの熱気。オーヴンの熱気、コンロの熱気で、かなり体力勝負だったな。と、今になって思う。
【しっとりスコーン】
まずはスコーンの生地作り。参加者合計12名。3チームに分かれての作業。スコーンに関しては、レシピを用意したが、鶏肉料理は、あまりにも我流なのでレシピを作っていなかった。
とはいえ、あれこれと作って、みなさん、最後に混乱されている様子であった。せめて使用した素材を書いて欲しいとのことだったので、せっかくだから、ここで簡単な作り方を記しておこうと思う。
スコーンの生地を冷蔵庫に寝かせている間に、鶏肉作業だ。
【鶏肉の丸ごとグリル】
まずは一番簡単な丸ごと鶏肉。手抜き料理なのにゴージャス感が漂うのがポイントだ。
野菜は玉ねぎ、ニンジン、ジャガイモを使用。適当な大きさに切り、オリーヴオイルをふりかけ塩こしょうをして、手で混ぜなじませる。
その上に、余分な脂身を落とし、洗浄して水気を拭き取った丸ごとの鶏肉をどんと載せる。鶏肉には、塩胡椒、それから室温に溶かしたバターを表面に塗る。
手がバターでぬるぬるになるが、手でまんべんなく塗った方がよい。これは、サンクスギヴィングデーに焼くターキーと同じ要領。
あと、アルミホイルにガーリックを載せ、オリーヴオイルをふりかけて包み、天板の上で一緒に蒸し焼く。
丸ごとのガーリックでも同じようなことができる。詳しくは2004年3月25日の記録を参照のこと。
以上を約220℃に熱したオーヴンに入れて40〜50分ほど焼くだけ。途中で数回、野菜などが焦げ付かないように、適宜、野菜を混ぜる。
鶏の上部が焦げそうな場合は、アルミホイルをかけてカヴァーする。
ポイントは、玉ねぎをたっぷり入れること。インドの玉ねぎは特に水分が少なく甘みがあるので、いい調味料になってくれるのだ。
焼き上がりは肉汁がたっぷり。野菜やガーリックとともに、香ばしく焼き上がった鶏肉とともに食す。
鶏肉の低温調理法の応用。まずは丸ごと鶏肉を解体する方法をデモンストレーション。次に、参加者にも別の鶏をカットしてもらう。
関節の部分を見極めて包丁を入れると、特に力をいれなくても、きれいに解体できるのだ。包丁の刃が欠けるようなこともない。
これに関しては、すでに前の晩から、砂糖、そして塩の順番ですり込み、冷蔵庫に入れて一晩寝かせておいた鶏肉を、朝、加熱しておいた。
沸騰した湯に鶏肉を入れたら、数分で火を止め蓋をして、温度が落ちないようにタオルのようなもの包んで数時間放置。じわじわと熱が通ったら、柔らかな食感のハムのように仕上がるのだ。
本日は、ちょっと火を通しすぎたため、身がさほど柔らかくはならなかったが、それはそれで美味。ともあれ身をほぐし、骨の部分を改めて火にかけて、スープの出しをしっかりと取る。
ほぐした身は、酢醤油につけてもよし、マヨネーズ&醤油のディップをつけてもよし。七味唐辛子があってもいい。翌日のお弁当に野菜と一緒に炒めたり、サンドイッチの具にしたりと、活用法はさまざまだ。
我が家は基本的に「冷凍保存」はミニマムにしているが、小分けにして冷凍しておくと便利である。味もさほど落ちない。
さて、その鶏肉ハムもどきを茹でた際、砂糖と塩でマリネした鶏肉から出た味だけのスープを味見してもらう。味は足りないが、だしの旨味を試してもらうためだ。
鶏肉のコクが出て、これだけでも結構いける。スープを濃厚にしたいなら、湯量を多くしすぎないのがポイント。
そのあと、ショウガの千切り、醤油、酒(の代わりに白ワイン)を加えて煮立たせたものを、再度味見。これが、旨い! 米国では、風邪をひいたらチキンスープが定番だ。
体調が芳しくない時など、滋養たっぷりのこのスープ、抜群である。
先ほどの鶏肉を入れてもよいし、野菜などを加えてもいい。濃いめに味付けすると、麺類のスープとしてもいける。
これでお米を炊いて鶏風味リゾットにするのもいい。味噌を溶いてもいい。もう、応用はなんでもありだ。
【バルサミコ酢と醤油マリネのチキン】
先ほど解体した鶏肉。これは、(「さしすせそ」の順番で)、砂糖少々、白ワイン(砂糖使わずデザートワインなどの残りでもよし)少々、バルサミコ酢(結構たっぷり)、醤油(そこそこしっかり)を加えてマリネする。
分量は、適当。
まずは鍋に、たっぷりの玉ねぎを入れて炒める。ニンジンも加える。実際は、ニンジンを入れ忘れたので、あとで別に蒸した物を投入した。
それに、マリネした鶏肉を加えて煮込む。トマトのざく切りなどを入れてもよし。鶏肉が汁気を含んで味がしみ込んだ感じになってきたら、でき上がり。
これは、写真を取り損ねた。今日作ったのとは全然仕上がりの様子が違うが、以前作ったときの写真がこちらにあるので、参考までに。
この記録には、「ポテトとフェヌグリークの葉のソテー」のレシピが、なぜか書いてある。
料理はどれも、みなさんに試食していただいた。これは、丸ごと鶏肉のグリルに伸びる試食の手! 他の料理は一応、小皿を用意したりしたのだが、この料理はもう、面倒になってワイルド状態。
クッキングクラスというよりは、アウトドアでバーベキュー状態。
今日はチーム食以外のメンバーも数名、参加していた。途中で様子を見に来た他チームのメンバーが、エプロン姿でせっせと下ごしらえをする人々を眺め、
「なんか、法事みたい」
とひと言。いつだったか、どなたか駐在員家族の家に招かれたときにも、同じような発言が聞かれたものだ。「日本の主婦複数名が台所で甲斐甲斐しく働く=法事」。面白い。
【豚バラ肉の味噌仕立て蒸し煮】
ついでに豚肉料理も作った。今晩のおかずも兼ねてのレクチャーだ。これには、コリアン・スライスと呼ばれる豚肉の薄切りを使用。これは我が独創料理である。
今日使用した野菜は、大根とナス。
まず豚肉は、白ワインか酒、軽く塩、味噌などでマリネする。大根とナスを適当な大きさに切ったものに、「無添加だし」を加え、蓋をして蒸し焼く(煮る)。
無添加だしがなければないで、よい。
半分ほど火が通ったら、マリネした豚肉を載せて、蓋をして蒸し焼く。
適当に混ぜつつ、火が全体に通ったら出来上がり。これがまた、白いご飯とよく合っておいしいのだ。たっぷりのネギを投入しても旨い。
この頃にはもう、味見も「肉三昧」な上、キッチンの温度は上昇。熱気ムンムン状態で、微妙に酸欠気味でくらっとくる参加者も……。
ちょっと詰め込みすぎたようだった。
そして最後、肉類をすべて脇へ押しやり、気持ちを切り替え、冷やしておいたスコーンの生地を取り出して型を抜いて焼く。
最後に、焼きたてのスコーン、それから生クリームにジャム、そしていつもの「生クリームを力一杯泡立てて、水分とバターに分離させたクロテッドクリーム風」を作る。
コーヒー、紅茶を片手にリヴィングルームに移動して、ゆっくりと味わったのだった。
そんなわけで、濃密な2時間半の料理教室であった。
更にお茶のあとは、「チーム歌」は歌の練習に励み、非常に充足感の高い午後を過ごしたのだった。